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日蓮大聖人・池田大作

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ソローの不滅の声 正義に生きよ 宇宙の法則を進め

2001.5.4 随筆 新・人間革命4 (池田大作全集第132巻)

前後
1  「宇宙の不変の法則はすべて正義、公平の側にある」(山崎時彦『非政治的市民の抵抗』世界思想社)
 これが、十九世紀アメリカの思想家ソローの大確信であった。
 正義の信念に戦い伊く人生は、「宇宙の不変の法則」と合致しゆく人生である。
 ゆえに、いかなる低次元の圧迫にも屈することはない。
 その魂の発光は、目先の致誉褒庇を超越して、国を超え、時を超えて輝き、共感と理解と連帯を広げるものだ。これは、古今東西の歴史を貫く道理といってよい。
 二〇〇一年の五月三日を、世界が祝賀してくれている。
 光栄にも、アメリカからは、この五月三日、ソロー協会のロン・ボスコ会長、並びにジョー・マイアソン事務総長一行が、祝福に来日してくださった。
 ボスコ会長は、ニューヨーク州立大学アルバニー校の教授であり、マイアソン事務総長は、サウスカロライナ大学の教授である。お二人とも、ソローこその師匠であるエマソン研究の世界的権威として名高い。
 先生方は、創価の人間革命運動に、ソローの自己変革の哲学との奥深き共鳴を、明快に洞察されている。
2  へンリー・D・ソローは、一八一七年の七月、アメリカ東部マサチューセッツ州のコンコードに生まれた。
 この天地こそ、哲人エマソンを中心に、瑞々しい文学・思想が花開いた、アメリカ・ルネサンスの揺籃である。
 独立から半世紀。時代は新たな変革を求めていた。
 窒息するような宗教の権威の壁をを打ち破れ! 人びとを呪縛する金欲や物欲の鎖を断ち切れ! 人間の誇りを取り戻せ!
 若きソローも、エマソンの知遇を得て、精神革命の希望の砲声を響かせた。
 師匠を原理とすれば、実践・展開は弟子の本領であろう。
 一八四五年、二十八歳になるソローは、七月四日の独立記念日を期して、町外れのウォールデン池の畔に建てた丸木小屋で、二年余にわたる一人暮らしを始めた。
 彼は、「自己を信頼せよ」「自らの内面を開発せよ」と説いた師エマソンの自立の哲学を、わが青春の探究を通して実験していったのだ。
 大自然との共生、読書と思索、隣人との交流……この実験の間に、彼が綴った魂の深化の記録が、今日まで愛読されている名著『ウォールデン──森の生活』である。
3  ”森の生活”を始めて一年後の七月、彼の身に重大な事件が起こった。
 「投獄」である。
 筋金入りの奴隷制反対論者であったソローは、折から勃発したアメリカ・メキシコ戦争にも、奴隷制拡大を狙うものだと強く反対していた。
 そして、国家の不正に加担することを拒否。成年男子に課せられていた「人頭税」の納付を拒絶し続けたことから、投獄されたのである。
 この体験から生まれたのが、後に”世界の歴史を変えた”と謳われた論文『市民の反抗』である。
 ソローの信条は、こうだ。(以下、『市民の反抗』〈飯田実訳、岩波文庫〉から引用・参照)
 ──人数の多寡は問題ではない。正しい者こそ、真の「多数派」だ。たった一人でよい。誠実な人間が正義のために身を投げ出すなら、それが平和革命の第一歩になる、と。
 彼は、気骨ある「人間らしい人間」を待望した。真の改革は、悪と戦う勇気の「一人」から始まるからだ。
 「人間を不正に投獄する政府のもとでは、正しい人間が住むのにふさわしい場所もまた牢獄である」
 ソローの叫びから約百年後の七月、牧口初代会長、戸田二代会長は、信教の自由を圧殺する軍部権力と対決し、投獄された。後年、第三代の私も、卑劣な冤罪で獄につながれ、裁判闘争が続いた。
 正義ゆえの迫害と投獄。これが、創価学会の永遠の誉れである。

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