Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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起稿の天地・長野 「言論の国」から人間主義の光

1998.2.8 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

前後
1  二月十一日は、戸田先生の九十九回目のお誕生日。
 しかも、今年は、先生が逝去されてから、四十回目となる。お祝い申し上げる感慨は無量にして尽きない。
 十九歳で先生に出会い、お仕えし、育てられた私である。先生の前では、永遠に青年でありたい。
 わが師匠に褒めていただける、本当の青年の、本物の弟子の戦いをと、強く、深く、心に誓う日々。
2  私が、先生の伝記小説の執筆を決意したのは、一九五七年(昭和三十二年)、師の生前、最後の夏――先生が静養されていた軽井沢に呼んでいただいた時のことである。
 その日、八月十四日。
 先生と、初めてお会いしてから、十周年の記念日であった。
 静養といっても、先生の頭脳は休むいとまもない。
 学会の将来の展望。私に対する種々の指導。また軽井沢地区の幹部と懇談し、激励されてもいる。
 この時、翌月の九月八日に、青年部への遺訓の第一として発表された「原水爆禁止宣言」についても、深い思索を重ねておられた。
 「未曾暫廃みぞうざんぱい」(未だ曾て暫くも廃せず)の文の如く、その戦いは、止むことがなかった。
 ″この師の真実を、誰が永遠に残すのか。それは身に影の添うように、先生に仕えることのできた、栄誉ある私の使命ではないか″
 それまでも、幾度か胸に去来した小説『人間革命』の執筆の思いは、ここで定まった。
3  現在の『新・人間革命』もまた、先生の薫陶を受けた弟子が、いかなる人生を歩んだか――その事実をもって「師の偉大さ」を証明したいと思い、あえて筆をとった私。
 九三年(平成五年)八月六日。あの「原爆の日」の午後であった。
 私は、軽井沢の長野研修道場で、インドのガンジー記念館館長のラダクリシュナン博士とお会いした。
 博士は、「魂の力は原子爆弾より強い」とのガンジーの信念に触れ、一人ひとりの「魂の力」を引き出していくことが、平和を生み出していく、根本的運動であると語っておられた。
 そして、創価学会は、世界稀なる未来を志向した偉大なる存在であると称賛してくださったのである。
 人類の生存の権利を脅かす核兵器は、人間の生命に潜む、権力の魔性の権化といえる。この魔性を打ち破る「魂の力」、仏の生命を涌現する戦いこそ、「人間革命」である。
 この日の朝。法悟空は、『新・人間革命』の執筆を開始した。
 「平和ほど、尊きものはない。平和ほど、幸福なものはない……」
 あえていえば、それは、「原爆の日」に、自ら下した、平和への闘争宣言であった。
 戦争の世紀の、傲慢無知な権力の魔性を断ち、人類の悲劇を、二度と繰り返さないために。

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