Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

読書週間に寄せて 希望と勝利が青年の旗!

2002.10.31 随筆 新・人間革命5 (池田大作全集第133巻)

前後
1  十月二十七日から、恒例の「読書週間」が始まった。
 今年で、第五十六回の歴史を刻んだ。
 先日、私は、この「読書」を大きなテーマに、若い学生たちと懇談した。
 若い人には、未来がある。希望がある。大きな価値ある人生が待っている。
 若い人びとを大切にすることが、教育者はもちろん、すべての指導者にとっての根本である。とくに政治家は、その重要な一点を、絶対に忘れてはならない。
 「権力者は、自分のみを独善的に考え、人びとを見下す場合が多い。とりわけ、これから伸びゆく青年を見下したり、利用したりすることは罪悪である。人間として最低の輩だ」とは、ある国のある先哲の言葉であった。
2  恩師戸田城聖先生は、若い人へ徹底的に読書を勧め、こう教えられた。
 「人生、青春時代に、良き読書をしない人は、大人になっても情緒がなく、人との対話も下劣なものにならざるをえない。親になってからも、子どもに対して威張りくさるだけで、何の教養も与えられず、すべてが悪循環になってしまう場合がある」
 ことに、私に対しては、それはそれは厳しかった。
 「今、何を読んでいるか」
 「読んでいるなら、その感想を言いなさい」
 当時は苦しい思いをしたが、第一級の教育者から薫陶を受け、読書を実践したがゆえに、今はそのおかげで、第一級の人生を名実ともに歩むことができたと、感謝に堪えない。
3  唐の大文人・韓愈は歌った。
 灯火、ようやくく親しむべし」
 簡編かんべん 巻舒けんじょすべし」
 清涼な秋を迎え、次第に灯火に親しめる時候になった。書物を繙いて読むのに、よい季節が訪れた、と。
 「読書の秋」である。この一言は、東洋の伝統的な良風であり、人間の世界を豊かにしてくれる。その美しい響きは、我々の脳裏から離れない。
 読書によって、「前頭前野」と呼ばれる脳の前部は大いに活性化する。読書をせず、テレビゲームなどばかりに没頭していると、感情を制御する脳の働きが悪くなり、集中力がなくなり、衝動的に切れやすくなる──今、心ある脳研究者の方々が、こう指摘され、憂慮されている。
 読書をしなければ、創造力もなくなり、動物性になってしまう恐れがある。良き本を読むことは、良き人生を創り、良き人生を生きていくことである。これは、世界共通の法則であろう。
 ロシアの文豪チェーホフは綴った。
 「書物の新しいページを一ページ、一ページ読むごとに、わたしはより豊かに、よりつよく、より高くなっていく!」(佐藤清郎訳編『チェーホフの言葉〈新装版〉』彌生書房)
 また、インドの詩人タゴルは、「自分の心と他人の心を弱くする習慣をつけてはいけない。自分の偉大な力を自信をもって認めなさい」(「書簡集」溝上富夫訳、『タゴール著作集』11所収、第三文明社)
 その最たる第一歩は、魂を揺り動かす良書との出会いではないだろうか。

1
1