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日蓮大聖人・池田大作

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後記 「池田大作全集」刊行委員会

講義「方便品・寿量品」(池田大作全集第35巻)

前後
1  「法華経は、胸中に太陽を昇らせる。胸奥に太陽が輝いていれば、いつ、いかなる環境にあっても、心には快晴の空が広がる。
 五月の青い青い空のように。そして、心が常楽我浄であれば、国土もまた常寂光土と輝く──」(本巻三二ページ)
 一九九五年五月、池田名誉会長は、このように法華経の精髄を語り、「自分自身が仏である」「わが胸中の太陽を仰げ」との法華経のメッセージを、多くの友に伝える講義の連載を開始した。それが、「聖教新聞」に掲載された「法華経方便品・寿量品講義」であり、連載は、同年五月四日付から始まり、翌年の三月十三日付まで、計四十五回にわたった。後に、簡便な冊子として計三冊が発行されたが、本全集では、この内容を一冊にまとめ、講義編の十二巻目とした
 創価学会の草創期にあって、「方便品寿量品講義」といえば、戸田城聖第二代会長が「一級講義」として行った法華経講義(『戸田城聖全集』第5巻収録)が深く当時の会員の脳裏に刻まれていた。名誉会長も、若き日に、この一級講義の前身となる法華経講義の第七期の受講生であり、講義の感動を日記のノートにつづられたことは、本講義の「講義にあたって」の中でも記されている。(本巻一二ページ)
 本講義は、名誉会長が、会員の要望に応えて、この思師戸田第二代会長の講義を踏まえつつ、現代の時代・社会に応じた講義を行ったものであり、その由来については、本講義が掲載される直前に本部幹部会で自ら語っている。参考までに紹介したい。
 「最近、新入会の友の方々などから、『勤行のさいに読んでいる経文の意味を知りたい』という声が数多く寄せられている。そこで私は、『五月三日』を期して、『法華経方便品・寿量品講義』を、新たに『聖教新聞』に掲載してまいりたい」
 「方便品・寿量品の講義といえば、戸田先生が会長就住以来、七年にわたって、『一級講義』として繰り返し行ってくださった懐かしい思い出である。先生は、釈尊・天台の立場からの『文上の読み方』と、日蓮大聖人の御立場からの『文底の読み方』を立て分けられたうえで、末法における正しい法華経の読み方をじつにわかりやすく、明快に教えてくださった。たんなる理論的説明ではなく、一人一人を納得させ、それをバネにして苦悩をはね返させ、広々とした境涯を教えたい、人生の大いなる道を開かせてあげたい──こういう慈愛と智慧の名講義であった。
2  戸田先生の講義ですべて尽くされているが、私は弟子として、先生の講義を原点としながら、現在の時代・社会に、より即した形で、もう一度、わかりやすく語ってまいりたい。
 緑の野辺の小道を、皆さんと一緒に散策しながら語り合うようなつもりで、進めていきたいと願っている」(本全集第85巻収録)
 事実、本講義は、戸田第二代会長の講義も十二分に踏まえながら、二十一世紀の現代世界に向かって、仏法の人間主義を展開する内容となっており、まさしく「師弟合作」の法華経講義であると言える。
 そこにあるのは、師匠の心を世界中の人々に伝えたいとする報恩の誠であり、法華経を現代に蘇らせ、日蓮仏法を世界に宣揚していく哲学の発光である。
 この弟子の一念と行動こそが、法華経そのものの実践にほかならない。本講義の連載二年目を迎えた一九九六年は、ちょうど、戸田第二代会長が法華経講義を開始してより五十年の節目であった。師弟共戦の講義は、「人間主義の仏法」「平和創出の仏法」「民衆勝利の仏法」として法華経の新たな価値を引き出し、世界に広げていく、大きな思想闘争の起点ともなったと言えよう。
3  なお、本全集への収録にあたって、付言しておきたい点がある。創価学会では、二〇〇四年九月に「勤行」および「御祈念文」の制定を行い、各人の一生成仏と、広宣流布を進める勤行という日蓮大聖人の本義に基づき、世界広宣流布の時に適った勤行の在り方として、「方便品・寿量品」の読誦から、「方便品・自我偈」の読誦へと勤行方式を変更した。
 その意味では、本全集で収録する講義の中で、寿量品の「長行」を講義した範囲については、現在、会員の勤行では読誦されない部分となっている。しかし、刊行委員会としては、本講義は、長行部分と自我偈の両方によって「寿量品」講義が成り立っていることを考慮し、さらに、教学の研鑽としては寿量品全体を学ぶ意義も大きいことから、そのまま全体を収録した。ただし、「御観念文」との表現については、現在の勤行要典に合わせて「御祈念文」と変更した。

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