Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

あとがき  

「科学と宗教」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
1  「科学と宗教」というテーマのこの対談は、池田博士の提案で始まり、約二年間つづいた。科学と宗教の相関性は、これまでつねに根本的な問題の一つであった。というのも、科学と宗教ほど、相容れない、まったく正反対の観点に立たされてしまうことの多いものはないからである。私の歩んできた人生、私が受けた教育は、宗教的世界観を完全に否定した環境の下にあった。しかし、科学に従事するかたわら、宗教について、また幾百年、幾千年にわたって宗教が果たしてきた歴史的役割について、思索を重ねながら、私は、人類が、はたして宗教なくして存在することができるのか、また一部で言われているように、宗教的世界観は誤りなのか、という問いを究明、理解し、自分なりに答えを出そうとしてきた。
 私がたずさわっている科学そのものには、宗教の入る余地はない。それゆえに、もしも狭い見方をするならば、宗教を排除してしまうことも容易である。たとえば、わが国ではあまりにも多くの人々がそうしてきた。むろん、それはわが国の社会が、そのように人間を教育してきたためだと説明するのはたやすいことである。
 しかし、宗教的世界観の排除は他の国でも、さまざまな時代に、多くの優れた人物によってもなされてきた。けだし、科学と宗教の相関性という問題は、人類にとって最も重要なものの一つであったし、これからもそうであろう。
 池田博士との対話のなかで、われわれはこういった問題をつぶさに取り上げ、多くの疑問に答えを出そうとしてきた。もちろん、われわれの解答や見解はまったく個人的なものであり、それが最終的な結論であると主張するつもりは毛頭ない。
2  ただ、私が特筆したいのは、両者の立場がまったく異なっていながらも、ある面で共通の結論に行き着いている、ということである。
 読者の皆さまがこの対談を読んでいかれるなかで、それはわかっていただけると思う。池田氏との対談集の発刊は、これが二回目である。数年前、私がロモノーソフ記念モスクワ大学総長の任にあった時に、やはり氏の提案で『第三の虹の橋』というタイトルで対談集を出版した。そのなかで人生のさまざまな側面を話題として、とくに、人類が平和にたどり着くためのさまざまな道を探ってみた。
 今回の対談は、一方では新しい問題を取り上げながら、同時に前回、すでにふれた問題をさらに発展させている。
 また他方、今のロシアでは社会変革の激しい波が起こっており、今ほど思考の転換が求められ、未来を築くために調和と人間性が必要とされている時はなく、そういったまったく新しいロシアの情勢を背景としての対話である。
 一九九四年四月アナトーリ・A・ログノフ

1
1