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風邪 「万病の元」だからこそ注意を

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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1  池田 春の天気は微妙ですね。
 森田 暖かいと思うと、急に寒くなったり……。
 池田 体調をくずしやすい季節です。風邪もひきやすい。そこで、風邪について考えてみてはどうでしよう。
 豊福 賛成です。年齢、性別を問わず、万人がかかる病気ですから。
 池田 全人類がかかる″五十七億人の病気″と言われていますね。(=二〇〇八年月現在、世界の人口は約六十六億人)
 風邪で死亡することはありますか。
 森田 風邪が直接の原因で死亡するケースもあります。しかし、それよりも、風邪をこじらせて肺炎や気管支炎を起こして、生命の危険をまねくことのほうが多いです。
 日本では、三大生活習慣病に次いで多い死亡原因が、肺炎・気管支炎です。とくに、高齢の方は注意が必要です。
 池田 「たかが風邪」と甘く見ると大変ですね。
 豊福 はい。風邪によって、持病の心臓病や糖尿病を悪化させることもあります。
 森田 たしかに、昔から「風邪は万病の元」と言われています。いつごろから言われているのでしょうか。
 池田 医師でも、何でも知っているわけではないのですね(笑い)。二千年近く前の中国最古の医書には「風は百病の長なり。その変化するに至りでは乃ち他病と為るなり」(「黄帝内経素問」)とあるようです。
 豊福 なるほど。風邪をひくときは、睡眠不足や不摂生で体調が悪いときなので、ほかの病気にもなりやすいという面もあります。
 池田 「万病の元」だからこそ、風邪をひかないよう気をつけることによって、「万病予防の元」にもできるわけですね。
 ただし、ひとくちに「風邪」と言っても、いろいろでしょう。
2  風邪の症状でも風邪と限らない
 豊福 ええ。風邪は、くしゃみ、鼻水、発熱といった症状を起こす病気の総称なんです。医学的には「かぜ症候群」と言います。
 どんな病気でも、風邪の症状があれば、「風邪ですね」と言えるので、医師にとっては便利な名前です(笑い)。もちろん、真の病因を見つける努力はしますが……。
 池田 診察を受けて「風邪」と言われたら要注意ですか(笑い)。まして、素人判断で、風邪だと決めつけてしまうのは危ない。
 日蓮大聖人は「病の起りを知らざる人の病を治せばいよいよ病は倍増すべし」と仰せです。これは、「病気の原因を知らない人が病気を治療すれば、いよいよ病気は倍増するであろう」との指摘です。
 ろでしょう。
 ところで寒いと風邪をひくのですか。夏風邪というのもありますが。
 豊福 寒さだけでは風邪をひきません。
 池田 南極の昭和基地の越冬隊は、風邪をひかなかったと聞きました。孤立状態でウイルスに感染する機会がないからでしょうか。
 豊福 そう思います。風邪は、ウイルス、マイコプラズマ、細菌などの感染によって起こります。夏と冬では種類が多少、違いますが、年間を通じていつでも感染する可能性があります。
 森田 寒い時期はインフルエンザが流行します。インフルエンザウイルスは「寒くて、乾燥している」(低温・低湿)ほど感染力が強いのです。しかも、室内は閉めきられていて感染しやすくなります。
 のどや鼻の粘膜も乾燥し、抵抗力も落ちてしまい、「寒さが風邪をひきやすい状態をつくる」わけです。
 池田 では、夏風邪は? 夏に強いウイルスが原因ですか。
 豊福 そうです。アデノウイルスなどは、湿度が高いほど活動的です。風邪の原因の約八割はウイルスですが、その種類は二百種類以上あります。どのウイルスに感染しているかは、検査をすればわかりますが、たいてい、結果がわかるまでに治ってしまいます。
 森田 それで結局、「風邪ですね」で、終わってしまうんです。(笑い)
 また、ウイルスがわかっても、退治する方法が今のところありません。
 池田 モスクワ大学の故ホフロア総長のご子息(アレクセイ・ホフロフ教授)と対談したとき、ウイルスはポリマー(高分子)の一つとうかがいました。「ウイルス」とは、どういう意味ですか。
 豊福 ラテン語で「毒」という意味です。発見(一八九二年)当時は、細菌の毒素と考えられていました。
 のちに、物質には違いないが、中心に遺伝子があり、動物や植物などの細胞に入ると増えることがわかりました。
 池田 「自分の力では増えることはできないが、人体に入り込んで増える」というのは、いかにも悪者らしいふるまいですね(笑い)。顕微鏡で見えますか。
 森田 電子顕微鏡で、見ることができます。細菌よりも小さく、一万分の一ミリくらいです。
 豊福 風邪の原因はウイルスだけではありません。人間の側にもあります。同じような環境にあっても、ひく人とひかない人がいますから。
3  疲れをためない、抵抗力をつける――病は「四大の不調和」から
 池田 仏法では「回大の調和」を説きます。古来、インドでは四大、つまり「地」「水」「火」「風」の四つの要素でとらえる生命観があった。「地」は骨や毛、歯、筋肉を、「水」は血液などを、「火」は体温を、「風」は呼吸をあらわし、これらが和合したものが人間と説いています。そして身体の病は、この「四大の調和」が乱れることにあると説いています。(「摩訶止観」)
 森田 医学的に言えば、「四大の不調和」によって、抵抗力が低下してきます。そこにウイルスが感染し風邪をひくと言えるでしょう。
 豊福 抵抗力の低下の原因には、いろいろあると思いますが、おもに疲労や不摂生などが考えられます。
 池田 大事なのは、疲れをためないことです。これは、すべての病気の予防に通じます。疲れたら早めに休む。その日の疲れは、その日のうちにとる。それも健康のための戦いです。無理と強信とは違う。
 無理は長続きしないものです。
 風邪の予防法として、うがいや手洗いも大事ですね。
 森田 そのとおりです。くしゃみやせきで飛び散ったウイルスは、「吸い込んだり」「手から口に入つて」感染するので、こまめに行っていただきたい。
 豊福 マスクも、ほとりを防いだり、のどに湿気をあたえる効果があります。また予防法には、人ごみをさけるというのがあります。そのとおりなのですが、それだけでは、通勤や買い物、会合など、実際生活ができなくなってしまいます。
 森田 むずかしいところですね(笑い)。体の抵抗力を強くするしかないわけですが……。
 豊福 流行時に風邪のウイルスがいちばん多いのは病院です(笑い)。だからといって、医師や看護婦が風邪になるとはかぎりません。
 池田 抵抗力を強くすることですね。乾布摩擦や冷水摩擦も風邪の予防によいと言われていますが。
 森田 皮膚を刺激すると、体に緊張感をあたえ、自律神経を刺激して、体の抵抗力を高めます。冷水摩擦も同じです。手首や首筋など、外気にさらされる部分だけでも効果があります。水で顔や手を洗うこともいいですね。
 豊福 いつもお元気で、はつらつとしている多宝会の方に、日常、気をつけている点をうかがったことがあります。そのなかに「風邪をひかない」というのがありました。
 池田 日ごろから、意識しているか、いないかで大きく違うものです。乾布摩擦は皮膚を通して体を引きしめる。
 一方、「風邪をひかないぞ」という決意は、心の側から全身の神経を刺激して抵抗力を高める。心が動けば、その方向に頭脳も体も動きだすのです。
 森田 風邪と言えば、忘れられない光景があります。第二回の世界青年平和文化祭(一九八二年九月、当時の埼玉・西武ライオンズ球場)のときのことです。開会前から、雨が降っていました。そのなかを、池田先生はグラウンドを一周されました。ある来賓は、「名誉会長はいったい、どんな言葉をかけるのだろう」と思って見ていたそうです。何か、雨なんかに負けずに頑張れといった言葉を予想していたようです。
 ところが池田先生は「皆さん、本当にご苦労さま。風邪をひかないよう、工夫してくださいね」と。優しい心のこもった声を聞いて、「あの姿こそ、本当の指導者の姿だ」と感動していました。
 池田 当然のことをしただけですが……。友の健康が第一です。皆が日々を健康で、生き生きと社会で活躍することが根本です。私は、いつもそのことを祈っているのです。

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