Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

創価学園1 中学校・高等学校[昭和52年度]

教育指針 創価学園(1)(池田大作全集第56巻)

前後
1  創価中学・高等学校 第十回入学式〈昭和52年4月8日〉
 苦楽分けあう生涯の盟友たれ
 桜花爛漫の本日、めでたく創価学園の間をくぐられた若き俊英の皆さんに、心よりお祝いを申し上げ、また、きょうからいっそう英知を磨きゆかれるよう、皆さんの努力を期待するものであります。とともに、今日まで見事に、幾多の人生の辛酸をなめながらも、皆さん方を養育してくださったご父母の方々に、心より御礼を申し上げます。
 また、学園の先生方には、今日までのご父母の辛労に報いるためにも、その期待にこたえて、次の時代を担いゆく使命をもった若き英知を、さらに見事に磨きあげていただきたいことを、私は心からお願い申し上げるものであります。
 さて、きょうの佳き日にあたりまして、私は、懇談的にいくつかのことを、お話ししたいと思います。
2  強靭なる精神の鍛錬
 まず第一には「強靭なる精神」を鍛えていただきたいということであります。平易な言葉でいえば「強い根性」をもってほしいということです。
 今日の時代というものは、物質面からみればあらゆる面で恵まれている。ある意味では恵まれすぎている、といっても過言ではないでしょう。したがって、一つのことを成し遂げ、一つのものを獲得するために、みずからを励まし、鍛え、努力するということが、少なくなっているように思えるのであります。
 最近のニュース報道を見ていますと、目標を達成できずに挫折して、青春のコースをみずからゆがめたり、場合によってはみずからの命を絶つという青少年の話が、しばしば報じられております。私はそのような話を聞くと、まことに残念でならない。そこまで育てられた両親、家族の心中を思うと、胸の痛む思いをどうすることもできないのであります。
 しかしながら、そうした青少年の挫折の原因をたずねてみると、なぜこれぐらいのことで、と思われることがしばしばなのであります。成績が下がった、入学試験に落ちた、就職に失敗した等々、長い人生から考えるならば、こうしたことはいくらでもやり直しができ、挽回することができることであります。いや、むしろ長い目でみれば、そういうことは成長の機会となり、人生の大樹に育つ年輪を刻みうるチャンスとさえいえる場合が多いのであります。
 私は、こうした話を聞くにつけ、学園の諸君は、何ものにも負けない強靭な精神を鍛えられんことを、切願するのであります。これらの青少年の話が出ると決まって、今日の社会がかかえている問題にその原因をもっていく人があります。もちろん社会、時代が悪いという側面もありますが、しかし、社会が悪いからといつて、挫折を当然としてはならないと思う。社会悪をいくら指摘しても、それによって挫折が避けられるわけではありませんし、人生の真の充実が得られるわけでもありません。
 ともかく「惰弱は青春の最大の敵」であります。皆さん方は、勇んで社会悪に挑戦していける自己の形成に、渾身の努力を続けて、この学園生活のうちにつくりあげていっていただきたいのであります。
3  豊かな感情の養成
 第二に「豊かな感情」を養っていただきたいということであります。現代は、あまりにも殺伐としております。多くの識者が指摘している現代の「精神の砂漠化」は、今後ますます進んでいくにちがいない。
 諸君は、こうした時代の流れに決して巻き込まれてはならない。それは不幸なことに、人生に灰色の精神をもたらしてしまうからであります。むしろこういう時代、社会に対して、豊かな潤いを与えていくことが、諸君の将来の使命の一つであります。ゆえに、あらゆるものを吸収できる若々しい頭脳をもった青春時代に、豊沃な精神の大地を耕してもらいたいのであります。
 では、精神の大地を耕して、豊かな感情を培うにはどうすればいいか。人それぞれ、いろいろな方法があると思いますが、私はその重要な一つとして、読書ということを提案しておきたい。多くの書を読み、そこから思索を深めていただきたいのです。
 読書と思索は、青年にとって不可欠の精神の養分であり、偉大な自己を確立するための重要な柱であります。青年時代に読書しない人は、壮年になってからの敗北に通ずるといっても過言ではない。私も青年時代の繁多のなかで、何とか一日に一冊ずつ読もうと決意して、懸命に読んだことも、今では懐かしい青春の最大の思い出となっております。
 しかし、なかには時間がないという人がいるかもしれない。だが、時間というものはつくれば出てくるものです。私も青年時代は大変に多忙であった。しかしそのなかで、一冊また一冊と読み続けてきました。今も読み続けていくよう努力しております。
 皆さんが、仮に一週間に一冊の本を読むとします。そうすれば、一年間に約五十冊読むことができます。こういう習慣の積み重ねを青春時代にしておけば、生涯の偉大な精神の財宝になっていくにちがいありません。
 伝記は、偉大な先人の見事な生き方を教えてくれる。歴史の書は、人間社会の未来のあるべき姿について、深い示唆を与えてくれると思う。また古今の文学は、青春について、人生について、そしてまた人間の心について、豊かな思索の大海を、諸君の前に開いてくれるにちがいありません。こうした書物を土壌として、才能の芽は豊かに成長していくものであります。
 どのような大木も、硬いやせた大地では空高く伸びていくことはできません。しかし、十分に養分をはらんだ大地であるならば、盤石の根を張り、たくましく、一局々とそびえていくことはまちがいないのであります。どうか、諸君のなかに秘められた才能の芽が、将来、大樹となって、人々に見事な果実と快い安息の場を与えられるよう、この学園時代に、豊かな土壌をつくっていただきたいことを切望するものであります。

1
1