Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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世界の希望の宝未来部(上) 強くなれ

2008.2.16 随筆 人間世紀の光4(池田大作全集第138巻)

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1   広宣と
    創価の永遠
      決めゆかむ
    人材育てる
      なんと尊き
 この二月、そして三月は、わが大切な大切な未来部の「希望月間」である。
 北国育ちの大教育者であられた、師・戸田城聖先生は、少年少女に呼びかけられた。
 「冬に鍛えよ!」と。
 この季節は、寒風にも、雪にも負けず、真剣に、受験に挑戦している友も多い。
 頑張れ! 強い心で!
 卒業、進学、進級──未来部の友にとって、青春時代の大事な成長の節目だ。
 天高く青空へ昇るには、風や雲を突き抜けねばならぬ。
 十八世紀フランスの思想家ルソーは言っている。
 「わたしたちは、強くなるように生まれついているのだ。苦しいことなしに強くなれると思っているのだろうか」(『エミール』今野一雄訳、岩波書店)
 強くなれ!徹して断じて、強くなれ! 苦しいこと、つらいことも、全部、強くなるための試練なのだ。
 二月十六日の御聖誕であられる日蓮大聖人は、「金は・やけば真金となる」と仰せだ。
 本物は鍛えられて、ますます輝く。これが、人間の魂の成長の法則である。
2   人生は
    正しく強く
      朗らかに
    生きぬけ勝ちぬけ
      恩師は語りぬ
 二月十一日は、恩師・戸田先生の百八周年の生誕記念日であった。
 先生に見出され、先生に育てられた私である。この師匠なくして、私はない。
 生命の底から沸き上がる感謝は、永遠に尽きることはない。
 ──それは、昭和二十五年の十月二日の月曜日、雨の夜であった。
 先生の事業が行き詰まり、秋霜の苦境の渦中にあっても、私への訓練は休みなく続けられていた。
 顔を見れば、「あの本は読んだか」「これはどう考えるか」と、速射砲の如く聞かれる。
 師は五十歳。私は二十二歳。ご自身の学識の一切を注いで、若き弟子を鍛えてくださる、あまりにもありがたき「戸田大学」であった。
 その師の甚深なる慈愛に応えて、私も全生命を捧げてお仕えした。
 この夜も、先生のお供をして都内を動き、目黒駅へお送りしたのである。
 電車の中で、師と語り合ううち、『エミール』が話題になった。
 ルソーの有名な教育小説である。大教育者の先生の好きな一書であった。
 私は、この前年、児童雑誌『少年日本』などの編集長をしていた時にも、参考になればと再読していたのである。
 私がかいつまんで感想を申し上げると、先生は、「大作とは何でも話せるな!」と、笑みを浮かべられた。
 私は十代の終わりの「読書ノート」にも、『エミール』の一節を抜き書きしていた。戦前に出た″改造文庫″からであった。
 「人を愛せよ、彼等もまた諸君を愛する。
 彼等に仕えよ、彼等もまた諸君に仕える。
 彼等の兄弟たれ、彼等もまた諸君の子供となる」(『エミール』内山賢次訳、改造社)
 ルソーが、教育者自身の人間的な成長の大切さを訴えた言葉である。
 他人ではない。まず自分がどうかだ。
 口先だけの要領ではなく、自分の誠意と行動をもって範を示すのだ!
3   勉学と
    真剣勝負の
      その中に
    栄光燦たる
      人生築けり
 「人間は教育によって作られる」(同前)──これは、ルソーの卓見である。
 ことにルソーは、エミールという少年の教育を通して、一人の人間を幸福にする方途を示そうとした。
 創価の父・牧口常三郎先生も、子どもたちに幸福な人生を送らせることに、教育の根本目的があると結論されていた。
 だからこそ、戸田先生もまた、ルソーに注目されていたのだ。
 「創価教育」の学校をつくることは、牧口初代会長から戸田先生が託された悲願である。たとえ、苦難のどん底にあっても、先生の胸を離れぬ夢であった。
 恩師が、神田にあった日大の食堂で、「大学をつくろう。創価大学だ。世界第一の大学にしようじゃないか!」と、遠大な教育構想を語ってくださったのは、ご一緒に『エミール』の語らいをした一カ月半後のことである。

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