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日蓮大聖人・池田大作

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独立自尊の意気高く 福沢諭吉『学問のすめ』『福翁自伝』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
1  「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと云へり」
 近代日本を代表する思想家にして教育者・福沢諭吉の名著『学問のすゝめ』の冒頭の一節。──あまりにも有名な言葉である。
 戦後の一時期、この言葉はNHKのラジオを通じて全国に放送された。日本を占領中だったGHQ(連合国総司令部)が民主化政策の一環として流したものという。私は、そのころ懸命に働きながら勉強していたが、なぜかこの言葉に励まされる思いだった。
 その影響力は絶大だった。人びとは『学問のすゝめ』を読みなおし、すぐ後に続く言葉の意義をあらためて噛みしめた。
2   されば天より人を生ずるには、万人は万人皆同じ位にして、生れながら貴賎上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働を以て天地の間にあるよろづの物をり、以て衣食住の用を達し、自由自在、互に人の妨をなさずして各安楽にこの世を渡らしめ給ふの趣意なり。
3  今の若い人が読むと、いささか古い文体に見えるかもしれない。だが、この書の初編が小冊子として出版された当初、明治維新直後の人びとには新鮮で、いかにも平易な文章として好評だったという。
 福沢諭吉が『学問のす』め』を著したのは明治五年(一八七二年)二月のこと。初編が発表されるや、あまりの評判に著者自身が驚いた。正版二十万、それに当時さかんに行われた偽版を合わせると推定二十二万部が売れたといわれる。
 気をよくした福沢は翌年に第二編を出し、さらに十七編まで書きついだ。明治十三年(一八八〇年)に「合本」を出すまで、およそ三百四十万部が売れたという。たぶん近代日本最初のベストセラーだろう。

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