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日蓮大聖人・池田大作

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新社会人の友に贈る 信用は宝 君よ職場の勝利者たれ

2002.3.29 随筆 新・人間革命4 (池田大作全集第132巻)

前後
1  澗漫の春が巡り来るたび、私は、恩師・戸田先生を、桜花に包まれてお見送りした日のことが、昨日のように思い起こされる。
 文豪トルストイは「信仰は人生を決定する」(『一日一章 人生読本〈7~9月〉』原久一郎訳、社会思想社)と言ったが、私の人生は、大仏法を教えてくださった師の存在なしにはありえなかった。
 春はまた、新たな旅立ちの季節でもある。
 今回は、卓越した実業家でもあられた先生のご指導を振り返りながら、この春、社会人として新出発する青年に祝福のエールを贈りたい。
2  新社会人の皆さんに、まず肝に銘じていただきたいことは、「信用こそ力」「信用こそ宝」という一点である。
 今の日本の混乱や迷走を見ても、その根底には、「信用の失墜」という問題がある。政治家しかり、官僚しかり、企業しかりである。
 また、いかに優秀な人であっても、社会のルールを無視したり、おろそかにしては、誰からも信用されない。
 信用という土台があって、初めて、自分の力量も存分に発揮していけるのだ。
 新社会人として、その信用を築くための基本の第一は、”朝に勝つ”ことだ。
 戸田先生は、遅刻には、ことのほか、厳しかった。それは、皆に、日々、リズム正しい健康な生活を確立させるための、厳愛でもあったと思う。
 「一日の出発に当たって、生き生きと清新な気持ちと決意にみなぎっている職場は、発展する」
 「責任者が遅刻したり、多くの社員がだらしなく遅刻を重ねるような職場は、必ず問題を起こし、衰微する」と、先生はよく語られていた。
 特に、新入社員には、「誰よりも早く出勤するぐらいの気概と懸命さを持て」と、厳格に教えておられた。
 私も、先生の会社に勤め始めたころ、毎朝、始業時間の三十分前には出勤し、職場を清掃し、元気いっぱいの挨拶で先輩たちを迎えたものである。
 前夜の学会活動が、どんなに深夜に及んだとしても、戸田先生は、遅刻の理由として認めなかった。「それは、信心利用だ!」と、一喝されたのである。
3  また、第二には、「正確な報告」「緊密な連絡」が大事である。これらは、職場という生命体を支える神経系統といえようか。
 仕事は”情報戦の舞台である。情報が正確か、あいまいか、いいかげんか、嘘か、それが勝負を左右する。
 その職場で、大切な情報の共有化がなされているかどうかも、仕事を遂行していくうえで不可欠である。
 連絡・報告に私情を交えたり、針小棒大な言い方をするのは、判断を狂わせる可能性がある。わが師は、そういう癖のある人には厳しかった。
 先生は、良い報告であれ、悪い報告であれ、迅速・正確な情報を大事にされた。
 そして、報告や話には「要・略・広」の三つがあるのだと教えられた。
 つまり、至急の時は要点を、時間が許されるのなら概略を、さらに説明の必要があれば広く、詳細に──ということである。
 ともあれ、仕事上の情報には、大きな責任がともなうことを、新社会人の皆さんは、絶対に忘れてはならない。

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