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日蓮大聖人・池田大作

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はじめに「キューバの使徒 ホセ・マルテ…  

「カリブの太陽」シンティオ・ヴィティエール(池田大作全集第110巻)

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1  〔対談者略歴〕
 シンティオ・ヴィティエール(Cintio Vitier)
 一九二一年アメリカ生まれ。ホセ・マルティ研究所所長。一九三五年キューバの首都ハバナ市に移住。ハバナ大学で公民法博士号を取得。ラスヴィージャス中央大学スペイン学部長など大学で教鞭をとる一方、『ヌエバ・レヴィスタ・クバーナ(キューバ新誌)』の主宰をはじめ、『国立図書館誌〈ホセ・マルティ編〉』『マルティ年鑑』『サラ・マルティ』など諸誌の主幹、翻訳書の執筆など、長年にわたりマルティに関する膨大な量の出版活動に尽力。マルティ研究の第一人者。
2  「使徒」――この言葉には、殉教の響きがあります。
 この世に苦悩がある限り、身を捨てて戦い続ける人。正義に殉ずることに、いささかの逡巡も気負いもなく、むしろ、それを無上の喜びとし使命としている人。千年先を見すえつつ足下を忘れず、無私の曇りなき眼と愛情で、民衆の心の奥底に語りかけることをやめない人。
 ホセ・マルティは、まさに「使徒」でありました。
 一九九六年(平成八年)の六月二十四日の午後、私は、カリブ海に浮かぶキューバ共和国を初めて訪れました。
 マルティは、キューバの精神的支柱であります。革命家にして詩人、作家、教師、ジャーナリスト、外交官――その多面的な足跡については、私もかねてから注目しており、ハバナ大学での講演でも論及しました。
 ただ、私自身、実際に訪れるまで、その人物像はおぼろげな輪郭にとどまっていたことは、いなめません。
 しかし、マルティが愛してやまなかった海を見、木々を見、花を見、丘を、空を、街を、星を、夕陽を、そして闊達な人々を見て、「ここはマルティの国である」「あらゆるところにマルティがいる」と知りました。短い滞在の間、カストロ議長をはじめ、キューバの方々と対話を重ねるたびに、その印象は確信へと変わっていきました。
 そして、ホセ・マルティ研究所のシンティオ・ヴィティエール博士との対談によって、私はあらためて、この類稀なる人物の実像を確認できたのです。
3  総合月刊誌「潮」誌上での対談のタイトルを「『キューバの使徒 ホセ・マルティ』を語る」とすることは、博士からの提案でありました。
 この「使徒」の一語に、博士のマルティに対する奥深き尊崇、敬慕の念が、強くにじみ出ていました。
 博士の父君は、キューバで初めて、マルティの研究書を著された先駆者です。
 その父君から、博士は、使命の探究を厳粛に受け継がれ、そして崇高な同志である令夫人と、労苦を分かちあってこられました。
 偉大な先人を真実に学ぶことは、みずからも、その先人のごとく生きることでありましょう。
 博士ご夫妻は、まさしく、真に“マルティを生きている”方です。
 マルティがそうであったように、博士の心が、世界の多様性へ広々と開かれていることに、私は対談中、しばしば感じ入ったものです。この博士との対話は、私にとって、マルティというキューバの魂の真髄に迫りゆく、かけがえのない黄金の旅となりました。

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