Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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人間革命の天地・信越
2004.5.25 随筆 人間世紀の光1(池田大作全集第135巻)
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1
そびえ立つ 栄光の人材山脈
信越出身の碩学に、『大漢和辞典』で有名な諸橋轍次博士がいる。
新潟・下田村の生地は「漢学の里」となり、博士は、多くの人に偲ばれている。
博士が心血を注いだ中国の古典の知恵に、こうあった。
「一日二日に万幾あり」(『書経』)
博士は、この箴言を通して言われた。
「一日とか二日という短い間にも、世の変化するきざしは無数にあるものだ。油断してはならない」(『中国古典名言事典』講談社)と。
今日という日は、二度と来ない。一日一日を大切に、悔いなく、全魂を注いでいくべきだ。そこにこそ、勝機をつかみゆく秘訣があることを知らねばならない。
今日を勝つことだ。断じて今を勝つことだ。
2
広布に立ち上がった、わが信越には、″創価三代″の師弟の魂が、深く大きく刻まれている。長野県にも、そして新潟県にも、牧口先生、戸田先生の広布の足跡が多々、留められている。そして私も、幾たびとなく、ここ信越の大地を駆けた。
以前、創価の父・牧口先生の生家の写真を、新潟の同志が届けてくださった。本当に嬉しかった。拝見して、その質素な家に感涙したものであった。
日本海に臨む荒浜の村――現在の新潟・柏崎で、牧口先生は生まれ、烈風と荒波に挑み抜き、偉大なる人格を鍛え上げてゆかれたのである。
私が、牧口先生の故郷・新潟を初訪問したのは、ちょうど五十年前の、一九五四年(昭和二十九年)の二月であった。これが、この方面への第一歩の歴史となったと記憶する。
実は、その直前、戸田先生は体調を崩されていた。不死鳥のごとき生命力で、すぐに広布の陣頭に復帰されたが、私は一人、深刻な決意に奮い立っていた。
″戦うのだ! 力をつけるのだ! 一日も早く、先生にご安心いただける後継の弟子となるのだ!″
イギリスの劇作家シェークスピアの一文に、こうある。
「臆病風などどこ吹く風だ、最後まで戦ってやる」(『マクベス』小田島雄志訳、『シェイクスピア全集』2所収、白水社)
我々の活動と成長が、戦いと前進が、共戦の連帯の拡大を無限に生んでいくのだ。これが、広宣流布の一つの方程式だ。
新潟は深い雪だった。そのなかを、友と一緒に私たちは走った。百人ほどの同志が集い合った指導会に、私は出席させていただいた。
それが終わると、生き生きとした使命燃え立つ青年たちと、遅くまで語りに語った。そして懸命に激励した。寒い翌日も折伏、さらに指導に走り回った。そして夜行列車に飛び乗る寸前まで、友を励まし続けた。
魯迅の有名な箴言に、「道というものは、始めからあるのではなく、みな、人が歩くことによってできるものだ」(内山完造『魯迅の思い出』社会思想社)とある。
この同志こそが、新しい「広宣流布」という道をつくってくれるのだ。
当時、私は、万感の思いを日記に書き留めた。
「此の地よりも、未来の大指導者の輩出する事を祈りつつ」(『若き日の日記』、本全集第36巻収録)と、その一節にある。
涌出せよ! 涌出せよ! 若き正義の師子よ、偉大な広布の大人材よ!
指導者は、第一にも、第二にも、人材を見出すことだ。人材を育てることだ。
それが、責任であり、使命であり、任務であり、勝利なのだ。
3
「人材の涌出」――これを、たびたび深く祈り、願い、私が五体を大地にぶつけるようにして戦い残した天地! それが、晴れ晴れとした人材山脈の信越である。
一九五七年(昭和三十二年)の八月、私は、軽井沢に静養しておられた戸田先生のもとへ馳せ参じた。ありとあらゆる報告をするためである。ありとあらゆる指示を仰ぐためである。そして、断じて広宣流布の拡大と勝利に向かって、師弟一体の魂と魂が通じ合うためである。
この師弟の語らいの黄金の時間は、一瞬一瞬が、師から弟子への大事な訓練であり、指導であり、血脈であったのだ。
特に先生は、「学会が大発展していけば、必ず坊主たちは嫉妬し、思いもよらぬ迫害を加えてくる」と断言しておられた。
その時は、先生の怒りの言葉とも、私には思えた。
しかし、長野にも、新潟にも、信心の建設をしゆくなかで、先生の言葉は、思いも及ばぬ未来への深き洞察であったと、私は驚きをもって、改めて胸に刻んだのだ。
かのシェークスピアは、戯曲の中で、邪悪な聖職者を弾劾している。
「いいか、糞坊主、おまえの厚顔無恥な悪行、不義不正にして争いをむねとする陰謀については、幼子の口でもおまえを傲慢と言える……。
おまえは……聖職者としての職務にもその高い地位にもおよそ似つかわしくない色好みの放蕩者だ。おまえの陰険な裏切りについてはさらに明白だ」(『ヘンリー六世 第一部』小田島雄志訳、前掲『シェイクスピア全集』7所収)
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