Nichiren・Ikeda
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あとがき 池田大作
「四季の雁書」井上靖(池田大作全集第17巻)
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1 私どもの往復書簡が、このたび一冊に、まとめられる由、一瞬、戸惑いを感じました。
しかし、井上さんの四季折々に、ちりばめられた香気鮮烈な、お言葉の数々を想い、私にとっても貴重な生涯の記念碑の一つであることに思いをいたし、刊行に踏みきることを喜びとするものです。
歳月は、容赦なく流れゆくものであり、人生も無為であっても、勝手に流れ去るものであります。このような歳月と人生のなかにあって、心から語り得た記録ほど、私を励ますものはありません。私は、深い感謝をもって、いま改めて御礼申し上げます。
井上さんと私とは、立場も年齢も、歩んだ道も異なっていますが、ありがたいことに、人間としての爽やかな共鳴が響きあったことは疑いません。
益々、御健勝にして、弥々の御活躍を切に祈ります。
井上 靖
一年間にわたった池田さんとの手紙の交換はたいへん楽しかった。柔軟な精神と非凡なエネルギーを以て、ご自分の信ずることに邁進しておられる池田さんの情熱の息吹きが、その時々で、春の陽ざしに輝いたり、秋風にのったりして、十二本の手紙となって、池田さんから送り届けられてきた。ある時は爽やかであり、ある時は眩しかった。
そうした池田さんに刺戟されて、私もまたその時々の考えていること、感じていること、思っていることを、そっくりそのまま、十二本の手紙に綴った。昭和五十年から五十一年にかけての私の精神風景は、まず大体あますところなく、ここに写されているわけである。