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日蓮大聖人・池田大作

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コンプレツクスはだれにもある  

「希望対話」(池田大作全集第65巻)

前後
1  ―― 連載開始以来、すごい反響をいただいています。中学生からはもちろんですが、親御さんからも、ぜひ、こんなことを聞いてほしいとか、期待の声が寄せられています。親子でいっしょに読んでいる方も多いようです。
 池田 ありがたいことだ。
 ただ、本当は、悩みを寄せてくれた人に直接、会わなければ、きちんとした答えはできない。新聞の紙面では、どうしても一般論になってしまう。スペ―スの制限もある。だから、きっと納得できない点もあるだろうし、違う意見の人も、いるでしょう。
 その意味で、あくまで、「自分が悩みを乗り越えるための参考」と思ってください。「あ、こんな考え方もあるんだ」「この人にこういうアドバイスをするんだったら、自分の場合はこうだな」と、広げて考えてもらえれば、ありがたい。
 そして親御さんは、できれば、あまり「読め、読め」と押しつけないでもらいたい(笑い)。若いみなさんの「悩みを解決するため」の「希望対話」なんだから。
 押しつけられると、それが新たな「悩みのタネ」になってしまう。(笑い)
 ―― たしかに、どんないい本でも、「読まなきゃいけない」みたいな義務感になると、それだけで苦痛になってしまいますね。
 池田 今、全部、読めなくてもいい。今、全部、わからなくてもいい。学校の勉強があるのだから。
 いずれにしても、私としては、一生懸命、「未来の宝」のために、尽くしていきます。
 ―― ありがとうございます。きょうの質問は、中学二年生の男子からです。彼の悩みは「背が低い」ことです。
 「ぼくは『背が低い』ことが悩みです。クラスでいちばん、背が低いので、『チビ』『チビ助』などと、からかわれます」
 その悩みを打ち明けられたとき、私が微笑んでいるように見えたのでしょうか。彼は「深刻なんです。わかってください!」と、強く迫ってきたことが印象的でした。
2  本人にとっては重大問題
 池田 大人から見れば「たいしたことではない」と思うかもしれない。しかし本人にとっては、大きな問題です。真剣に悩んでいる。その「悩んでいる」という「事実」が重大なんです。
 中学生にかぎらず、他人の悩みというのは、「どうして、こんなことで悩むのか」と思うことも多い。あるいは、事実、「ちっぽけな悩み」なのかもしれない。しかし、人間、それほど「高尚な悩み」など、あまりないものだ。
 だから、悩みの中身が問題なのではない。「悩んでいる人が、そこにいる」「悩んでいる心が、目の前にある」。その事実が問題なのです。その悩みを、いっしょに悩んであげなければならない。
 背が低い、太っている、肌の色が少し黒い、醜い……。容姿へのコンプレックス(劣等感)は、本人がいちばん気にする問題であり、それでいて、他人には、なかなか相談できない。
 だから、まず、容姿の悩みを打ち明けてくれた彼の「勇気」をたたえよう! 身長は、どれくらいですか?
 ―― 一五〇センチです。彼の家系は、親戚きょうだいも含め、小柄な方が多いようです。彼は、お母さんに「なぜ背が低いの?」と聞きました。すると「家系的に小さいのよ。桜梅桃李なんだから、あなたはあなたらしくいきなさい」と。
 (「桜梅桃李」とは、桜は桜、梅は梅、桃は桃、李は李というように、それぞれの個性に従って、自分らしく花を咲かせて生きぬいていくこと)
 彼は、お母さんの言う意味は、よくわかっているのです。どうしようもないと頭ではわかっていても、何とかしたいのです。
 逆に「背が大きい」ことにコンプレックスを感じている中学生もいます。つねに目立っている感じがして、イヤでイヤでたまらないのです。
 池田 背が低いので悩んでいる人から見たら、とんでもない「ぜいたくな悩み」だろうね。(笑い)
 だから、自分がうらやましく思うような人でも、何か「劣等感」をもっている。何か「コンプレックス」をもっている。「えっ、あの人が……」と思うような人でも、もっている。それが実態です。これは本当にそうなんだよ。
3  劣等感を「踏み台に」 負けない自分を
 自分を否定的に見るから「悪循環」に
 池田 しかも、一つのコンプレツクスにとらわれると、人間、自分のすべてを否定的に見てしまうものです。そして、何か、うまくいかないことがあると「自分は、背が低いから、うまくいかないんだ」とか、そのせいにしてしまう。
 その結果、心がちぢみこんで、自分のよいところまで殺してしまう。だから、ますます何もかも、うまくいかなくなる。
 ―― 悪循環ですね。
 池田 劣等感が強いと、みんなが自分のことを笑っているように思う。しかし、実際には、自分が思うほど、人は自分に関心をもってはいないものだ。
 ―― 「自意識過剰」のことが多いのですね。
 池田 それが青春時代とも言える。だから、「気にするな」と言っても無理かもしれない。
 大事なことは、「気になるなら、それはそれでいい。ただし、劣等感に負けるな! 劣等感を『バネ』にし、『踏み台』にして、自分のよいところを伸ばしていけ」ということです。
 背が低いことが気になるなら、大いに気にしなさい!
 しかし、「背が低いから、自分はダメなんだ」と思うなら、あまりにも愚かだ。
 「背が低いから、心はだれよりも大きくするんだ!」「背が低いから、勉強では負けないぞ!」「からかわれた自分だから、絶対に、人をからかったりしない。思いやりのある人間になろう!」
 そのように、コンプレックスを「踏み台」にするのです。負けてはいけない。

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