Nichiren・Ikeda
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昭和二十四年(十月)
「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)
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1 十月二十四日(月) 晴
昨日、第四回創価学会総会を終え、本日も、続いて、秋晴れの、爽やかな日であった。
午前中、O部長より、会社の将来の説明を聞く。
なお『冒険少年』の題名を、『少年日本』と改名して三か月。事業、大資本に押され、多難の模様しかし、それは、私の分野ではない。私は、私に与えられた、仕事をすることだ。
『少年日本』―――なんと、豊かな、力強い、言葉だろう。未来に伸びゆく少年。春の如く快活な動作。秋空の如く、澄んだ瞳。曠野の如く限りない希望。純情な少年は尊い。未来の、次代の、社会の建設者なれば、日本の宝と思わねばならぬ。
今年は、これらの少年を、友に、相手にして精進できたわけだ。尊き仕事と、確信したい。
少年よ、日本の少年よ。世界の少年達よ。願わくは、常に、一人も洩れなく明朗であれ、勇敢であれ、天使の如くあれ。
正午より、M作家、I画家の宅を訪う。少年達の、夢を画いてもらうために。新年号の。
I画家宅は、新天地ともいえる、南多摩であった。快活な先生に、理解を戴く。静かな大地。黄昏の静寂の草地をわけ、六時二十分、小田急の人となる。彼は、キリスト信者という。気魄はあれど、真に、自己を知っている人ではない。私には、何も、教わるものがなかった。
大空には、三日月が皓々と冴えていた。
七時三十分、社に帰る。先輩と、種々打ち合わせ。十時、帰宅。
2 十月二十五日(火) 雨
朝、曇天。やがて、秋雨と化す。うっとうしい一日であった。
『少年日本』休刊が発表される。全く意気消沈。午前中、編集室、事務室で、客と応対するばかり。
自転する地球が、急停止したら、その反動は、大である。飛びゆく飛行機が、瞬間にエンジンが止まったら、大変だ。
昨日まで、全生命を賭した仕事が、急停止したのだ。驚くのは、当然だ。
ただ、世法の人々の曲解を、私は恐れる。戸田先生の御人格と大使命を、観ずればこそ。
先生の指示のもと、私は、再び、次の建設に、何でも、お尽くししてゆけばよい。そう思えば、社員の、あわてふためいている姿は、滑稽にみえる。信心している者も、ない者も。
戸田先生の人格は、嵐や、波浪で、押し流されるようなものでない。最終の事業によって、その偉大な、人格の勝利は、決定されるものだ。浪を越え、嵐を越え、最後に、その力と、高貴なる感化は、満ち溢れ、万人の尊敬と、渇仰の金字塔となることだろう。
大衆は、愚人が多いともいえる。しかし、賢である。また、歴史は、偉大なる人物を、置き忘れることもある。
されど、私は、真の人格者たる先生は、その光輝ある力は、消えうせることは、決してないと信ずる。
A画家を、秋雨の中、訪う。不幸な人。
大聖人の哲学を話す。早く、幸福になることを念じつつ。
夕刻、銀座文庫に、I氏のぺン画『マゼラン太平洋発見』を、受け取る。
帰り、新橋にて、一人、映画観賞。座談会に出席しなかったことを、痛切に苦しむ。
さあ、明日だ。希望の明日だ。
3 十月二十六日(水) 快晴
爽やかな、秋晴れ。元気で出勤。
『少年日本』の跡後片付けだ。一日も早く整理し、一日も早く、先生の次の旗揚げを、待とう。そして、光輝の秋を送りたい。
午後、H画伯を訪う。最後のお別れかも知れぬ。利害の付き合いは淋しい。大家、少年の心を、知らず。
靴を、修繕する。一金百円也。
身体が疲れてならぬ。夜学は、無理の様子。先生も、非常に、大変な様子。
君の目的は何か。それは、宗教革命だ。
宗教革命とは何か。それは、人類幸福への直道だ。
宗教革命する方法は、何だ。
自らが、この大哲理をば、実践しゆくことだ。
そして自らが、根本を会得、感得しゆくことだ。