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日蓮大聖人・池田大作

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山梨代表協議会 「大願」ある人生は幸福

1998.3.21 スピーチ(1998.3〜)(池田大作全集第89巻)

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1  命ある限り前へ前へ
 久しぶりに、山梨・教学研修センターを訪問した。
 今年の冬は、山梨は記録的な大雪であったと、うかがった。その大雪にも負けずに、あの町でも、この村でも、山梨の同志は、勇敢に広宣流布の拡大に戦われた。
 三つの〈県〉が、それぞれに偉大な歴史を飾られた。青年部の活躍も頼もしい。
 大聖人が、また日興上人が「善き哉、善き哉」と、皆さま方を抱きかかえるように賛嘆しておられるに違いない。
 本日(三月二十一日)は、彼岸の中日であり、全世界の亡くなられた我が同志ならびに先祖代々の諸精霊に、私は真剣に追善させていただいた。
 ただ、私どもの場合、日々、朝な夕なに、大宇宙をも包みゆく荘厳な勤行で回向を重ねている。また「広宣流布のために行動している」こと、それ自体が、最高の追善となっているのである。
 大切なのは特別な形式でもなければ、あらたまった儀式でもない。三世永遠の妙法を唱え、行じゆく我々にとっては、毎日が「彼岸」なのである。
2  この教学研修センターの前を、笛吹川は、来る日も、また来る日も、たゆみなく流れている。人生も、毎日毎日、水が流れゆくごとく、淡々と、間断なく、偉大なる静かな前進を続けていくことが大切である。
 先日、創価大学の卒業式で紹介したアルゼンチンの大医学者、ウサイ博士(一九四七年のノーベル生理学賞・医学賞受賞)は、八十歳の誕生日を迎えても、いつもと少しも変わらずに語ったという。
 「八十歳、あるいは幾つになったからといって、お祝いの式を行うことを、よいとは思いません。人間の仕事は、一生涯、死によって制止されるその日まで中断してはならないのです。各人が、心身ともに健康であるかぎり、常に自分自身と隣人のために働かねばなりません」
 「私は青年時代、そして今日までの闘争を忘れません。しかし、むしろ、青年に手を差し伸べるために、国を前進させるために、『まだまだ、やるべきことが、いかに多いか』――そのことのほうに、何よりも興味があります」
 これが″人生の達人″の生き方である。なお、喜ばしいことに、ここ山梨でも、我が創価大学の出身者が、いよいよ大いなる光を輝かせ始めた。
3  民衆が向上してこそ民主主義
 民主主義の発祥の地は、ギリシャのアテネといわれる。しかし、大哲学者・ソクラテスを死罪にしたのも、またアテネであった。
 なぜ、民主主義が発達したのに、偉大な人物が抹殺されたのか。それはアテネ人が、大きな欠点を持っていたからであるという。それは「嫉妬深かった」という一点である。
 平均よりも抜きんでた人物が出ると、皆で寄ってたかって叩き、あら探しをし、最後には追放してしまう。そういうことを繰り返して、アテネには二流、三流、四流の人間しかいなくなり、衰え、滅んでいった――と。
 こういう歴史を通して、ある学者は言う。
 「民主主義が成功した民族は、たいてい、この嫉妬心が少ない民族である」
 たとえば、かつてのイギリスでは、「国の役に立つ人間だ」と見ると、小さな嫉妬心を忘れて、みんなで、その人を、もりたてていった。
 十九世紀の名宰相ディズレーリは、ユダヤ人であったが、保守党は、そんなことを気にせず、彼をもりたてて党首にし、首相にした。大英帝国の最盛期である。
 ほかにも、「あいつは偉いやつだ」となると、過去のいきがかりには、こだわらず、みんなでもりたてて、リーダーにしていった。
 かつてのアメリカも、そうであり、偉い人間が出ると、みんなで励まし、応援して、本当の「大物」にしてしまう。小さな嫉妬心よりも、国家と社会全体のことを考えた。
 「こういう広い心をもった国民でないと、民主主義は成功しない」というのである。
 たしかに、アメリカ人には「人の幸福や成功を素直に喜ぶ」という美徳があると言われてきた。
 一方、日本は、「人の不幸を喜ぶ」という卑しい嫉妬心が強いと指摘されてきた。この「一凶(元凶)」を治さなければ、日本の民主主義は、衆愚政治になってしまうであろう。
 日本は今、民主主義の危機である。民主主義の″形式″は整っているようで、その″内実(中身)″がない。″アンコのないアンパン″のようだという人もいる。
 民主主義の中身とは何か。それは、一人一人の民衆の向上であり、躍動であり、完成であり、幸福である。ここに、民主主義の目的もあるし、実質もある。
 一人一人の国民が、社会の主人公にふさわしい哲学と信念、希望と情熱をもって、生きているかどうか。日本では、むしろ民衆の心が空虚になっている。からっぽになりつつある。
 そこに「権力の魔性」が、つけこんでくる。国家主義の危険がある。非常に危ういところに来ている。
 その今、民衆一人一人の心の内側から、充実を与え、信念と勇気を与え、鋭い批判力を与えているのが創価学会である。これこそ″民主主義の内実″をつくる運動なのである。

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