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第39回「SGIの日」記念提言 「地球革命へ価値創造の万波を」 

2014.1.26 「SGIの日」記念提言(池田大作全集未収録分)

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1  きょう26日の第39回「SGI(創価学会インタナショナル)の日」に寄せて、池田SGI会長は「地球革命へ価値創造の万波を」と題する提言を発表した。提言ではまず、災害や異常気象の被害が深刻化する状況を踏まえ、脅威に対処し未来を切り開く力としての「レジリエンス」の意義に言及。「持続可能な地球社会」に向け、一人一人がなし得る挑戦として、
 ①常に希望から出発する価値創造、
 ②連帯して問題解決にあたる価値創造、
 ③自他共の善性を呼び覚ます価値創造、
 の3点を提起し、南アフリカのマンデラ元大統領の信念や、日蓮大聖人の仏法が説く「誓願」の生き方と「十界互具論」を通しながら、すべての人々の尊厳が輝く社会の建設を呼び掛けている。続いて、その挑戦を軌道に乗せるための方策として、国連の新しい共通目標の柱に教育と青年を加えることや、国連の枠組みで「世界市民教育プログラム」を設けることを提唱。また、災害や異常気象に関して近隣諸国で連携を深めることが、安全保障の質的転換につながると強調し、その先行モデルをアジアで構築するべく「日本と中国と韓国の首脳会談」を行い、対話を積極的に進めるよう提案している。最後に核兵器の問題を取り上げ、広島と長崎への原爆投下から70年となる来年に、世界の青年たちの参加を主軸にした「核廃絶サミット」を行い、核時代に終止符を打つ宣言を採択することや、核兵器の人道的影響に関する共同声明の動きなどを軸に国際世論を喚起し、核兵器禁止条約の締結を目指すことを訴えている。
 「SGIの日」を記念して、21世紀の潮流を希望と連帯と平和の方向に力強く向けながら、すべての人々が尊厳を輝かせて生きられる「持続可能な地球社会」を築くための方途を探りたいと思います。
2  脅威への抵抗力と回復力を高める
 昨年は世界経済が緩やかな回復に向かい、軍事費も減少傾向が見られるなど明るい兆しもありましたが、一方で、紛争や内戦による人道危機は止まず、災害や異常気象による甚大な被害も相次ぎました。
 特に深刻さを増しているのがシリアの情勢です。紛争が4年目に突入する中、230万人以上が他国への避難を、650万人が国内での避難生活を余儀なくされており、一日も早く停戦を図り、人道支援の環境を確保するとともに、和平への努力が強められることを願ってやみません。
 また昨年11月には、過去最大級の猛烈な台風がフィリピンを襲い、6201人もの人々が亡くなり、避難した被災者は約409万人にのぼりました。
 こうした人道危機に対して事態の悪化を食い止め、難民や被災者として厳しい環境下に置かれている人々の窮状を救うために、国際社会のさらなる支援が強く求められます。
 また近年、災害や異常気象による被害が深刻化する状況を踏まえると、国際的な支援の強化のみならず、「いかに脅威に備えるか」「危機に直面した時にどう対応し、どう回復を図るのか」との観点に基づいた取り組みが急務であり、社会のレジリエンスを高める必要性が叫ばれるようになってきました。
 レジリエンスは元来、物理学の分野で、外から力を加えられた物質が元の状態に戻ろうとする“弾性”を表す用語ですが、その働きを敷衍する形で、環境破壊や経済危機のような深刻な外的ショックに対して“社会を回復する力”の意味合いでも用いられるなど、さまざまな分野で注目を集めている概念です。
 災害の分野においては、防災や減災のように「抵抗力」を強め、被害の拡大を抑えていく努力と併せて、甚大な被害に見舞われた場合でも、困難な状況を一つ一つ乗り越えながら、復興に向けて進む「回復力」を高めることを重視する考え方と言えましょう。
 そのためには、耐震性の強化や劣化したインフラ(社会基盤)の整備などの政策面での対応もさることながら、「強力な社会的レジリエンスの存在するところには、必ず力強いコミュニティが存在する」(アンドリュー・ゾッリ/アン・マリー・ヒーリー『レジリエンス復活力』須川綾子訳、ダイヤモンド社)と指摘されるように、人的側面への留意が欠かせません。
 つまり、地域に住む人々のつながりや人間関係のネットワークのような、ソーシャル・キャピタル=注1=を日頃からどう育むかという点をはじめ、目には見えない“地域と社会を根底で支える人々の意思と生命力”こそが、重要な鍵を握るということです。
 このレジリエンスの重要性は、私が現在、平和学者のケビン・クレメンツ博士と進めている対談の中でも話題になり、災害時における事後的な対応に限らず、国連が呼び掛ける「戦争の文化」から「平和の文化」への転換のように、社会の土壌そのものを変革していく上でも、大きな意義を有することを語り合いました(「平和の世紀へ 民衆の挑戦」、「潮」2014年1月号所収)。
 そこでの議論を踏まえて提唱したいのは、レジリエンスの概念に内包される豊かな可能性を「脅威に備えて対応する力」の範疇にとどめず、より積極的に「希望の未来を開くために発揮すべき力」へと拡張し、人々が勇んで連なりたいと願い、確かな手応えを感じられる挑戦として位置づけていくことです。
 つまり、脅威への対処だけでなく、未来の創出をも目的に据えて、それぞれの地域で誰もが関わることのできる「レジリエンスの強化」を通しながら、「持続可能な地球社会のかけがえのない基盤を築くこと」を人類の共同作業として進める挑戦です。
3  人類の歴史に新たな足跡を
 トインビー博士が寄せた力強い期待
 この大いなる挑戦を展望するにあたって思い起こされるのは、20世紀を代表する歴史家のアーノルド・J・トインビー博士が述べていた、「われわれは、歴史をして繰りかえさせるべく運命づけられているのではありません。つまりわれわれ自身の努力を通じて、われわれの順番において何らかの新しい、先例のない変化を歴史に与える道がわれわれには開かれている」(『試練に立つ文明』深瀬基寛訳、社会思想社)との言葉です。
 ここで言う、「何らかの新しい、先例のない変化を歴史に与える道」とは何か──。私は、一人一人の人間の立場に約して、人々のため、社会のため、未来のために、自分にしかできない価値を創造し続ける挑戦として提起したい。
 以前(2002年8月)、環境開発サミットに寄せた提言で、「迂遠のようではあっても、人間に帰着し、人間生命の開拓と変革から出発する『人間革命』こそ『地球革命』を実現させゆく王道」と呼び掛けたことがあります。
 一人一人の無限の可能性を引き出すエンパワーメント(内発的な力の開花)を基礎に置く「人間革命」も、個人の内面の変化にとどまってしまえば真価を発揮することはできません。
 その“内なる変革”がもたらす勇気や希望が、厳しい現実を突き破るための価値の創造に結実してこそ、“社会的な変化”を起こすことができ、その変化が積み重なる中で、人類が直面する問題を乗り越える「地球革命」の道が、一歩一歩踏み固められていく。
 また、「地球革命」が前に進むことで、苦しみに沈んでいた人たちが笑顔を取り戻し、その人たちがまたエンパワーメントを通じて無限の可能性を開花させ、地球的問題群に立ち向かう連帯に勇んで連なっていく──このミクロとマクロの変革を同軸でつなぎ、双方の前進を連動させながら時代変革の潮流を高めるものこそ、「価値創造」の挑戦だと思うのです。
 そこで今回は、脅威を乗り越えるためのレジリエンスを高め、さらには「持続可能な地球社会」を築く上での原動力となりゆく「価値創造」の挑戦について、①常に希望から出発する価値創造、②連帯して問題解決にあたる価値創造、③自他共の善性を呼び覚ます価値創造、の三つの観点から論じてみたい。

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