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日蓮大聖人・池田大作

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第六章 仏法と宇宙と人生と②…  

「宇宙と仏法を語る」(池田大作全集第10巻)

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1  宇宙のロマンと妙法の力
 ―― このたびは「国連平和賞」の受賞(一九八三年八月、池田名誉会長が受賞)、おめでとうございます。
 池田 いや、ありがとうございます。
 木口 私も、心からおめでとうございますと申し上げます。
 池田 いや、どうもどうも。
 ―― 元総理の岸(信介)さんや福田(赳夫)さんは、人口問題で受賞されましたね。
 また、その他の方々は、婦人問題、WHO(世界保健機関)とかで受賞していますが、名誉会長は、平和問題、核軍縮という国連本来の眼目としての受賞といえますね。
 木口 素晴らしいことです。
 池田 「核」は、人類に不幸をもたらす元凶である。これからも私は、仏法者として軍縮ならびに核廃絶に死力を尽くしていく決心です。全人類が、核廃絶を無条件で唱えれば、いかなる権力者もそうせざるをえないからです。
 ―― この連載も六回目を迎えることができ、予想以上の好評に驚いています。
 木口 本当によかったと思います。友人なども関心を示してきたようです。
 池田 それはそれは、ともかく、評判がよくてなによりです。本来の目的が、達成されそうになってきたわけですね。(笑い)
 木口 私も回を重ねるにつれ「仏法と宇宙」の関連性が、しだいに鮮明になってきたような気がします。たいへんな勉強になりました。
 ―― 宇宙というと、いつの時代も、人々は大いなるロマンをえがいてきましたね。
 木口 そうですね。その宇宙のロマンも志ある人々、たとえば哲学者や詩人や芸術家や、また科学者にも、即人生観となり、その自身の生きる糧となっておりますね。
 池田 そうです。宇宙という生命の大空間に、自己が生きていることの証を求めるような、逞しい生命の脈動は、おのずと境涯を高めていくものです。
 木口 いま「脈動」と言われましたが、星にも膨張・収縮を繰り返すという“脈動”があります。
 ―― 人工衛星が地上を離れ、地球の引力圏を脱しようとするとき、強く揺れ動くのも、振動ではなく「脈動」というそうですね。
 池田 なるほど、生命が脈打つような、力強い鼓動なのでしょう。
 先日、来日の折、懇談したカール・セーガン博士の夫人が――この方は、博士とともに研究に従事されていますが――パイオニア号に積んだ宇宙人へのメッセージのレコードに、はるかかなたの天体にある中性子星(パルサー)の電波を録音して入れたそうです。
 夫人は、そのパルサーの音は、私の心臓の鼓動を記録したものと非常に似かよっていました、と話していました。
 ―― そうですか、初めて聞きました。宇宙のロマンといっても、実際は、自己の一念で感じとる以外にないですね。
 池田 そのとおりです。真のロマンは空漠たる情緒からは生まれない。無数の理論を重ねても生まれない。しょせんは、人間のもつ無限の一念の広がりによる以外ないかもしれない。それを、仏法では「法性の智火」と説いています。
 ただ目で見られる日天・月天の姿だけでなく、もっと深遠なものがあるにちがいない。これを中国の天台大師は「不可思議境」とも言っている。日本の伝教大師は「真空冥寂」とも名づけた。
 また「法華経」には「十方世界。通達無礙。如一仏土」とも説いている。
 木口 たしかに、目に見えないけれど、この宇宙には、われわれに働きかけてくる重力や電磁力といった、強力な力がたくさんあります。気圧などは、象五頭分が背中に乗っているほどの重さ(約二十トン)です。
 池田 そのとおりです。まえにも簡単に触れましたが、仏は、この宇宙の一切の本源の法を「妙法」と開示し、御本尊として顕現されたのです。
 木口 そうしますと、天体の運行も「妙法」の力用によるということですか。
 池田 そのとおりです。御書に、「当に知るべし日月天の四天下をめぐり給うは仏法の力なり」とあります。
 木口 なるほど。じつにはっきり断定されているわけですね。いわゆる科学には、どうしても越えがたい限界というものがあります。一段と、仏法研鑚に励まなければと痛感します。
 ―― 先日、フランスでの、仏法の話のなかで、名誉会長は、毎日行う勤行は、この仏法の力を自己の力に冥合するための儀式になるというお話をされましたね。
 池田 そういう意義で話しました。つまり、私どもの仏道修行の基本である「勤行」は「讃教の勤め」ともいい、「有差を置く(差別のあることを差し置く)」(「御義口伝」)とも説かれている。
 これは正法のもとに、すべての人々が、ぜんぶ平等の会座にあるという意義なのです。
 ―― よくわかります。
 池田 ですから宇宙万法、森羅三千の当体ともいうべき本尊に合掌する……。この合掌の二字に、自己の一念が大宇宙の生命と感応道交するという信仰の根本があるのです。
 木口 なるほど。そうですか。
 池田 また「法華経」の結経には、「端坐して実相を思え」と説かれている。ですから具体的には、正座し万法の当体である御本尊に「南無」しゆくことにより、宇宙実相のそのままが、自己の一念に顕現してくるという意味です。
 十指を合わせるのは「十界互具」の表現であり、左右の手を合わせるのは、「境智の二法」をあらわすことになるわけです。
 木口 なるほど。「祈り」の深い意義も、より明快になりました。
2  宇宙との対話をした先人たち
 ―― そこで、ちょっとうかがいたいのですが、宇宙を真剣に究め、宇宙への思索を自分自身の目的や人生の糧として活躍した人に、どんな人がいるでしょうか。
 木口 そうですね。古今東西の歴史を問わず自己の可能性を輝かせた人物は、多かれ少なかれ、宇宙に英知を広げていますね。
 たとえば、孔子も荘子も、アルキメデスもプラトンもそうです。近くは、カントもゲーテも、ダ・ヴィンチもベートーベンもシェークスピアもそうです。
 池田 そうですね。
 また古来から、東洋には、「他山の石、以て玉を攻むべし」(『詩経』)とある。
 これは、自らを知るには、他を知ることによって、おのずから明らかになるという意味でしょう。
 ですから人間は、自分より、もっと大きな実在に、とくに大宇宙などと向かい合うとき、閃光が走るような開明と、自己の秘められた力量の開花を遂げることができるのではないでしょうか。
 ともかく、人類史上に輝かしき英知の光をとどめた偉大な人物は、すべてといっていいくらい、宇宙との対話があったと私は思う。
 ―― 近代医学の父といわれているパスツールも、そのようです。
 先日、ある方が言っておりましたが、酵母の発生をコントロールする実験に苦心惨憺していたとき、ふと天文台を訪ねようと思いたち、その地下室を借りて、ついに成功することができたそうです。
 木口 マクロ(極大)の世界とミクロ(極小)の世界を連動させる象徴的な話ですね。
 ―― 「ボーイズ・ビー・アンビシャス」のクラーク博士は、北海道大学(当時は札幌農学校)で八カ月間、講義しただけですが、明治の日本に大きな足跡を残しました。
 このクラーク博士の青春時代も、天体に情熱を向けた毎日だったようです。
 池田 そうですね。クラーク博士は、とくに天与の物質である隕石の研究に熱中し、それで博士号を取った、と聞いたことがあります。
 木口 そうですか。当時(一八五二年ごろ)としては、隕石の研究は、先駆的なことで、その面でもパイオニアであったと思います。
 池田 北海道の開拓に貢献した“クラーク精神”のバックグラウンドですね。
 北海道といえば、明治維新の箱館戦争で、五稜郭にたてこもった榎本武揚がいます。たしか、彼の隕石にまつわるエピソードを、なにかで読んだ記憶があります。
 ―― ええ、のちに海軍大臣になったとき、漬物の押し石になっていた隕石を買い取り、大小三振りの日本刀を作らせた、という話ではないでしょうか。
 池田 そうそう、流星刀といわれていましたね。武揚は、ロシア大使をしていたころ、皇帝の秘宝であった隕石でこしらえた剣を見た。それ以来、自分で鍛錬法を研究し、ついに念願を果たしたわけです。
 木口 そうすると、榎本武揚という人物は、科学者としての才能ももっていたわけですか。
 池田 そうですね。彼は、まことに傑出した人物であったと思います。
3  隕石は人間に最も身近な「天体」
 ―― ちょっと余談になりますが、数年前、司馬遼太郎さんたちと、厚田村を訪ねました。そのとき、江差港に沈んでいる武揚の軍艦「開陽丸」の引き揚げ現場も見に行きましてね。
 流星刀のことも話題になりましたが、世界で十振りもないそうです。
 木口 そうですか、初めて聞きます。隕石は、地上のわれわれが手に取ることができる最も身近な「天体」ですね。
 池田 「隕石」の話を、小学校の五年生のころ教師から聞いて、たいへん感動したことを覚えています。
 帰宅して、すぐ辞書を引いて、調べたものです。すると隕石は、流れ星が燃え尽きないで、地上に落ちてきたものと出ていたという記憶がありますが、どうでしょうか、木口さん。
 木口 ええ、いちおうはそういわれていますが、その起源はよくわかっておりません。考えられていますのは、流れ星は、惑星の間の空間に散らばっている物質が、地球の引力によって猛スピードで大気に突入するとき、摩擦しながら光を出している現象です。これが大規模に起こりますと、流星雨になります。
 池田 古い絵などを見ると、本当にシャワーのように降りそそいでいますね。
 木口 そのようです。この流星現象も、彗星が太陽の潮汐力(場所による引力の差)などで分裂しますと、その尾のあたりに、小さな粒子が流されます。それが、地球の軌道と遭遇することによって起こることもあります。
 ―― そうしますと、彗星の残骸でもあるわけですか。
 木口 そうも考えられますし、火星軌道と木星軌道の間に多数存在している小天体、それでも小惑星といわれていますが、この破片とも考えられています。
 さらに、ある種の隕石、とくに有名なものはメキシコのアイェンデに落ちたものですが、これは、逆に惑星をつくるもととなった材料であると考えられています。
 池田 隕石は、宇宙空間から地球に落ちてきた物質にちがいないのに、結論の出ないのはなぜですか。
 木口 どのようにして地球や他の惑星ができたのか、十分にわかっていないからです。
 池田 なるほど。このような隕石は、世界中で、現在までに幾つぐらい見つかっているのですか。
 木口 約七千五百個と聞いています。そのうち約五千個は、南極のヤマト山脈で、日本とアメリカなどの観測隊が採集したものです。
 池田 隕石を分析すると、地球の過去や、太陽系誕生の歴史がわかるといわれていますが。
 木口 ええ、そういわれています。
 池田 どうして、そうしたことがわかるのですか。

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