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日蓮大聖人・池田大作

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神奈川・静岡最高会議 英国紳士の「精神的ふくよかさ」

1993.6.10 スピーチ(1993.1〜)(池田大作全集第82巻)

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1  神奈川・静岡の最高会議を心から祝福申し上げたい。
 どうか内外を問わず、「身近な人を大切に」「縁あるすべての人を大切に」、仲良く進んでいただきたい。そうした振る舞いに、仏法の心があり、そこから人生の数々の美しいドラマが生まれる。
 先月下旬、「聖教新聞」に数学者・藤原正彦氏のエッセーが掲載された(五月二十二日付「ポルトガルへの思い」)。氏は、有名な作家・新田次郎氏、藤原てい女史のご子息で、著名な数学者である。
 私は、記事を拝見して、即座に感謝の伝言を託した。氏は喜んでくださり、すぐにご著作『遙かなるケンブリッジ』(新潮社)を贈ってくださった。
 本日は、氏への感謝を込めて、このご著書で紹介されている″イギリス人のふくよかな人格″について、少々、紹介しておきたい。
2  聖教新聞に掲載された氏の随筆を、私はフィリピン・香港ホンコンから訪れた福岡の地で拝見した。以来、早、半月を経たが、氏の「ポルトガルへの思い」は、私自身の旅情とも交響して、今なお深い余韻を残している。また、署名をいただいた氏の著作『遙かなるケンブリッジ』も、広島、神戸の旅のなかで、読了した。まことに流麗な筆致であり、イギリスの緑の風に包まれゆくような、さわやかにして充実した読書の時をもつことができた。
 崇高なる学問の探究、異国の文化への懐の深い理解、ほほえましくも尊き家族のスクラム、そして青年を育む大きな慈愛──ケンブリッジの春夏秋冬に刻まれたドラマが、一つ一つ、すがすがしく心に映った。とともに、「人間」と「世界」と「文明」を見つめる澄んだ眼差しに、私は強い感銘を受けた。
3  ケンブリッジ大学といえば、私にとっても忘れ得ぬ学問の府である。
 一九七二年、私は、歴史学者トインビー博士のご招待を受け、訪英した。芳香漂うメイフラワー・タイムの季節であった。当時、私は四十四歳。氏が留学された年齢と同じである。その折、ケンブリッジ大学を訪問する機会にも恵まれた。
 私は、東洋学部のM・ローウィ学部長らと、ケンブリッジの伝統、大学教育の在り方などを語り合い、トリニティ・カレッジをはじめ、多くのカレッジを案内していただいた。
 私が創価大学を創立したのは、その一年前のことである。七百年の荘重な伝統を誇る大ケンブリッジが、赤子のごとき誕生まもない東洋の一大学の代表を、まことにフェア(公正)な心で迎えてくださった。私は今も感謝とともに思い起こす。
 学生寮も見せていただいた。いずれも、古びた質素な部屋であったが、ノーベル賞に輝く俊英を数多く輩出したのもこの部屋であることを思うと、感慨は尽きなかった。
 ケンブリッジの冬もさぞかし寒いことだろうと、私は八王子の創価大学の寮のことを二重写しに思った。もともと、都心の喧騒を離れた緑豊かな武蔵野をキャンパスに選んだ私の念頭には、オックスブリッジ(オックスフォードとケンブリッジ)の教育環境が一つのモデルとしてあった。

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