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日蓮大聖人・池田大作

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イギリス青年部総会 生きぬけ!「使命の星」に向かって

1991.6.29 スピーチ(1991.4〜)(池田大作全集第77巻)

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1  ヨーロッパ文学の精髄『神曲』
 私はうれしい。わが愛するイギリス青年部の皆さまと、ここ「人材の城タプロー・コート」で、このように、ともに祈り、ともに語り、ともに歴史をつづることができ、これ以上の喜びはない。(拍手)
 皆さまは″青春の太陽″である。無限の可能性が輝いている。偉大な未来を照らしている。このすばらしき、尊き″太陽の青年の総会″を、心からお祝いしたい。(拍手)"
 イギリスの青年部の皆さまとゆっくりお会いしたい、との願いを、旅の最後に実現することができた。各地から馳せ参じてくださった皆さまに、私のほうこそ、感謝申し上げたい。とともに、この席をお借りし、今回のイギリス滞在中、お世話になったすべての皆さまに、厚く厚く御礼を申し上げたい。(拍手)
 イギリス青年部の成長はまことにめざましい。とくに今年の三月十六日「広宣流布記念の日」から、この百日間、一人一人が、それぞれの身近な課題に挑戦しながら、この日を晴ればれと迎えられたことを、私はよくうかがっている。きょうお会いできなかった方々にも、どうかくれぐれもよろしくお伝えいただきたい。
2  さて、貴国の誇る今世紀最大の歴史学者トインビー博士との、あの忘れ得ぬ出会いから、はや二十年近い歳月が流れようとしている。博士との対談集は、これまで十三カ国語で出版され、世界の多くの識者から、今も大きな反響が寄せられている。(=『二十一世紀への対話』。本全集第3巻に収録。一九九七年九月現在、二十一言語で出版されている)
 博士は、私に「自分も若ければ、東洋の仏法の真髄を探究し、行動したかった」との心情を語っておられた。もし博士が、本日の若き妙法の紳士・淑女の集いをご覧になったならば、きっと「ワンダフル!」と心から祝福してくださると信ずる。(拍手)
 ところで、トインビー博士との対談の折、私は、好きな作家について質問した。すると博士は真っ先にダンテをあげられた。
 なぜ、ダンテが好きか――。博士は言われた。
 「ダンテは二つの点でとても不運な人間でした。一つは愛する人と別れねばならなかった。一つは愛する故郷フィレンツェを不当な理由で追放された。しかしダンテがもしこの二重苦を味わわなかったとしたら、あの『神曲』は決して生まれなかったでしょう。ダンテは、偉大な芸術を生みだすことによって、みずからの私的な不幸を世界の多くの人々の僥倖へと転換しました。だから私はダンテの人格を敬愛してやまないのです」と――。
 ご自身の努力の生涯とも二重写しにするように、ダンテを語られたトインビー博士のまなざしを、私は懐かしく思い出す。大切な、二十一世紀の指導者である皆さまに、きょうはこのダンテをとおして、少々スピーチさせていただきたい。
 一切法は皆これ仏法である。仏法のリーダーも幅広く学び、さまざまなことに挑戦することによって、自身の境涯を深め、広げる必要がある。知性の指導者であっていただきたい。情熱の指導者、信念の指導者、そして人間性あふれる指導者であっていただきたい。
3  さて「ダンテの『神曲』ほど有名な本もない。そして、これほど実際に読まれない本もない」と言った人がいる。なるほど、現代では、いよいよそのとおりであろう。
 ――皮肉屋で有名な、ここイギリスの小説家バーナード・ショー(一八五六年〜一九五〇年)。彼に、こんなエピソードがある。
 ある婦人が、一冊の書名をあげたところ、ショーは読んでいなかった。婦人は得意気に言った。
 「ショーさん、この本は、もう五年間もベストセラーですよ。それなのに、ご存じないとは!」
 ショーは穏やかに答えた。
 「奥さま、ダンテの『神曲』は、五百年以上もの間、世界のベストセラーですよ。お読みになりましたか?」
 ショーの面目躍如というところだが、イギリスでさえ『神曲』は「読まれない本」の代表なのかもしれない。
 しかし、この一書は「ヨーロッパ文学の精髄」であり、「ダンテを知る者は文学の秘鑰ひやく(秘蔵を開けるカギ)を握る」とされる″人類の永遠の宝″である。その核心部分だけでも、若き日にふれることは有益であろう。ただ全部は難解であるし、必ずしも読む必要はないと思う。
 それよりも当然、大切なのは御書である。日蓮大聖人の御書を深く、また深く拝していただきたい。若き日に教学を学びぬいた人は強い。生涯の無限の宝となる。
 ただ、きょうはヨーロッパのメンバーにとって、背景がわかりやすいため、『神曲』をとおして、普遍的な人間の生き方を語っておきたい。記憶によったので、また時間もかぎられているため、表面的かもしれないが、ポイントをいくつか述べておきたい。

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