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日蓮大聖人・池田大作

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「法華弘通のはたじるし」――人類救済の…  

講義「御書の世界」(上)(池田大作全集第32巻)

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1  斎藤 この「御書の世界」は逐次、各国語に翻訳されて、世界中の同志をはじめ、各界の方々が楽しみに読んで下さっています。
 森中 21世紀に入って3年、全人類的課題が噴出している観を深くします。日本の世相もそうですが、世界はますます暗くなっているという声が増えています。そうした情勢の中で、ますます切実に人間主義の哲学が求められているのではないかと実感します。
 池田 今、求められているのは「平和の哲学」です。「対話の哲学」であり、「希望の哲学」です。その哲学を提示し、実践することこそ、日蓮仏法の真髄があります。そして、その大仏法を弘めゆくことが、わが創価学会の使命である。
 私どもの広宣流布の行動は、その使命感も深く、世界を覆い尽くそうとする不信と暴力の闇に希望の松明をかざすことにほかならない。「万年の先の未来までも、無間地獄の道を塞げ」との大聖人の仰せを絶対に虚妄にしてはならないのです。
 斎藤 人間の生命には、幸福を求め、平和を求め、調和を求める、ある種の底力があります。それが仏性です。その仏性の力があるゆえに、闇が深ければ深いほど、人々は、闇を照らす松明を真剣に求めます。
 池田 日蓮仏法こそ、万人の仏性を呼び起こすことができる大法です。
 そのために大聖人は御本尊を顕してくださったのです。
 まさに、21世紀は世界的な動執生疑から始まりまったと言える。政治、経済をはじめ、どの分野も激変に次ぐ激変の連続です。多くの人が不安や閉塞感を抱いている。
 もちろん、その一つ一つの問題に、英知を結集し、的確に冷静に対応していくことは重要です。しかし、根本的な解決のためには「万人の仏性を呼び起こす戦い」が大切なのです。仏性こそ希望の源泉であり、創造の活力を生む生命力そのものだからです。
 斎藤 先生がよく語られるトインビー博士の言葉通りですね。
 ”時代を動かすのは、「新聞の見出しの好個の材料となる事柄」よりも、「水底のゆるやかな動き」である”(『試練に立つ文明』深瀬基寛訳、『トインビー著作集』5所収、社会思想社、引用・参照)――「水底のゆるやかな動き」こそが歴史を創るのだと思います。
 池田 人類の宿命転換という根本の変革です。「ゆるやかな動き」にならざるをえない。しかし、この着実な「動き」こそが現実に歴史を変えていくのです。ゆえに、具体的に、そして着実に「動き」を起こすことが大事です。
 その意味でも、いよいよ力強く、日蓮仏法の人間主義の哲学を語っていくことです。
 森中 本節でも、その人間主義の仏法の教義の精髄である、御本尊について語っていただきたいと思います。
2  広宣流布のための御本尊
 池田 大聖人は、御本尊を「法華弘通のはた(旌)じるし」として認められたと仰せられている。「広宣流布のための御本尊」ということです。「日女御前御返事(御本尊相貌抄)」には、「SB531E」と仰せです。
 〈通解〉――ここに、日蓮はいかなる不思議であろうか、竜樹・天親等、天台・妙楽等すらも顕すことのなかった大曼荼羅を、末法に入って200年あまりの頃に、初めて法華経弘通の旗印として顕したのである。
 日蓮大聖人が末法の民衆の救済のために命を賭して顕された「広宣流布のための御本尊」を、大聖人の御精神のままに死身弘法の実践で弘通してきたのが、創価学会です。
 斎藤 「法体の広宣流布」を日蓮大聖人が確立され、「化儀の広宣流布」を創価学会が現実のものとしている、ということですね。
 池田 その二つの戦いこそ地涌の使命です。御本尊の意義を更に深く理解するためにも、本章では、「観心本尊抄」の後半を拝しながら、日蓮大聖人が御本尊を御図顕された深義を確認していきたい。
 森中 「観心本尊抄」の前半は「観心」がテーマでしたが、後半は「本尊」です。大聖人が妙法蓮華経の受持によって観心を成就された御生命を、いかにして御本尊として顕すかについて論じられています。
 具体的には、日蓮大聖人が顕される御本尊の相貌が示され、その御本尊が寿量文底の下種の大法であること、そして、末法に地涌の菩薩が出現して御本尊を建立することが示されていきます。
3  虚空会の儀式と南無妙法蓮華経
 斎藤 まず、法華経の「虚空会の儀式」を、御本尊の「相貌」として用いられている点についてお願いします。
 池田 正確に言うと、大聖人が御本尊の相貌として用いられたのは、「寿量品が説かれた時の虚空会の儀式」です。
 寿量品では、仏の永遠性(本果妙)、衆生の永遠性(本因妙)、国土の永遠性(本国土妙)という三つの次元から妙法の永遠性が明かされます。この寿量品の説法があって初めて、永遠の大法である南無妙法蓮華経を指し示すことができるのです。
 森中 三妙合論ですね。「観心本尊抄」では、こう仰せです。
 「SB532E」
 〈通解〉――いま、寿量品を説いた時に現れた本来の娑婆世界は、三災もなく、四劫も超え出た永遠の浄土である。仏はもとより過去に滅することもなく未来に生ずることもない永遠の存在である。仏に導かれる衆生も本質は同じ永遠の存在なのである。これがすなわち己心に具足する三千諸法、三種の世間である。
 池田 この寿量品の三妙合論によって、虚空会の意義が明らかになります。
 すなわち、仏も衆生も国土も永遠の妙法の当体であることを象徴しているのが、虚空会なのです。
 いわば、宇宙全体が永遠の妙法に貫かれている。その永遠の妙法を大聖人は南無妙法蓮華経として顕されたのです。
 斎藤 永遠の法といっても目には見えませんから、法華経では、虚空会という、現実を超え時空を超えた世界をもって表現したわけですね。
 池田 虚空会は、時空を超えて普遍的な価値をもつ「永遠の法」即「永遠の仏」を象徴的に表現したものです。虚空会の種々の描写にも、そのことが拝察できます。
 まず、天と地を結ぶように虚空に屹立する巨大な宝塔です。これは「全宇宙の中心軸」である永遠の妙法を表しています。
 森中 『法華経の智慧』でも紹介されましたが、インド学者の松山俊太郎氏は、『蓮と法華経』(第三文明社刊)で、大地の底から出現してきた多宝如来の宝塔は、インド古来の伝承の〈種子のいっぱいつまった果托(台)をもつ紅蓮(パドマ)の伸びた茎〉が変容したものであると指摘しています。また、それが〈世界軸〉にほかならない、と述べています。
 宇宙的な蓮華、多宝の宝塔とは、宇宙の根源的なエネルギー、力の表象(シンボル)です。その上にいる釈尊とは、天に輝く太陽のイメージと重ね合わせられます。
 斎藤 太陽の光と大地の恵みによって、芽生え、成長し、やがて花を開き実を結ぶ、多くの蓮華の種子――それは仏子の象徴です。一切衆生であり、なかんずく妙法を信受した法華経の行者、地涌の菩薩です。
 池田 虚空会の宝塔は、"世界を支える柱"として宇宙根源の妙法を表すとともに、地(現実)から天(理想)へと渡す"偉大な乗り物"、大乗を象徴している。そして、慈悲と智慧の光で仏子を教え育む太陽を示している。
 森中 主師親の三徳と呼応しますね。

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