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日蓮大聖人・池田大作

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5 青少年の非行  

「21世紀への人間と哲学」デルボラフ(池田大作全集第13巻)

前後
1  池田 青少年の非行は、日本でも昔からありましたが、現代のそれは、たんに量が増えているだけでなく、質がちがってきているところに問題があります。つまり、かつての青少年非行は、家庭の貧困や不和などで、生活の基盤が壊れたところから生じたものが、大部分でした。ところが、現代の非行は、物質的には恵まれ、両親もそろっている、平均的な家庭の子弟がおこしている例も少なくありません。
 内容的には、盗みが過半数を占め、それに恐喝、暴行、性的犯罪がつづいています。盗みといっても、経済的に恵まれている家庭の子どもたちにとっては、必要性にせまられての盗みではなく、スリリングだからというのが、その動機です。恐喝、暴行、性的犯罪も同様で、ここから社会学者は「遊び型非行」と名づけています。
 そこで、なぜ、このような非行に走る青少年が増えてきたのかという問題について考えてみますと、やはりもっとも重要だと思われるのは、家族、学校、社会を通じて見られる、規範意識、社会のルールというものに対する意識の低下です。しかも、社会全体に享楽主義的な風潮が強く、また、そうした情報があふれているため、周囲に影響されやすい青少年は、かんたんに社会のルールを無視して、刹那的な快楽の追求に走ってしまうのではないでしょうか。
2  デルボラフ 今日、「青少年の非行」という問題がとくに注目されるなかで、ひんぱんに観察される傾向性として、青少年がふてくされており、落ちつきがなく、態度が悪い、また、ドロップ・アウト(脱落)しているという、おもに否定的側面が浮かびあがっています。
 昔は、女の子についていちばん望まれたことは、うわさのタネにならないことというのがふつうでした。現代では、ちょうど青少年に、このことがあてはまります。そこから、「躾」「教養」「社会化」の“時期”としての、幼年から成人にいたる過渡期には、できるだけ波風たてずに、おとなしく過ぎさることが望まれるようです。そのため「お子さんは元気ですか、どうしていますか」と聞かれれば、「とても元気です」と答えるのが、唯一適切な返事ということになるでしょう。
 したがって、青少年がこうした正常な状態からはみだし、変わった行動をとりはじめると、大人たちは、その背後に禍のにおいをかぎつけたがります。また、マスコミは、その風変わりと見られる兆候を、とくに好んで書きたて、あおります。
 大人はこの点で、破局への奇妙な嗅覚を発達させ、一度でも青少年に批判的なことを耳にすると、不祥事を予想し、さらにより大きな不祥事をも期待してしまいます。あるいは、そこにただちに、全般的な風紀の乱れの兆候をかぎだそうとする傾向があります。
3  池田 たしかに青少年がはっきりした非行におちいっていくプロセスを見ると、最初は非行といえるほどでない行為を、周囲の大人たちが騒ぎ、決めつけてしまうことから、しだいに反抗的になり、非行行為にエスカレートしていくケースが少なくないようです。
 また、商業ジャーナリズムが、ことさらセンセーショナルに、些細な事件をおおげさに取り上げる場合があります。このような心ない大人のやり方は、きびしく戒められなければなりませんが、そうした場合に子どもたちを理解し守ってあげる良識ある大人は、意外と少ないものです。

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