Nichiren・Ikeda
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第十三章 宇宙に生死はあるの…
「宇宙と仏法を語る」(池田大作全集第10巻)
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1 白い宇宙服で遊泳する天男・天女
―― 今回は長期の北米、南米訪問の出発直前のお忙しいなか、貴重なお時間をとっていただきありがとうございます。
池田 いや、こういうときはつらいですね。たまには一回ぐらい、お休みがあってもいいんじゃないでしょうか。(笑い)
―― 読者からの強い要望もあることですので、よろしくお願いいたします。(笑い)
木口 私も勉強になりますので……。(笑い)
―― おかげさまで、この連載が始まってから、今回でちょうど十二回目、まる一年になりました。
池田 木口さん、長い一年でしたね。(笑い)
木口 ともかく好評のようで、なによりです。
―― ところで、完全宇宙遊泳が成功しましたね。素晴らしいですね。
木口 ええ、私も深夜のニュースを興奮して見ました。(笑い)
宇宙空間は無重力ですから、人間が宇宙船の外へ出ても落っこちたりしません。(笑い)
ところが、自分の身体を自由に移動させることは、たいへんにむずかしいのです。ですから、とても危険です。
―― なるほど。
木口 そのために、リュックサックのような窒素ガスのタンクをつけ、噴射させながら動きます。いわば、人間自身が小型ロケットになったようなものです。
―― なるほど。それで、あんなイスに座ったような姿をしているわけですか。(笑い)
池田 よく寺院の壁画などに、衣をまといながら空を自在に飛ぶ天女の絵がありますが、二十世紀末の現代に、白い宇宙服を着た天男、天女が宇宙を遊泳するわけですね(笑い)。ちょっと、スタイルは違いますが。(笑い)
―― それにしても宇宙というものが、ますますわれわれの身近なものになっていますね。
池田 まったく、そのとおりです。
このような時代にあっては、すべての人類が、狭い視野であったり、小さな世界観に閉じこもっていてはなりませんね。
もはや時代は、世界平和、世界不戦へと絶対に志向していかざるをえない。
とくに指導者たちは、この点をよくよく考えてもらいたいものです。
木口 まったく同感です。
2 偉大なる科学者は仏法を志向
―― 先日、ヨーロッパへ出張した折、イギリスの有名な出版社の会長であるロバート・マックスウェル氏を訪問する機会がありました。
木口 そうですか。
―― マックスウェル氏は、名誉会長のことをよく知っておりましてね。こちらが驚いたくらいでした。
池田 そうでしたか。私はまだお会いしたことはないと思いますが。
―― 彼は、先生とトインビー博士の対談を高く評価しておりました。
池田 それは恐縮です。
―― この「『仏法と宇宙』を語る」のことも多少知っているようでした。
木口 それは、うれしいですね。(笑い)
―― 氏は、世界で初めて科学者が平和のために立ち上がった「パグウォッシュ会議」の設立に、自分もかかわったと言っておりました。
木口 なるほど。そうですか。
―― その彼が言うには、「いままで自分は、科学と宗教は、時代とともにどんどん距離がひらいていくものと思っていた。だがこの対談(トインビー対談)は、最新の科学の成果をもって、ここまで宗教が語られている。これは驚くべき事実だ」ということでした。
木口 そうですか。ヨーロッパの人が「科学と宗教」という場合の宗教は、主にキリスト教のことをさすんでしょうね。真実の仏法に触れたのは、たぶん初めてだったのでしょう。
池田 そうかもしれませんね。ともあれ、科学時代に果たす宗教の役割は、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。
―― まったく同感です。
木口 私は一科学者として「ラッセル・アインシュタイン宣言」の、次の言葉は重大だと思っています。
それは「私たちは人類として、人類に向かって訴える。あなた方の人間性を心にとどめ、そして、その他のことを忘れよう、と。もし、それができるならば、道は新しい楽園に向かって開けている。できないなら、あなた方のまえには、全面的な死の危険が横たわっている」と。
―― じつに、重みのある言葉です。
それにしても、かのアインシュタインが、晩年に「私は東洋の英知に期待する」と言ったことは忘れられませんね。
池田 そうでしたね。
やはり偉大なる科学者は、偉大なる人間性を志向していく。その延長として、どうしても宗教、なかんずく東洋の英知たる仏法へと、光をあてざるをえなかったという気がしますね。
木口 まったく、そのとおりだと思います。
3 青年交流こそ世界平和への道
―― ところで、米航空宇宙局(NASA)から、名誉会長にたいへんなプレゼントがあったそうですね。
池田 ええ、昨年(一九八三年)お会いした、スカイラブの船長だったカー博士との友情で、「月の石」を六種類、世界各地から集めた「隕石」の破片を六種類、特別に貸与してくれましてね。
木口 それはすごい。(笑い)
たしか「月の石」は、日本では東京の国立科学博物館に、展示されているだけではないでしょうか。
―― ええ、非常に貴重なものですね。
木口 ぜひ一度見てみたいものです。いま、どこにあるのですか。(笑い)
池田 NASAから厳重に警備するように言われましてね(笑い)。なるべく多くの青少年に見てもらえればと思い、東京・八王子の東京富士美術館にある創価大学の付属博物館に展示してあります。
木口 そうですか。早速見にいこう。(笑い)
池田 またカー博士からは、NASA制作の映画を贈呈してくれましてね。
木口 いや、それは羨ましいかぎりです。(笑い)
池田 先日(一九八四年一月三十日)、東京の創価学園や小学校の生徒たちに見せてあげました。
ともかく青少年の好奇心というか、知識欲は旺盛だ。初めて見る宇宙空間での体験に心おどらせているようでした。
―― それは貴重なことですね。
木口 そういえば池田先生は、大学のみならず高校、中学や小学校にも、海外の重要なお客を招いていますね。
―― そうですね。いま思い出すだけでも、モスクワ大学の故ホフロフ総長、ペルーのサンマルコス大学のゲバラ元総長、ムッソ総長、フランスのルネ・ユイグ氏、中国の学者や友人等々かなりありますね。
池田 いくら平和文化の交流を青少年に訴えても、現実の行動がなければ観念にすぎなくなってしまう。
ですから私は、青少年に対しても大人とまったく同等に、なるべく多くの機会をとらえ、世界への交流、あらゆる国々の人々との交流の道を開いてあげたいと思っております。
―― なるほど、大切なことですね。体験にまさるものはないですからね。
木口 そうしたお客たちも、学生や生徒のまじめで真摯な姿に、たいへん感銘をうけているようですね。
池田 そういえば、ルネ・ユイグ氏が関西の創価学園を訪れたとき、「こんなに生き生きとした若い人たちの姿、目の輝きは見たことがない。中学生、高校生といえば、いちばんむずかしい年代なのに、フランスでは考えられない」と感嘆しておりました。半分はお世辞もあると思いますが。(笑い)
―― 見ている人は見ていますね。こわいですね。
木口 いつも感心するのですが、池田先生は多忙のなかにあっても、若い人たちや学生と対話することを大切にされていますね。
―― そうですね。福沢諭吉といえば、日本人として初めて広く世界を見聞した人ですが、彼はひまさえあれば学生のもとを訪れ、よくこう言っていたそうです。
「諸君が私とともにいるということは、私の見聞とともにいることなのだ」と。
木口 有名な話ですね。
池田先生にピッタリの言葉ですね。
池田 いやいや、私のことはともかくとして(笑い)、そうした教育者が少なくなってきたのは、まことに残念なことだ。
指導者は、あるときは食事をしながら、またあるときは風呂に入りながら、また夜空の星を眺めながら、なるべく多くの青年たちと人生と平和を語り合うことが大切ですね。
―― そのとおりだと思います。
池田 私も何人かの生徒や、学生たちと一緒に風呂に入りながら語り合ったことがあります。
彼らは社会に出てからも、そのことを、なによりも深い思い出としてくれているようです。
まあ私としては、特別なつもりはなかったのですが、若い世代と肌で触れ合うことは、どれほどまでに大切であるか実感しております。
木口 なるほど。そうした教育をうけることができた人は幸せですね。