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日蓮大聖人・池田大作

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SGIアジア記念総会 一番大切な時は「今」、人は「縁している人」

1993.5.16 スピーチ(1993.1〜)(池田大作全集第82巻)

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1  すばらしきアジア家族の集い
 懐かしい、わが愛する香港ホンコンの皆さまと、今年もお会いでき、私はうれしい。
 訪れるたびに、香港の皆さまは成長しておられる。発展しておられる。私は心から敬意を表したい。また、いつも変わらない真心で温かく迎えてくださり、役員の方々に最大に感謝申し上げたい。
 本日の総会には十四カ国・地域の代表が集い、素晴らしいアジア家族の会合となった。各国の皆さま、遠いところ、本当にご苦労さまです。
 人間は「人の間」と書くように、一人で生きることはできない。「友人」が大切である。また真の「同志」は宝である。
 孤独な人は、生きているうちも不幸であり、死ぬ時も孤独である。死は来世への出発であり、孤独な死は、来世の孤独にも通じていく。
 それに対し、私たち学会員は、生も死も、同志の唱題に包まれている。楽しく、にぎやかに、守られながら進んでいる。
 十方の諸仏、諸菩薩とともに幸福の旅を送っていけるのである。これ一つとっても、学会員であることは素晴らしい。
2  私は世界に数多くの友人をもっている。先日、(元ソ連大統領の)ゴルバチョフ氏がライサ夫人とともに創価大学を訪問された。夫妻との語らいの折、ロシアの大文豪・トルストイのことも話題になった。私が、トルストイをはじめ、ロシア文学を愛読していることを夫妻は、よくご存じであった。
 トルストイは、わかりやすい民話や物語をたくさん残している。大地とともに生きる民衆のためであり、未来を託す少年・少女のためである。
 そのなかに「三つの疑問」という物語がある。
 ある時、皇帝が仕事をしていくうえで、三つの疑問にぶつかった。
 それは第一に、仕事にとりかかるにあたって、一番適切な「時」とはいつか、という疑問である。どういう「時」をはずさなければ、悔いを残さないですむのか──。
 第二に、自分にとってどういう人が、一番必要な人物なのか、どういう人を大切にしていけばよいのか、という疑問である。
 そして第三に、すべての事業のなかで、どういう仕事が、一番大切なのか、という疑問である。皇帝は、この三点を知りたいと強く願った。これがわかれば、成功の人生を歩めると、考えたからである。
 皇帝は、正しい答えを教えてくれた人には莫大なほうびを与えようと国中に知らせた。多くの学者が集まってきて、さまざまな答えを出した。しかし、皇帝はそのどれにも納得できなかった。
 「学者」が即「賢者」とはかぎらない。物語の詳しい内容は略させていただくが、皇帝は、庶民とともに生きる一人の賢者との出会いのなかで、真実の解答を見いだしていく。
 その賢者は示した。
 一番大切な時とはいつか。それは「今、この瞬間である」と。
 また、一番重要な人とは、だれか。それは「今、現在、自分がかかわっているその人である」と。
 そして、一番大切な仕事とは何か。それは「人に善をなすこと。人のために尽くすことである」と。
 大切なのは、いつかではない。今、この瞬間である。きょう、この一日である。今、この時に全魂を傾けていく。その「今」に「勝利の未来」が含まれている。
3  また、どこか遠くに特別な人がいるのではない。権威の人、知識の人、有名の人、富の人が大切なのではない。自分が、今、縁している人、その人を大切にしていく。そばにいる、あの人、この人を、その人の特質を考えながら、全部、生かしきっていく。それが賢人である。そこに万人の信頼を勝ち取る道もある。
 私が海外を訪問する場合も、飛行機を降りて、まず最初に会う人、その人に最大の真心で接していく。そこから、私の友好は始まる。
 (アメリカでSGI会長が会ったサンフランシスコ州立大学の教授ルナイン博士は、こう語っている。「一般に、多忙な要人といわれる人ほど、一時の出会いに心を込めない人が多いように思われます。一人に会った瞬間に、もう次の人との出会いのことを考え、″心ここに在らず″との印象を与えることがしばしばあります。しかし、SGI会長は、″今、ここにいる人″に対し、最大の誠意をもって、一人一人と人間としての温かな交流を果たされたのです。私は、そこに人間性の美の極致を見る思いさえしました」)
 また、無名であってもよい。平凡であってもよい。″自分のためではなく、人のため、友のために、民衆のために、私は私らしく行動の歴史を残した″。そう言い切れる人こそが、人間としての皇帝であり、人生の皇帝である。

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