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日蓮大聖人・池田大作

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宇宙における知的生物の存在の可能性  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
1  池田 自然の法則が宇宙全体において普遍性をもっているとすれば、宇宙における物質進化のプロセスは、必然的に、この地球上以外の、宇宙の中のよその世界にも生命を発生させている可能性があります。
 事実、最近の観測からも、こと座のアルファ星ベガのまわりに惑星群と見られる物質の集まりがあり、われわれの太陽系と似た発生過程にある世界であるかもしれないと推測されています。ベガにも、地球型惑星が存在しているとすれば、生命が存在しているかもしれないわけです。
 ドレイク博士は、銀河系における知的生物の存在を推測するうえで、次のような計算式を発表しております。
 N=R・FP・NE・FL・FI・FC・L
 「N」は銀河系内の文明の数。
 「R」は銀河系内に生まれる単位時間当たりの恒星数。
 「FP」はその恒星が、惑星系をもつ割合。
 「NE」はその惑星系の中で、生命を宿すのに適した惑星の数。
 「FL」は惑星系で生命の発生する割合。
 「FI」はそこから知的生物が進化してくる割合。
 「FC」は知的生物が、地球などと星間通信を成しうる技術文明を発展させる割合。
 「L」はそのような文明社会の寿命。
 このなかには、現在、比較的確実に推量できる項目もありますが、将来の進歩に待たなければならない項目も少なくありません。それでも、多くの科学者によって、銀河系における知的文明の推測数が提示されています。もちろん楽観主義者と悲観主義者とでかなり開きはありますが、いずれにしても、この銀河系の中にも、高度文明をもつ知的生物が存在する可能性は大きいように思われますが、総長のご意見はいかがでしょうか。
 仏法では、「三世十方の仏土観」といって、過去、現在、未来の三世にわたって、この広大な宇宙のさまざまな世界に人類のような知的生物が生を営んでおり、仏が出現して法を説いていると述べています。
 知的生物が高度の文明をつくっているとすれば、地球文明との共通点はどのようなものが考えられますか。むろん、自然の法則が、宇宙全体に普遍的であるとすれば、科学的知見は共通であると思われますが、文学や芸術についてはいかがでしょうか。
2  ログノフ この問題はかなり範囲が広く、多面的ですが、それを研究解明することは人類にとってきわめて重要な意義をもっています。ご承知のように、人間は自分を直接取り巻いている環境や知覚の範囲内に決してとどまっていません。人間社会発展の黎明期においてさえ、未知の国や民族についての記録が活用されて大きな成果を上げました。知識欲はつねに社会のすべての発展段階における科学技術の進歩をうながしました。知識欲によって人間は環境やさまざまな共同体の枠内で、総じては、全人類的規模において自分が占める地位を知ることができたのです。地球上ではこの種の発展期はすでに完了しました。現段階において人間の知識が今後大きく拡大する可能性の一つは地球を取り巻く宇宙空間の研究と結びついています。
 ここでとりわけすべての人間の関心の的となっているのは、宇宙に生命体が存在するか否かを探る問題でしょう。現在、この問題は、地球上でのあらゆる生命体を把握するための実験やその生命体を環境に順応させる方法を考慮に入れた研究が進められています。たとえば、物理、化学、地質学において私たちが事実上頼ることができるのは現在の正確な知識だけです。そうだとすれば、地球上の生命の生成発展と関連のない宇宙生命を発見したとしますと、その生命およびその生存形態について本質的に新しい情報を得ることは十分可能でしょう。
 ここでまず申し上げておきたいのは、宇宙における生命の問題は、すぐれて世界観的、哲学的問題だということです。地球外の生命体の発見は、地球上の生命体が唯一のものではないことを明白に立証することになり、それは、また、地球は宇宙の中で例外的な存在だという考えや、「生命の創造」「人間の創造」といったさまざまな神話的伝承を根底からくつがえすことになります。同時に、そうした生命体と接触した時、かなり複雑な倫理上、実際上の問題がもちあがるでしょう。もしその生物がかなり高い発展水準にあり、私たちのなじめないような知識、概念を理解しうる知的水準に達している場合はなおさらです。
3  さらに、宇宙における生命の問題はきわめて重要な生物学的問題です。よく知られていますように、地球上のあらゆる生物の生成と全般的な進化の過程は、主要な構造の特徴づけと生化学的プロセスの統一をもたらしました。このことは、生物と無生物、つまり現存する生物と競争し得ない無生物との間の中間的な形態の保存ないし再現を現生物圏において不可能にしました。地球上の生命がいかに多様であろうと、だいたいにおいて生物学が科学として成り立つために特別重要な役割を果たしたのは、地球上の相対的に隔離された場所での生命の研究でした。しかもそれは一部の残存生物的形態がその場所に保存されたためだけでなく、他の場所にも存在し、長いあいだ独自に発達してきた生物がそこに存在したことにもよりました。
 しかしながら、地球の条件のもとでの隔離に完全なものはありません。顕微鏡的形態のものにとってはなおさらです。このことは地球外生命の研究がいかに重要かを物語っています。そうした研究は分子、細胞の水準での生命プロセスの原理を解明し、生物と無生物との違いを明確に判別し、地上生物の規則的な、もしかすると固有の特徴づけやプロセスを解明し、最終的に生命現象そのものを把握するうえできわめて大きな役割を果たすでしょう。
 そうした研究は生命の化学的基盤の特徴、生命形態の多様性や生物の細胞組成やその発達、再生の条件、形態の特徴、環境との交流、環境資源の利用、生命が環境に与える影響、各種生命間の相互関係の特徴、不活動状態での生存の限度、地球上生命との相互作用の特徴、さらには検疫問題等、そのような生命を利用することができるか、あるいはその生命から生産に必要な発酵系統を抽出することができるかといった問題も含めて、本質的に新しい知識を与えてくれるでしょう。
 それは、たとえば、人間に必要な生物学的機能をもった物質を生産するためや、地球には存在しない遺伝物質を遺伝工学の方法で地球生物に組み入れるため――それら物質の間に根本的な違いがない場合に限る――に利用できるかという問題も含んでいます。
 地球外文明の発見やそれとの接触はさらに大きな意義をもつでしょう。もっともそこではそれなりの、かなり複雑な問題が生まれる可能性もあります。

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