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生命力を引き出す仲介者

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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1  池田 「健康ブーム」イコール「薬ブーム」と言われるほど、薬への関心が高いようです。実際、いろいろな薬が出ている。そのわりに、薬について正しい知識をもっていない。これが現実では、ないでしょうか。
 そこで、三人の専門家の方に、薬について、うかがいたいと思います。
 金谷芳雄副ドクター部長・児玉ひとみ・加藤百合子 よろしくお願いします。
 池田 薬といえば、こんな思い出があります。中国の桂林を訪れたときのことです(一九八〇年、第五次訪中)。皆で船を待っている間に、二人の薬売りの少女と出会いました。そこで私は聞いてみました。
 「すみませんが、頭のよくなる薬はありませんか」(笑い)。すると、「あ、それでしたら、たった今、売りきれたところです」(笑い)。ユーモアのセンスといい、とっさの機転といい、じつに洗練されている。さすがは文化と歴史の大国だなと感心しましました。
 金谷 日本人なら、「そんな物はありません!」(笑い)と、冷たくあしらうかもしれませんね。
2  体のもつ「治す力」を助ける――「薬に頼りすぎ」は危険
 池田 ところで、薬とは何でしょうか。
 金谷 中国では何でも薬になると言われています。(笑い)
 加藤 日本の薬事法という法律では、人や動物の病気の治療、診断、予防のために使われるものとされています。
 児玉 そのなかでも、厚生省の認可を得たものが「医薬品」です。
 金谷 薬の基本は、体のもっている「治す力」を助けるものです。薬(内服薬)を英語で「メディスン」と言いますが、その語源には「媒介」「仲介」「仲裁」などの意味があります。体のもっている「自然治癒力」を引き出す媒介が薬だと思います。
3  戸田先生「体は一大製薬工場、薬は補い」
 池田 そうでしょうね。戸田先生は「人間の体は一大製薬工場だ」と言われていた。「それを、なんとか医学で、薬で、補おうというだけなのです」と。
 児玉 それは、すごく大事な観点だと思います。薬に頼ればいいというのではなくて、根本は、できるだけ薬がなくてもいい方向に、自分の体をもっていくことなんです。
 池田 では、「病院でもらう薬」と、「町の薬局・薬局で自由に買える薬」とは、どう違うのですか。
 児玉 病院の薬は「医療用医薬品」と呼ばれ、医師の処方せんが必要です。薬局・薬店で市販される薬は「一般用医薬品」と呼ばれています。
 池田 風邪をひくと、病院では何種類もの薬が出ますが、薬局で買うと一種類ですね。どうしてですか。
 加藤 病院の薬は、「一つの薬に一つの成分」というのが基本になっています。ですから、「熱があって」「せきが出て」「鼻水がひどい」といった場合、それぞれの症状に応じて薬が出されるので、種類が多くなってしまうのです。
 児玉 市販の薬は、風邪のいろいろな症状に効くように、いろいろな成分を一つにまとめたものと考えればよいと思います。
 金谷 あえて料理にたとえると、市販の薬は「レトルト食品(調理した食品を袋づめし、熱と圧力を加えて殺菌したもの)」と言えるかもしれません。それに対し、病院の薬は、野菜や肉、果物など、いろいろな材料を使った「手料理」と言えるでしょう。
 池田 なるほど。医師はその材料を、患者さんの要望に応じて、処方するわけですね。
 加藤 はい。調理そのものは薬剤師がします。
 児玉 病院の薬の大きな長所は、同じ風邪でも、熱がある場合やない場合など、個人の状態に適した薬を処方できることです。
 金谷 それに、眠くならないようにしてほしいというような患者さんの要望に、ある程度、応じることができます。市販の薬では、それができません。また、熱がなくても解熱剤が入っていたりして、必要のない薬を飲んでしまうことにもなります。

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