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日蓮大聖人・池田大作

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学生部夏季講習会 諸君こそ「人間世紀」の旗手

1990.7.21 スピーチ(1990.2〜)(池田大作全集第74巻)

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1  祖国の「独立」と「自由」叫んだフィヒテ
 本日から、総本山での学会伝統の夏季講習会が始まった。今年も学生部の諸君が先駆を切っての開催である。全国から集われた諸君に、心からご苦労さまと申し上げ、求道の青春を最大にたたえたい。(拍手)
 昨年の学生部夏季講習会では、スイスの教育家ペスタロッチをとおしてスピーチをさせていただいた(=本全集第73巻収録)。彼が活躍していた当時のヨーロッパは、ナポレオン軍による戦争と占領という、大きな激動の時代であった。
 また三年前(昭和六十二年)の学生部夏季講習会では、トルストイの『戦争と平和』に描かれた、ロシアのクトゥーゾフ将軍とナポレオンの戦いをとおして語らせていただいた(=本全集第68巻収録)。そこで本日は、ナポレオンによって占領された時代のドイツを舞台に、話を始めたい。
2  一八〇七年、プロイセン(ドイツの前身)はティルジットの和約を結び、ナポレオンによつて国土を半減されてしまう。そのうえ、国内にナポレオン軍が駐留し、ドイツは完全にフランスに屈する形となってしまった。そうした外患に加え、国王の悪政によって財政は破綻。また、ナポレオンに内通して国を売ろうとする輩も、蠢動していた。
 ――この時、祖国に加えられた屈辱と危機に対し、敢然と一人立ち上がり、民族の誇りと団結を訴えて反撃を開始した哲学者がいた。その名は、ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ(一七六二年〜一八一四年)。
 フィヒテは、カントやヘーグルとともに、ドイツ観念論を代表する哲学者である。また、ベルリン大学が開設された折には哲学部長の任を受け、さらに総長となった教育者でもある。
 彼はペスタロッチとも友情を結び、ドイツにペスタロッチの教育学を紹介したといわれる。真実の友情は、人間として最高の宝である。
 ちなみに、私のドイツにおける親しい友人の一人、N・A・カーン博士は、このベルリン大学の流れをくむベルリン自由大学の教授である。同博士とは、ドイツで、また日本で、お会いするたびに真摯な対話を続けている。
3  祖国の危機を救うために立ち上がったフィヒテ――。彼の″戦い″は、スピーチ(講演)であった。
 彼は、フランス軍に占領されていた首都ベルリンにおいて、有名な「ドイツ国民に告ぐ」と題する連続講演を行う。時に四十五歳。講演は一八〇七年十二月十三日から翌年三月二十日まで、日曜日ごとに十四回にわたって続けられた。
 フランス軍の戒厳下で、ドイツ人の「団結」と「独立」を訴えた講演である。当然、暴力による威嚇や妨害はやむことがなかった。ある時は、フランス兵の鳴らす軍鼓の音で、講演を中断されてしまったこともあった。
 しかし、彼は少しもたじろがない。そこに彼の偉大さがある。高貴な魂をもった人は、何ものにも恐れたり臆したりすることはない。
 当時、彼は知人への手紙の中で、このように述べている。
 ″今、自分がいかに危険なことをやっているかは、よく知っている。銃で狙われていることも知っている。しかし、私は何も恐れない。みずからの目的のためには、喜んで死んでいこう″と。
 彼がどれほどの決意でこの講演に臨んだか。まさに死を賭しての叫びであった。
 私も現在、あらゆる機会に、連続して渾身のスピーチを続けている。広宣流布の勝利のために、後世の盤石な軌道を築くために、毎回、真剣勝負の思いで語りぬいている。いかに非難や迫害を受けようと、この大目的のために喜んで命をなげうとうとの決心である。(拍手)
 語らなければ楽かもしれない。戦わなければ安穏かもしれない。しかし、それでは広布の勝利はない。広宣流布は壮大な精神闘争であり、知性の戦であるからだ。

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