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日蓮大聖人・池田大作

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人生を劇のごとく  

「第三の人生を語る」(池田大作全集第61巻)

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1  後継の青年の成長
 松岡 東京・武蔵野〈区〉で女子部のヤング・リーダーをされている山本悦子さんから、介護の体験を寄せていただきました。
 山本さんは、全身不随に近い、お母さんを五年前から介護されており、先日の武蔵野〈区〉の青年音楽祭に出演しました。(一九九七年十一月)
 音楽祭の数日前、お母さんが脳梗塞で危篤状態におちいりますが、音楽祭の出演者、スタッフの一丸となった唱題と励ましによって、奇跡的に回復されて、山本さんは、感涙とともにステージに立つことができたのです。
 佐々木 お手紙には、介護のアドバイスも書いてくださっており、「(1)病人の苦しい辛い立場をわかっていく(2)思いやりの心・安心を与えていく(3)病人の前ではグチを言わない(4)病人の前ではつねに笑顔で(5)決して一人で悩まないで、いろいろな人たちからアドバイスを受ける」とありました。
 池田 いずれも大切な視点ですね。
 今、全国で行われている音楽祭、合唱祭、文化祭を通して、青年部が見事に成長しています。
 なかでも、関西での世界青年平和文化祭は、今世紀の総仕上げの文化祭となりました。(一九九七年十一月)
 松岡 来賓の韓国の忠清チュンチョン大学の鄭宗澤チョンジョンテク学長は、「SGIの力、宗教の力、人間の力に不可能はないということを証明した文化祭であった」と賛辞を寄せてくださいました。
 元ソ連大統領のゴルバチョフ氏も、「創価学会は青年を育てている」と感想を語られていました。
 佐々木 その関西での文化祭を客席で見た、滋賀・琵琶湖圏女子部の広田洋子圏主任部長は、八十六歳の祖母を、お母さんと交代で介護されています。
 壮大な文化祭を眼前にして、「この関西を築いてきたのは、祖母たちの戦いがあったればこそ。今ここで、人生の師とともに最高の青春を歩ませてもらっているのも、祖母が信心を教えてくれたからです」と、わき上がる感激を手紙に綴ってくださいました。
 池田 どの文化祭も、舞台裏には、無数の「人間革命の光」がある。「自分革命のドラマ」がある。それが見る人の心を揺さぶり、国境も世代も超えて、生命の奥底からの歓喜を呼び覚ますのでしょう。
2  すべての友を大切に
 松岡 ドラマといえば、池田先生の中部訪問がちょうど百回を数えたさいに開催された、第十三回中部総会での励ましのドラマが忘れられません。(一九九五年五月)
 席上、池田先生は、「だれもが、自分にしか果たせない大切な使命をもっている。ゆえに、すべての人を大切にし、すべての人に光を当て、皆がぞんぶんに活躍していけるようにするのが信心の世界であり、創価学会の世界なのである」とスピーチされました。
 佐々木 先生は、スピーチを終えるや、この指導の実践をそのまま、ご自分で示されましたね。
 場所は中部文化会館でした。会場の後ろのすみで、じっと聞かれていた年配の方を見つけて、丁寧に壇上に招かれて、先生が座っていたイスを勧められました。その場にいた人も、衛星中継で見た人も、大感激でした。
 池田 あの時のお二人ですね。女性の方は、浅井しずゑさん(八十三歳)で、ご主人と離婚された後、紡績工場で働きながら、四人のお子さんを育てられた。末の娘さんが難病で、ともに死のうと思い詰めたこともあったといいます。
 それが創価学会に入会して以来、蘇生の道を力強く歩んでとられたのです。現在も、お元気だとお聞きしていますが……。
 佐々木 はい。先生との出会いと信仰体験を語り継ぐために、今日は、ここの座談会、明日はあそこの座談会と、お元気にご活躍です。
 松岡 男性の方は、志村民治さん(七十四歳)で、同じくご健在です。副支部長として同志の模範の実践をされています。
 池田 うれしいですね。老いも若きも、皆さん使命があるのです。
 学会のなかで、世のため、人のために戦いぬけば、完璧な人生の総仕上げができる。そうやって今世で戦いきれば、三世永遠の幸福を決定づけることができるのです。そのための大切な一日です。
 「一日の命は三千界の財にもすぎて候なり」とは、そのことです。一日生きぬくことは、全字宙の宝を集めたよりも尊いことなのです。
 その貴重な一日一日を支えるのが介護であり、使命は重大です。
3  絶望から希望へ
 佐々木 東京・墨田区でホlムヘルパlをされて十年目というTさんを取材しました。明るくお年寄りに接しておられる方です。
 池田 人に心をとめて尽くす営為は、菩薩の行に通じます。しかし、在宅介護を支える家族のストレスは相当なものですね。
 その点、施設介護と在宅介護の中間として、施設に送迎してもらい、お年寄り仲間と歌やゲームを楽しんだり、日常生活の訓練をする「デイケア」や、一時的にお年寄りを預かってくれる「ショート・ステイ」などがあります。それらを上手に利用するなどして、ストレスから解放される時間をもつことも大切です。
 佐々木 Tさんが、訪問介護する一人に大塚秀子さん(六十九歳)がいます。墨田区の方です。約二十五年前に緑内障を悪化させ、以来、まったく視力を失われました。
 松岡 独り暮らしの大塚さんのお宅に訪問介護にうかがうと、玄関には、きまって季節の生け花が飾られているそうです。「きょうも、きれいですね」というのが、あいさつ代わりです。
 目が見えなくても、花の色具合を聞いて、茎の長さをたしかめながら、生け花の出来上がりを頭の中でイメージして、挿していきます。折り紙や編み物にも挑戦されています。
 池田 心の眼が見えているのですね。
 挑戦の心があるから、心が負けてないから、目がお悪いことも、年をとっておられることも、障害になっていないわけですね。
 佐々木 家の中もきちんと掃除されていて、みだしなみにも、お化粧にも、心を配っていらっしゃる。
 ヘルパーのTさんとの外出を楽しみに待ってくださり、流行のリュックサックを背負って、笑い声をあげながら、実の母子のように出かけるそうです。
 松岡 ある夏の日、大塚さんから「一緒に私の水着を選んでほしいの」と言われ、Tさんは大丈夫かなと心配しましたが、次の訪問のときには、「神奈川まで海水浴にいったのよ。立ち泳ぎしたの。楽しかったわ」と、さらりと。
 ほかにも大塚さんは、ソシアルダンス、大正琴、コンサート、旅行と、学会活動のかたわら、幅広く取り組んでおられます。
 池田 頼もしいですね。
 「(法華経の題目を持つ者は)遊行して畏れ無きこと師子王の如くなるべし」と、日蓮大聖人は仰せです。
 師子王とは、信仰者の異名です。自身の宿業を悠々と見下ろし、むしろ、逆境をも楽しみとしながら、すべてを打開していけるというのです。
 人生の幾山河に苦難はつきものです。しかし、信心さえ負けなければ、なにも恐れることはない。絶対に勝っていけるのです。
 佐々木 ヘルパーのTさんが言うには、障害をもったりすると、どうしても、「なぜ、私だけが不幸なのか」「あなたには、私の気持ちはわからない」といった、うらみの気持ちがどこかに出てくるお年寄りが少なくないそうなのです。
 しかし、大塚さんの場合、前向きで、清らかな心が陰ることはなかった。明るく生きてこられた。
 Tさんは、大塚さんの「絶望から希望へと歩まれた十年間」をじっと見てとられて、平成十年(一九九八年)二月、晴れて創価学会に入会されました。

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