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日蓮大聖人・池田大作

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長寿の秘訣  

「第三の人生を語る」(池田大作全集第61巻)

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1  「老い」はかけがえのない財産
 池田 仏典に、釈尊が、「生老病死」のうち「老」と「病」と「死」について考えて、「三つのおごり」を乗り越えたという話があります。
 人間には、「老者に対する嫌悪」があるが、これは「若者のおごり」である。
 「病者に対する嫌悪」があるが、これは「健者のおごり」である。
 「死者に対する嫌悪」があるが、これは「生者のおごり」である。
 釈尊は、晩年になって青春時代を回想して、この「三つのおごり」を消滅させたと述べている。これが、釈尊の出家の原因となり、有名な「四門遊観」のエピソードにつながっていきます。
 佐々木 釈尊が、王子として何不自由ない恵まれた立場にあったときに、この「三つのおごり」をなくしたということはすごいことですね。
 池田 釈尊が、青春の真っ盛りに、健康そのもののときに、また生きる喜びにあふれでいる真っただ中で、老いていく人、病気に苦しむ人、死におびえる人に、思いをめぐらしていくということは、さすがです。
 釈尊が示した、この「三つのおごり」は、決して過去の昔話ではありません。
 今、高齢社会の問題が語られ、社会の変化や制度の不備などがあげられています。それはそれで大切なことですが、より本質的には、今の人々に巣食う「心のおごり」に光をあて、人間自体を変えていかなければいけないのではないか、と思います。
 松岡 本当にそうですね。
 池田 人間は、ともすると自分とは違うものを軽蔑したり、嫌悪したりする場合がある。アメリカのハーバード大学の記念講演(一九九三年九月、「二十一世紀文明と大乗仏教」、本全集2巻収録)で語った、″差異へのこだわり″です。釈尊は、それを、人の心に刺さった、見がたき「一本の矢」であると表現しました。
 この″差異へのこだわり″が、自分の生命の領域を自分で小さくし、ふさいでしまうことになる。今の自分でしか、生きていけないということになる。
 いずれだれもが老い、病み、死んでいくことを考えるならば、現代人が、そうやって老いや病や死から目をそむけているかぎり、自分の未来を自分で閉ざして、否定していることになる。
 松岡 老いることが、なにかマイナスのイメージに結びつけられがちですが、むしろ、老いることのすばらしさ、美しさ、力といったものが、いっぱいあるのではないでしょうか。
 池田 「老い」に対する価値観を変えることですね。高齢者がもっている大きな人生経験は、本人にとっても、まわりにとっても、世の中にとっても、かけがえのない財産です。
 御書には、中国古代の周の文王は、年配者を大切にし、その知恵を尊敬した人であり、″周王朝八百年の栄えの根本は、この王の治世にある″と述べられています。
 すぐ実践できるところから、優しい言葉をかけることでもいいと思います。私たちは、お年寄りを大切にする心を広げていきたいですね。
 佐々木 まず自分から行動することですね。
 池田 年配者の円熟味から発せられる言葉には、ハッとさせられるような知恵と重みを感じることがあるものです。美しく光っている人を、私は数多く知っています。
 広布の活動の、なかで、崩れぬ自己を築いてきた人は、輝いています。胸をはって、堂々と生きていくことです。
2  九十八歳から学院で五年間も講義
 松岡 そのお手本のような方に、会ってきました。先生が、エッセー集『母の詩』で紹介してくださっている、高橋ヨシさんという百三歳のおばあちゃんです。神奈川県藤沢市のお宅を訪ねた日が、たまたま百三歳の誕生日でした。お孫さんや近所の方から贈られた花にかこまれて元気いっぱいでした。
 池田 よく知っています。九十八歳のときに、スタイリスト学院の特別講師に迎えられた方ですね。百二歳までの五年間、若い学生を相手に講義をし、好評だった。テレビやラジオをはじめ、講演会にも出演し、すばらしいスピーチや応答をされたとうかがい、喜んでいます。
 佐々木 テレビの番組は、私も見た覚えがあります。司会者の女性が、一つ一つの言葉に心を打たれたと感激の涙を流していました。勇気、根気、努力、この三つが大事だと強調し、平和な二十一世紀をめざして頑張っていくと、はっきりした言葉で話されていました。
 池田 うれしいことだね。草創期から頑張ってこられた方々が、健康で長生きをされ、幸せな「第三の人生」を送られていることが、私のなによりの喜びです。
 松岡 高橋さんは、朝五時に起きて、まず勤行。そして、題目を一時間唱えるのが日課です。
 「池田先生ご夫妻が、健康をたもちながら、長生きをされ、皆さんへの激励を続けてほしい。私も先生と一緒に、二十一世紀まで頑張ります」
 「世のため人のために尽くしたい。人間に生まれたからには、人のためにならなければならない」と、祈っているとのことでした。
3  くよくよせず前向きに
 池田 毎月の座談会にも出るのが楽しみで、毎回、和歌を一首書いて持っていかれるようですね。
 松岡 五月は「五・三 迎えて嬉し百三歳 健康保ちて 師弟の道を」だったと聞きました。庭の草花の手入れをするときも、花に言葉をかけて、それが歌のようになっていく。
 「物言わぬ 花に言葉を 交わしつつ 明日咲く花の つぼみ数える」
 「聖教新聞」も、虫眼鏡を出して読んでおられる。
 池田 偉いですね。こういうお母さん方が学会を支え、世の中を支えてこられたのです。
 佐々木 創価学会に入会して一週間後に、横浜・三ツ沢のグラウンドで、戸田先生の原水爆禁止宣言を聞かれた。まさしく二十世紀を生きぬいてこられたわけで、日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦の時の歌を一つ一つ歌いながら、「戦争はやっぱり、やっちゃいけない。働き盛りの、立派な、それこそ生命をもっている人が生命を捨てて、戦争なんか、いちばんいけないことだ」と、大きな、はっきりした声で言っておられました。
 池田 還暦を超えてから、学会に入り、信仰を始められたのですね。
 松岡 ええ。六十三歳のときです。「体が弱かった。とくに心臓が悪く、発作を起こし、よく倒れた。健康になりたかったからです。今あるのが不思議です」と喜んでおられました。
 池田 更賜寿命ですね「いついつまでもご長寿で、私も心から祈ります」と、一本の杖を差し上げたことがあります。
 佐々木 その杖を、宝物のように大切にされていました。
 「毎朝、その杖を握にぎあって、先生と握手して、一日の出発をするんですよ」と言われていました。
 池田 長寿の秘訣は、高橋さんの、次のような前向きの生き方にもあるんでしょうね。
 「なにもくよくよすることはない。くよくよしてはダメだ。あのときはああだったとか、後ろを振り向いて考えたってダメ」
 「前向きに、前向きに進むっていうことで、人間、長生きができる。これから先、生きていくのに、前
 向きの姿勢でなきゃ。絶対にグチは言わない」
 大切な心構えですね。ところで長寿の家系なのですか。
 佐々木 高橋さんの父親は三十三歳で、母親は五十四歳で死去されたと言っておられましたから、必ずしも長寿の家系とはいえません。
 やはり、心のもち方やライフ・スタイル、すなわち生活の仕方に、寿命はかなり関係してくるようです。
 池田 トルコの著名な医学者であるドーラマジュ博士と対談したことがありますが、長寿の秘訣について、博士が「大切なのは″心の平和″です」と言われていた。
 松岡 その時、博士が「池田先生は”心の平和”ということからみれば、千年以上は長生きされると思います」と言われていたのが印象に残っています。
 池田 このウイット(機知)が、博士の長寿の秘訣でしょうね。(笑い)

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