Nichiren・Ikeda
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ストレス
前向きで「プラス思考」が大切
「健康対話」(池田大作全集第66巻)
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1 池田 現代は、ストレス社会と言われます。ここではストレスを取り上げましょう。
そもそも「ストレス」とは何でしょうか。
豊福 もともとは工学や物理学の言葉で、物体に力が加わったときにできる「ひずみ」のことです。
森田 たとえば、ゴムボールを指で強く押すと、へこみができます。ボールが外からの力で押された状態を「ストレス」といいます。
池田 医学の分野で、ストレスという言葉を使ったのはだれですか。
森田 カナダ・モントリオール大学のハンス・セリエ博士が、一九三六年に発表した論文で初めて用いました。彼は、人間が刺激を受けたときに生じる「ひずみ」を「ストレス」と呼び、「刺激」を「ストレッサー」と呼びました。現在では、ストレッサーもふくめてストレスと呼んでいることが多いです。
池田 ストレスには、どんなものがありますか。
豊福 暑さや寒さ、けがや騒音などの「物理的・化学的なストレス」、飢え、感染、過労などの「生理的なストレス」があります。
森田 こうしたストレスは昔からありました。現代人に多いのが、「社会的・心理的なストレス」です。たとえば、職場や学校での人間関係、仕事や学業、経済的な悩み、それに家族や親しい友人の病気・死亡、事故や災害などです。
池田 現代社会の変化のスピードは急速です。また、激しい競争社会、管理社会です。いつも追い立てられているような感じになっている。しかも支えとなる人間関係は希薄になっている。根本的な「安心」がない。
豊福 現代が「ストレス社会」と呼ばれる理由もそこですね。
2 配偶者の死は最も強いストレス
池田 一般的に、いちばん強いストレスは何でしょうか。
森田 日常生活の出来事では、「配偶者の死」がもっとも強いという調査があります。続いて「離婚」や「別居」があげられています。
池田 仏法でも、愛する者との別れは愛別離苦(愛する者と離れなければならない苦しみ)といって、さけられない八つの苦悩(八苦)の一つとされています。
豊福 一方、「結婚」も、強いストレスの上位に位置しています。(笑い)
池田 いちばんにあげる人もいるかもしれませんね(笑い)。初めは愛しあっていたはずなのに、いつか「顔を見るのもイヤ」になる(笑い)、怨憎会苦(八苦の一つで、いやな人と会わなければならない苦しみ)です。人間ですから、やはり「人間関係」がいちばんの喜びにもなれば、いちばんのストレスにもなるのでしょうね。
森田 「ひずみ」がひどくなると生活にも現れてきます。
池田 「イライラ」もストレスがたまっている証拠と言われますね。ストレスが過剰となると、どんな症状になりますか。
豊福 緊張や不安が高まり、何かやろうという意欲も低下します。
森田 「何か病気のせいか」と思って病院に行っても、一般的な検査では、結果は「異常なし」とされます。
池田 それで、ますますストレスがたまる(笑い)。そんな場合もあるでしょうね。ストレスを測る検査はないのですか。
森田 一応はあります。血圧・脈拍・筋電図・脳波・眼球の動きなどを測り、心理テストなどの結果を合わせて、ストレスの度合いを測ろうというものです。
しかし、これですべてのストレスがわかるわけではありません。
3 自律神経、免疫、内分泌にも影響
池田 ストレスは当然、肉体にも影響をあたえているわけですね。
森田 はい。脳を通じて自律神経、免疫、内分泌の働きに大きく影響します。
たとえば、不安や苦痛などのストレス状態が長く続くと、リンパ球のなかの「NK(ナチュラル・キラー)細胞」の数が減り、免疫機能が低下するとされています。
豊福 「NK細胞」はがん細胞をやっつける働きをしますので、がんにもかかりやすくなると考えられます。
池田 「がんの進行」にも、ストレスが影響する、と。じつに人間の生命は不思議です。「妙」です。心と体は、まさに一体ですね。
森田 そう思います。胃潰蕩や十二指腸潰傷、片頭痛、自律神経失調症、高血圧症、不整脈、喘息。また、めまいなどを起こすメニエル病、うつ病、不安神経症、恐怖症なども、ストレスが深く関係している場合があります。
池田 最近よく見られるのは、どんな病気ですか。
森田 過敏性腸症候群というのがあります。ストレスが原因で、下痢や便秘、腹痛が長期間、断続的に続くものです。
豊福 通勤や通学の電車の中で腹痛が起こるので、「どこの駅のどこにトイレがあるか」を全部知っているという人もいます。