Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

ヴェーダの神々  

「内なる世界 インドと日本」カラン・シン(池田大作全集第109巻)

前後
1  池田 『リグ・ヴェーダ』を代表とするヴェーダ文学中に見いだされる神々について、私の所感を述べ、かつ博士のお考えもお聞きしたいと思います。
 ヴェーダ群最古の文献である『リグ・ヴェーダ』は、数多くの神々への讃歌に満ちております。なかでも、もっとも多数の讃歌が捧げられているのが、インドラです。この神に捧げられた讃歌の数が、『リグ・ヴェーダ』讃歌全体の約四分の一を占めていることからも、インドラがいかに広く人々の信仰を集めていたかが推測できます。それだけに、その擬人化も進み、鮮明に人格化されているといえます。
 『リグ・ヴェーダ』では、インドラは武勇神・英雄神として崇拝され、なかんずく雷霆神としての性格が際立っているといわれています。体躯は巨大であり、武勇に長け、名馬ハリの引く戦車に乗り、アーリア人の敵であるダーサ(先住民)の城塞を粉砕して、「城塞破壊者」とも呼ばれるインドラには、アーリア人が理想とした戦士が神格化されているようです。
2  カラン・シン 『リグ・ヴェーダ』においては、インドラの占める位置の大きさはたしかに際立っています。インドラという語は本来「指導者」を意味しますが、それが神を表すようになったことは、敵との死闘を展開していたアーリア人が、つねに指導者の力を讃美していたことを明確に示しています。
3  池田 ところで、このインドラの起源ですが、アーリア人がインド西北部に侵入してくる以前から信仰され、古くは小アジア、メソポタミアにまで知られていた神であったという説もあります。
 その証拠として挙げられる文献に、西暦前十四世紀の中葉、小アジアに覇を唱えたヒッタイト王スッピルリウマと、ミタンニ王マッティワザとの間に結ばれた条約文の中に、多くの神々の名が列挙されているのですが、その中にインドラの名があり、さらに、『リグ・ヴェーダ』にも登場するミトラ、ヴァルナといった神々の名が挙げられているそうです。
 このことからも、インドラをはじめヴェーダの神々のいくつかの起源が、かなり古いものであったことがわかります。
 このインドラは、仏教においては帝釈天と呼ばれ、仏法の守護神として位置づけられています。須弥山の頂にある利天の喜見城に住する天主で、三十三天(利天)の主であることから、「神々の帝主シャクラ」とも呼ばれます。この「神々の帝主シャクラ」に相当するサンスクリット「シャクラ・デーヴァナーム・インドラ」が中国の漢字に音写されて「釈提桓因」となりました。
 現代インドのヒンドゥー教においても、ヴェーダのインドラは、それなりの信仰を得ているのでしょうか。それとも、シヴァやヴィシュヌの陰に隠れて、往時のような民衆の崇拝を失ってしまったのでしょうか。

1
1