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創価学園1 中学校・高等学校[昭和58年度]

教育指針 創価学園(1)(池田大作全集第56巻)

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1  創価中学・高等学校 第十六回入学式(メッセージ)〈昭和58年4月8日〉
 志は高く、理想は雄大に
 入学おめでとうございます。中学・高校に進学された皆さんの晴れの前途に、心からの祝福を申し上げます。
 皆さんの年代は、ちょうど子どもから大人への過渡期であるといわれます。いわば、本格的な人生のスタートを開始する、大切な時期であります。その意味で、本日は「志」について一言申し上げておきたいと思います。
 自分の人生の目的は何か。この貴重な一生を何に使うか。その確固とした志を若き日に定めることこそ、長き人生にあっては何よりも重要なことである、と私には思われてなりません。
 いうなれば、志とは、人生を歩みゆく原動力であります。それはまた、苦難を克服しゆく胸中のエンジンであります。その志を貫く意志と努力のあるところに、本当に自分らしい、かけがえのない人生は築かれていくのであります。
 そこで皆さんにお願いしたいのは、第一に「志は高くもて」「めざす理想は雄大に」ということであります。
 作家に、芥川龍之介という人がおります。彼は後輩への手紙の中で、自分は小さな星のような作家たちには目もくれず、ただゲーテやトルストイのような太陽のごとき巨匠を仰いで進んできた、と語っております。
 彼はいう。「直に一指頭上を指して先天日を知るべし」(『芥川龍之介全集 第七巻』筑摩書房)と。ここにいう「天日」、すなわち太陽とは、ゲーテ、トルストイらのことであります。小さな星のような作家たちを無視せよ、というのでは決してありませんが、同じめざすならば、強く輝く最高の目標に志を定めていただきたいと思うのです。
 そしてまた芥川は、このようにもいう。「猪突の勇を鼓して彼の奥所に味到せよ」(同前)と。勇気を奮い起こして、彼らの奥深くに体当たりでぶつかり、十二分に味わいつくせ、との意味であります。
 どうか諸君は、志を高くもち、崇高なる理想をめざして、勇敢に突き進んでいく一人一人であっていただきたい。
 しかしながら、志が高ければ高いほど、その実現への道は険しい。したがって、皆さんにお願いしたい第二の点は「心の決めどころを、しっかりもとう」ということであります。
 明治から昭和にかけて活躍し、民衆に大変親しまれた、高橋是清という政治家がいました。彼は若いころ、アメリカヘ渡って、奴隷に売りとばされてしまったり、ペルーの銀山で一旗揚げようとして失敗し、一文無しになってしまったり、それは波乱に富んだ生涯を送った人でした。
 その彼が、三つか四つのころ、ある出来事があって、周りの人から「運のいい子だ、幸福な子だ」(高橋是清『高橋是清自伝(上)』上塚司編、中央公論社)といわれ、大変、評判になった。それ以来、彼は、「自分は幸福者だ、運のいい者だということを深く思い込んでおった。それでどんな失敗をしても、窮地に陥っても、自分にはいつかよい運が転換してくるものだと、一心になって努力した」(同前)。つまり、何をもってしても、くじけることのない、よい意味の楽天家の性格を育むにいたった、というのです。
 「何があっても、自分は幸福者だ」、これが高橋是清の心の決めどころであったわけであります。私も皆さんに訴えたい。皆さんの行く手には、さまざまな困難が待ちうけており、挫折感や劣等感に悩まされることも、多々あるかもしれない。しかし、皆さんが、若い時代にこうした学園生活を送れること自体、最高の幸せでなくして、何でありましょうか。その一点が、皆さんの心の決めどころであっていただきたい。心の決めどころさえしっかりしていれば、たとえ困難にぶつかっても、それらを眼下に見おろして、笑みと余裕をもって、悠々と乗り越えていけることは、まちがいありません。
 最後に、これからの学園生活のなかで、勉学に、スポーツに、思う存分、青春の尊き汗を流してください。学園の友情厚き庭のなかで、生涯の友情の絆を育んでくださいと申し上げ、私のあいさつとさせていただきます。
2  関西創価中学・高等学校 第十一回入学式(メッセージ)〈昭和58年4月11日〉
 すべてによい習慣を
 開校十周年のこの佳き日、晴れて関西創価中学・高等学校に入学された皆さん、本当におめでとうございます。
 本日は、新たなスタート台に立つ皆さんの晴れ姿を思い描きつつ、これからの学校生活で、深く心に刻んでいっていただきたいことを、一点、申し上げておきます。それは「すべてに、よい習慣を」ということであります。
 読書、勉強、早寝、早起き、礼儀やマナー、友情を育む等、よい習慣というものは、皆さんの人生のすべてに、豊かな彩りをそえていくでありましょう。そして、そうした習慣は、一生を左右する大事な人格形成になるがゆえに、今こそ、しっかりと身につけておかなければならないのであります。
 人間の身体や心は、悪い習慣にはすぐ染まります。逆に、よい習慣というものは、努力なくして決して身につきません。きのうよりはきょう、きょうよりはあすと、向上をめざす一日一日の粘り強い努力の蓄積が必要です。どうか、「努力が習慣となり、習慣が性格をつくる」を合言葉に、創価の道をまっすぐに進み、悔いなき学園生活を送ってください。
 若鮎のごとく、はつらつとした皆さんとお会いする日を楽しみに、皆さんの前途に栄光あれ、と祈りつつ、私のメッセージとさせていただきます。
3  創価中学・高等学校 第十六回栄光祭
 人間勝利の山を登りゆけ
 きょうは、雨で開催はむりかと心配しておりましたけれども、とうとう外で見事にやりきることができて、学園の将来の歴史に残る栄光祭となりました。おめでとうございます。
 日本といわず、全世界で、諸君のように中学生らしい、また高校生らしい、本当の意味での未来に向かう青年の姿、少年としての姿は、どこの学舎にもありません。いろいろな指導者と会って語りましたが、皆そのことで嘆いております。大変な時代に入っているのです。
 その意味で、きょうの諸君の清らかで真摯な、涙の光る情熱の姿、二十一世紀へ向かって生きゆかんとする熱情の美しさ、これは私の脳裏に焼きついて一畳藩〉消えないでありましょう。
 ともかく諸君がこれからの学園生活において、あるときは勉強がうまくいかなかったり、スランプになって苦しんだり、ある場合には経済的に苦しい思いをしたり、また、行きたい大学にも行けなくなったり、いろいろなことがあると思います。しかし、どんなことがあろうと、大切なのは自分を磨いていくための勉強です。あくまで創立の精神のもとに集まった、世界でただ一つの、世界平和のリーダーを養成する、英知と実力主義の学校です。目的は建学の精神です。そこに一切のものが含まれているのです。
 本当は諸君に何でもしてあげたいけれども、甘やかしてはいけない。わざと私は厳しくつきはなした格好で見ております。獅子の子は、千尋の谷に落とされて、はいあがってくる。それが本当の獅子の子です。男の中の男であるし、リーダーの最大の資質は、そこで磨かれるのです。どうか、これからも、いろいろないやなこと、つらいこと、苦しいこと、悲しいことがあるだろうけれども、きょう、諸君一人一人が訴えた叫び、これを天に訴えながら、また、自分の生命の中の天に響かせながら、人間勝利の山に自分らしく登りきっていただきたい。これが私の願いです。どうか、先生方も、今後ともよろしくお願い申し上げます。
 今年の卒業生に望みたいことは、全員がどんなに苦しくとも、夜学でも何でもいいから大学ヘ行っていただきたいということ、それからもう一つは、この学園生活でどんなにいやなことがあっても、そフンプがあっても、耐えに耐えて、よき同志と一緒に、立派に卒業していただきたいということです。落第なんかしてはいけない。また、お父さん、お母さん、とくにお母さんには心配をかけないように、たまには手紙を書くとか、いろいろな工夫をして安心させてあげてください。お母さんと喧嘩するような男は、偉くはなれない、と私は申し上げたい。
 限りない諸君の健康と成長を、またご一家の繁栄をお祈りし、私の話を終わります。ありがとうございました。

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