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日蓮大聖人・池田大作

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代表幹部研修会(5) 世界を変えるには目の前の「一人」から

2005.8.15 スピーチ(2005.8〜)(池田大作全集第99巻)

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1  女子部は真の幸福をつかめ
 本日は、女子部の代表も参加されている。本当に、ご苦労さま! 日々、真剣な祈りを重ねながら、広布のために果敢に行動している皆さんの姿は、まことに尊く、美しい。
 自分のことをなげうってまで、大目的に向かって懸命に生きゆく皆さんを、我賢げに批判する、愚かな人々もいるかもしれない。しかしそれは、根本的に間違った見方である。浅はかな人間たちである。
 戸田先生は、言われていた。
 「同世代の女性たちが、自由に、遊んでいるなかで、女子部は、人のため、法のために動いている。尊貴な信念に生きている。こんなに美しい心をもった娘さんが、どこにいるか。絶対に、幸にしてあげたい」
 そう言って、力強く励ましておられた。
 法華経には、「竜女の成仏」が説かれる。(提婆達多品)
 「竜女が成仏此れ一人にはあらず一切の女人の成仏をあらはす」と仰せのとおり、竜女の成仏は、すべての女性の成仏を表している。
 先駆の一人がいれば、その人が手本となって、多くの人が続いていける。われらの広布の前進にあっても、女子部の使命は、本当に大きい。女子部が増えれば増えるほど、広布は速く進む。不思議な方程式である。女子部の皆さんは、自信と誇りをもって、学会活動に励んでほしい。絶対に損はない。
 皆さんの世代は、有名人や、華やかな世界に憧れる風潮も強いだろう。テレビの影響も大きい。しかし、そうした華やかさは、一種の幻である。幻をいくら追いかけても、本当の幸福はつかめない。今、女子部の皆さんが歩んでいる道は、地味なように見えて、じつは、真実の幸福に直結する最高の宝の道である。この道を歩みぬいた人には、竜宮城のような世界が、今は思い描くこともできないようなすばらしい世界が、開けていくのである。誉れある学会の女子部として、悔いのない青春を送っていただきたい。
2  哲学者ヤスパースの探究――「負けない心」がすべてをプラスに
 ここで、二十世紀を代表するドイツの哲学者カール・ヤスパースを通して、少々、お話ししたい。ヤスパースについては、これまでもたびたび、語ってきた。
 ヤスパースは、一八八三年生まれで、八十六歳の長寿をまっとうした。(一九六九年没)
 しかし、生来、病弱な体質であり、大人になっても気管支や心臓などの疾患に苦しんだ。階段を昇ったり、時には、少しの距離を歩いただけで、息切れするほどであったと言われる。彼は、自身の病弱と向き合い、闘うなかで、哲学の探究を深めていったのである。否、多くの困難があったからこそ、それをバネとして、卓越した業績を残すことができたのではないかと、私は思う。
 私自身、若いころは本当に病弱だった。医師から、三十歳まで生きられないと言われたこともある。しかし、だからこそ、″今、この瞬間を最高に充実させて生きよう″″生きている間に、価値ある何かを絶対に残そう″という決意で生きぬいてきた。
 人間だれしも病気になることはある。肝心なのは「病気に負けない」ことだ。「強い心」「負けない心」があるかぎり、人間は、すべてをプラスに転じていける。いわんや、私どもには、最高の勇気と希望の源泉である「信心」がある。
 ヤスパースは、当初は医学を学んでいた。しかし、デンマークの思想家キルケゴールの哲学との出あいや、著名なドイツの社会学者マックス・ウェーバーとの交流などを通して、哲学の探究へと向かっていく。
 一九三〇年代、ドイツでナチスが台頭すると、妻がユダヤ人であったことから、ヤスパースは厳しい迫害にさらされた。「非国民」と蔑まれ、大学教授の職を追われた。やがて、著書の出版も禁止された。そうした暗澹たる状況のなかでも、彼は、新たな著作の執筆に取り組んでいった。
 一九四五年の春には、いよいよ収容所に送られる危険が迫った。しかし、ドイツの敗北によって、夫妻は危うく命を救われたのである。戦後、ヤスパースは、ナチスの犯罪とともに、ナチスの暴虐を許してしまった国民の道徳的責任について、厳しい問いを発したことでも知られている。
3  ヤスパース 「活動の中に真理がある」
 ヤスパースは、大著『哲学』『真理について』のほか、『大学の理念』『歴史の起源と目標』『マックス・ウェーバー』など多くの著作を残した。
 ヤスパースの思想の一端を示す、一つのエピソードがある。第二次世界大戦の終結から間もない、一九四七年。ある二人の若者が、ハイデルベルクにあるヤスパースの自宅を訪ねた。
 初対面の青年を迎えたヤスパースは、彼らの質問に答えて、こう語った。
 「専門哲学者は往々、真理は机の上にあると信じています。真理は机上にあるのではなく、それはそもそもでき上がってあるのではありません。君たちは、真理を交わりの中に見いだすことを学ばねばなりません。いったいプラトンの対話は、どのように成立しているかね? 活動の中に真理がある」(重田英世『人類の知的遺産71 ヤスパース』講談社)
 そして、青年の求めに応じて、「われわれを結びつけるものが真理である」(同前)との言葉を記し、贈ったのである。
 真理とは、いったい、どこにあるか。それは、机の上にあるわけではない。どこかにちゃんと、できあがっているものではない。自分の行動で、つかみとるものである。人間の交わりの中で見いだされるものである。活動の中にこそ、真理がある――これがヤスパースの信念であった。
 きょうも、明日も、人間の中に打って出て、語り、行動している私たちは、日々、偉大な価値を創造しているのである。

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