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第43回「SGIの日」記念提言 「人権の世紀へ 民衆の大河」

2018.1.26 「SGIの日」記念提言(池田大作全集未収録分)

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1  市民社会の声が後押しした核兵器禁止条約の採択
 きょう26日の第43回「SGI(創価学会インタナショナル)の日」に寄せて、SGI会長である池田大作先生は「人権の世紀へ民衆の大河」と題する記念提言を発表した。
 提言ではまず、今年で世界人権宣言の採択70周年を迎えることを踏まえ、起草に尽力したハンフリー博士やアパルトヘイト(人種隔離)撤廃のために戦い抜いたマンデラ元大統領との交流を振り返りつつ、人権の礎は“同じ苦しみを味わわせない”との誓いにあると強調。排他主義を食い止めるための鍵として、仏法の生命論や牧口常三郎初代会長の思想に触れながら、青年に焦点を当てた人権教育を進めることを提唱している。
 また、アメリカ公民権運動の歴史に言及し、差異を超えた連帯で時代変革の挑戦を前に進め、その喜びを分かち合う生き方に、人権文化の紐帯はあると訴えている。
 続いて、昨年7月に122カ国の賛成を得て国連で採択された核兵器禁止条約の意義に触れ、唯一の戦争被爆国である日本が核依存国の先頭に立って、核兵器禁止条約への参加に向けた意思表明を行うよう呼び掛けている。
 また、年内の採択が目指されている、難民と移民に関するグローバル・コンパクトで、「子どもたちの教育機会の確保」を各国共通の誓約にすることを提案。高齢化の問題を踏まえて、「高齢者人権条約」の交渉開始と、第3回「高齢化世界会議」を日本で開催することを提唱している。
 最後に、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の前進に向け、日本と中国が連携して「気候保全のための日中環境自治体ネットワーク」を形成することや、国連で「女性のエンパワーメントの国際10年」を制定することを訴えている。
 昨年は、平和と軍縮を巡るターニングポイント(転機)の年となりました。
 国連での交渉会議を経て、核兵器禁止条約がついに採択されたのです。
 7月の採択以来、50カ国以上が署名しており、条約が発効すれば、生物兵器や化学兵器に続く形で、大量破壊兵器を禁止する国際的な枠組みが整います。
2  そもそも、核兵器を含む大量破壊兵器の全廃は、国連創設の翌年(1946年1月)、国連総会の第1号決議で提起されたものでした。以来、光明が見えなかった難題に、今回の条約が突破口を開きました。しかも、被爆者をはじめとする市民社会の力強い後押しで実現をみたのです。
 その貢献を物語るように、条約制定を求める活動を続けてきたICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)にノーベル平和賞が贈られました。
 先月の授賞式で、ベアトリス・フィン事務局長に続いて演説したサーロー節子さんは、広島での被爆体験を通し、「人類と核兵器は共存できない」「核兵器は必要悪ではなく、絶対悪」と訴えました。フィン事務局長は今月、日本を訪問し、創価学会の総本部にも来訪されましたが、演説に込められた思いは、発足まもない頃からICANと行動を共にしてきたSGIの信念と重なるものです。
 ひとたび敵対関係が強まれば、相手の存在を根本的に否定し、圧倒的な破壊力で消し去ることも厭わない――。核兵器を正当化する思想の根底には、人権の根本的な否定ともいうべき冷酷さが横たわっています。
 私の師である創価学会の戸田城聖第2代会長が、核開発競争が激化した冷戦の最中(57年9月)に「原水爆禁止宣言」で剔抉したのは、まさにその点でした。
 抑止による平和の名の下に核の脅威が広がる中で、「その奥に隠されているところの爪をもぎ取りたい」(『戸田城聖全集』第4巻)と、世界の民衆の生存の権利を根底から脅かす核兵器の非人道性を指弾したのです。
 その遺志を継いだ私は、半世紀前(68年5月)に行った講演で、当時、交渉が終盤を迎えていた核拡散防止条約(NPT)の妥結だけでなく、製造・実験・使用のすべてを禁止する合意の追求を呼び掛けました。
3  世界人権宣言の起草に込められた差別なき社会への思い
 また私は、40年前、国連の第1回軍縮特別総会に寄せて、核廃絶と核軍縮のための10項目提案を行い、第2回の軍縮特別総会が開催された1982年にも提言をしました。
 そして、翌83年から「SGIの日」記念提言の発表を開始し、これまで35年間にわたり、核兵器の禁止と廃絶への道を開くための提案を重ねてきたのです。
 なぜ私が、これほどまでに核問題の解決に力点を置いてきたのか。
 それは、戸田会長が洞察したように、核兵器がこの世に存在する限り、世界の平和も一人一人の人権も“砂上の楼閣”となりかねないからです。
 SGIが核廃絶の運動を続ける中、交流を深めてきた団体の一つにパグウォッシュ会議があります。その会長を昨年まで務めたジャヤンタ・ダナパラ氏も、核問題をはじめとする多くの地球的な課題に臨むには倫理的なコンパス(羅針盤)が欠かせないと強調していました。
 「倫理的な価値観という領域と、現実主義的な政治の世界は大きくかけ離れており、決して接することはないと広く考えられているが、それは正しくない。国連のこれまでの成果は、倫理と政策の融合は可能であることを示しており、平和と人類の向上に貢献してきたのは、この融合なのである」(IDN―InDepthNews 2017年1月23日配信)と。
 今年で採択70周年を迎える世界人権宣言は、その嚆矢だったといえましょう。
 そこで今回は、世界人権宣言の意義を踏まえつつ、地球的な課題に取り組む上で「倫理と政策の融合」を見いだすための鍵となる、一人一人の生命と尊厳に根差した「人権」の視座について論じたい。

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