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日蓮大聖人・池田大作

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序文  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
1  序文
 本書は、人間の現況と未来の展望に関する書であり、それらが人間の過去の思考・行動・行為からも、また人間の支配の及ばない諸々の出来事からも展開してきたこと、そして、それらが現今の情勢や今後の人類の活動によって左右されうることを論じた書である。
 私たち二人の著者は、いずれもその道の専門家ではない。一人は日本を母国として、仏法の教義と実践の拡大に身を挺する者であり、もう一人は、ヨーロッパを出身地として、人類が抱える“問題複合体”(プロブレマチック)の実際的・世俗的理解の向上に身をゆだねる者である。私たちは、私たち独自のやり方で、今日の困難な時代の人間のために──たとえいかにわずかでも──貢献できるものと信じ、またそう願っている。
 私たちは、いくつかの分野では両者の見解にも相違があること、また状況や要件によっては、互いの解釈に幾分かの差異があることを認めている。また、それぞれの目的においても、その目的達成への手段においても、必ずしも完全には一致しえないことも認め合っている。しかしなお、両者はまぎれもなく大きな共通の領域を分かち合っており、したがって、私たちは、両者共有の見解を徹底して探っていくならば、両者の思考がさらに広がり、磨きがかかるであろうという見解に立っている。私たちはまた、相違点を互いに尊重し合っての公開の対話が、啓発的で実り多いものになりうるとともに、今後のさらなる考察に新たな道を開くことができるものとも信じている。
 これらの理由から、私たちは、その考え方のいくつかを他の人びとと分かち合うことも、また有意義であろうと考えた。そして、そうすることこそが、本書の目的なのである。自らの見解を世界各地の読者の批判と討論に供するにあたって、私たちは、今後数年ないし数十年間にわたって人類の運命の好転に役立つと思われる、特定の態度や行動を概説することが適切であろうと考えている。われわれの世代に突きつけられている諸々の問題の巨大さ、複雑さに鑑みて、私たちはこのことをできるだけ謙虚に行うものである。したがって、単刀直入な回答を提示するよりは、むしろ、適切な解決に最終的にたどり着きそうだと判断される取り組み方と、その見通しを示唆することのほうを、私たちは選んでいる。
2  ただし、私たちはまた、このたぶん決定的な歴史の転換期に生じた脅威や挑戦に対する人類の適切な対応をこれ以上大きく遅らせてはならないという両者の強い信念を強調しておきたい。世界の全般的状況は少しも好転しておらず、現今の危機がさらに深刻化する恐れは、きわめて強いといえよう。これに対して、人類が科学的知識や技術的手段の結果手にした限りない好機をこれ以上無視することも、また、自らの運命の改善のために絶えず役立たすべきわれわれの精神的責務を喪失することも、ともに断じて許されることではない。
 今日の主要な諸問題がいまなお精神的・倫理的な問題であるという点、そして、それらがいかに大量の科学・技術力や経済的手段を注ぎ込んでも解決できないという点で、私たちは同じ見解に立っている。
 これらの諸問題は、人間の最も内奥の領域に属するものであり、人間各自が自らの視野と価値観を深く改めるとき、われわれは初めて、自らをもし内面から向上させるならば決して打ちひしがれることはないという清朗たる希望をもって、それらを理解し、それらに取り組むことができるのである。
 私たちが可能と感じる人類の覚醒の緊要性と、その覚醒をうながしうる“人間革命”に両者が寄せる信念とに動機を得て、私たちは本書を『二十一世紀への警鐘』(Before It Is Too Late「手遅れにならないうちに」)と題した。
 池田大作/アウレリオ・ペッチェイ

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