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日蓮大聖人・池田大作

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輝け 女性教育の幸福城 白鳥の如く希望の大空へ!

2003.12.8 随筆 新・人間革命6 (池田大作全集第134巻)

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1   青春の
    勝利の土台
      短大城
 教室の扉を開けると、乙女たちの弾けるような笑顔と歓声が迎えてくれた。
 昨年の十月一日、私は創価女子短期大学の101教室を視察した。ちょうど、二限目の授業の時間であった。
 せっかくの機会であるからと、学長からもお話があり、講義を担当されていた先生の快い了承を得て、「学問と人生と幸福」について、少々、語らせていただいた。
 題材には、モーパッサンの長編小説『女の一生』を取り上げた。
 「女性の時代」をリードしゆく短大生と、人生を勝ち飾るための哲学を学び合う場になればと思ったのである。
 「山越え、谷越え、険難の峰を歩みながら、正しく強く、つくりあげていく人生──そこに幸福があるのです」
 私は、短大生の胸に、観念でも虚飾でもない、真実の人間学を刻んでおきたかった。
 「英知なしに真の幸福はありえない」(『告白』上、桑原武夫訳、岩波文庫)とは、フランスの哲人ルソーの叫びである。
 私は、愛娘たちに語った。
 「社会には、人を陥れ、だまそうとする悪人もいる。人びとを見下す倣慢な人間もいる。それらを打ち破り、すべてに勝利し、幸福に生き抜いていくための勉学です」
 聡明な瞳を輝かせて領く学生がいた。真剣にノートを取る友もいた。
 何度も、朗らかな清々しい笑い声が広がった。
 まさに、フランスの女性思想家シモーヌ・ベーユが綴ったような光景であった。
 「知性は歓びのなかでなければ育たず実もむすばない。走者に呼吸が必要なように、学ぶ歓びは勉強に不可欠である」(冨原真弓編訳『ヴェイユの言葉』みすず書房)
 教室の隅では、妻が微笑みを浮かべて見守っていた。
2   美しき
    心と心の
      短大生
 私が初めて、この創価女子短期大学の設立構想を発表したのは、一九六九年(昭和四十四年)の七月のことである。
 その四年後、関西の交野に創価女子学園が開校した。将来の短大の設立も視昨に入れながら、私たちは女子教育の模範の伝統を築いていった。
 その後、時代の流れもあり、検討を重ねて、一九八二年(昭和五十七年)より、東西の学園は男女共学となったのである。
 しかし、殺伐たる現代社会にあって、新たな光明を放ちゆく「女性教育の城」の建設を、私は深く心に期していた。
 ”女性こそ、未来における理想社会の建設者である”──これは、創価教育の師・牧口先生の確信であられた。
 先生は、二十世紀の初頭に、いち早く女性のための通信教育を推進なされている。
 短大の開学は、その先師の夢を大きく開花させる事業でもあった。そこで、東西の創価学園の「共学一期生」の卒業に時を合わせ、短大を設立することが決められていった。
 そして、桜の花が校内に爛漫と咲き薫る、一九八五年(昭和六十年)の四月九日、わが使命が光る短大は、第一回入学式の日を迎えたのである。
 真新しい「白鳥体育館」に、はつらつとした英知の三百七十三人の第一期生が晴れやかに集った。
 清楚な白のブラウスに、私と妻が入学の、お祝いとして全員に贈った、エメラルドグリーンのスカーフが鮮やかに映えていた。
 ”私が創立した短大に来てくれて、本当にありがとう”
 私は心で合掌した。
 私と妻は、短大生を、わが娘として、永遠に守り抜いていとうと語り合っていた。
 自ら提案して、キャンパスに紅白の梅、桜、桃、桐、ざくろ、萩なども植えてもらった。
 私は、二日聞にわたった開学の祝賀会にも出席した。
 「明後年には、短大の最初の卒業生が出ます。どうか、よろしく、お願いいたします」
 来賓の企業関係の方々に、私は名刺をお渡ししながら、深々と最敬礼をした。
 私は、乙女らの輝く未来の道を開くためなら、何でもしてあげたかった。
 お陰さまで、わが短大の就職率は、毎年、ほぼ百パーセントを誇っている。
 私は、女子短大の建学にあたり三つの指針を贈った。
 知性と福徳ゆたかな女性。
 自己の信条をもち人間共和をめざす女性。
 社会性と国際性に富む女性──の三項目である。
 この建学の心を体して、「女性の世紀」をリードしゆく、短大卒業生のスクラムは、今や六千五百人に広がった。
 社会での評価も高い。各界のトップの方々からも、信頼と賞讃の声が多々、寄せられる。本当に喜ばしい限りだ。
 その使命の舞台は、実に多彩に広がっている。
 公認会計士も、税理士もいる。学者も、教員もいる。大企業の秘書も、起業家もいる。国際便の客室乗務員も、新幹線の車掌も活躍している。
 はや、清新な志の政治家も登場している。
 いずこにあっても、人びとのため、社会のために献身しゆくリーダーとして、短大卒業生は、健気に輝いている。
 ともあれ、私たちがめざす根本の目的は「平和」の二字である。
 この平和の女性リーダーを陸続と育成していることが、わが女子短大の誉れである。
 仏典には、「女人は嫉妬かさなれば毒蛇となる」という厳しき一節が記されている。
 自分の弱い心に、決して負けてはならない。
 平和は、清き心から生まれる。生命を慈しみ、友の喜びを我が喜びとしゆく美しき女性の心にこそ、真実の平和の天使は住むのだ。
 全米随一の女子大学であるウェルズリー大学でも、「女性が平和のリーダーシップをとっていくための教育」に全力を注いでいると伺った。
 私がお会いしたカザンジン学部長は、そのためには「精神性」「宗教性」の深みを与えていく必要があると、力説されていた。全く、その通りである。
 一期生が、入学の年の秋に”短大祭”を開催したいと言った時、私は「白鳥祭」という名称を提案した。皆、大喜びで賛同してくれた。
 同窓生の集いである「短大白鳥会」の翼もまた、世界に羽ばたき、心と心を結びながら、平和の虹を架けている。
3   白鳥会
    耐えて 飛びゆけ
      幸福城へ
 わが短大生は、世界の一流の人格と知性の方々と触れ合う機会も多い。
 一九九二年の十二月、”公民権運動の母”ローザ・パークスさんが、講演会のために、アメリカの創価大学のロサンゼルス分校(当時)を訪れてくださった。
 折しも、語学研修中の短大生が歓迎し、敬意を込めて「母」の歌を披露した。
 パークスさんは、「皆さんの清らかな心根に深い感銘を受けました」と、ことのほか喜ばれたようだ。それが、翌年、私ども夫婦とパークスさんが友情を結んでいく、最初のきっかけとなったのである。
 パークスさんは、短大生との懇談会で語られた。
 「最も尊敬する人は、母です。なぜなら、母は、強い意志をもって『自分の尊厳』を守ることを教えてくれたからです」と。
 女性には、次の世代へ、「人間の尊厳」を教え、「生命の尊厳」を伝えゆく、本然の教育力がある。「女性の世紀」とは、この母たちの教育力が最大に発揮されゆく時代である。
 ゆえに、「女性の世紀」は即「教育の世紀」である。
 そしてまた、ここにこそ、「平和の世紀」の実像もあるのだ。

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