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日蓮大聖人・池田大作

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時間と空間  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
1  池田 古来、時間と空間の問題は、古代のギリシャやインド以来の哲学史上、重要な位置を占めてきました。時間についてみますと、たとえば、アリストテレスは、時間の経過を知ることは万物の運動または変化に依存するが、しかも時間は運動や変化をつらぬくものであるという時間のもつ二面性を指摘しています。哲学史上では、ライプニッツが前者の立場を、ニュートンが後者の立場をとったことはよく知られています。また、カントは、ニュートンの絶対的時間の影響を受けて、時間は人間に先天的にそなわった認識の形式であるととらえています。
 一方、空間については、古代ギリシャのデモクリトスは空虚――非存在――を認めたのに対して、アリストテレスはそれを否定しています。近代に入って、カントは、空間についても時間とともに、先天的な認識の形式であるととらえています。
 自然科学、とくに物理学では、時間と空間の概念を基盤にして、物質・運動等を考えてきました。いわゆるニュートン物理学は、時間と空間の絶対性を基盤に展開されたといえます。
 この絶対的時間と絶対的空間ならびにそれを基盤としたカントの時間・空間の把握の概念を大きく揺るがしたのが、二十世紀初頭の相対性理論です。
 特殊相対性理論によって時間とは無関係に存在する三次元の空間と、空間とは無関係に流れる一次元の時間という考え方は消失し、時間と空間は融合していきます。そして、一次元の時間と三次元の空間とが結びついた四次元「時空」のなかで、すべての自然現象をとらえるべきことが明らかにされたわけです。
2  さらに、一般相対性理論では、物質と時間・空間の関係が取り上げられ、物質の存在のしかたによって時間・空間の性質が規定されることが明らかにされました。こうして、相対性理論によって、時間・空間論についての新しい視野が広がり、旧来の「時空」論に重大なインパクト(衝撃)が与えられたのです。
 この問題を仏法について見ますと、仏法では、無限の時間と空間を説きますが、経論に述べられているところから察知するに、ニュートン力学のように事物と無関係に存在する絶対的時間と絶対的空間ではなく、宇宙万物と一体不二となった「時空」論に立っていることが明らかです。つまり、事物と「時空」は融合し、因果の理法(縁起の法)にのっとって流転していくというとらえ方です。
 ログノフ総長は、時間と空間をどのようにとらえておられますか。
 ログノフ 空間および時間とは何か、それらの本性とはいかなるものかという問いに対する答えは、人間のさまざまな活動領域にとってきわめて重要な意義をもっています。空間と時間についての理解は人間の自然についての知識が高まるにつれて、またそのことと互いに関連し合いながら広まっていきました。こうした発展の過程においてとりわけ大きな役割を果たしたのが物理学だったのです。
 物理学は他の科学分野、なかんずく唯物哲学と共同して時空の本性を深く解明し、その結果として空間と時間の定義が根本から再検討され、物理学知識の向上の本質的に新しい段階において明確化されたのです。
 そうした特徴的な段階の一つは、ニュートン力学、すなわち物体に関する学問としての力学の急速な発達が始まった時期と結びついています。十七世紀末の力学は実験科学でした。その実験科学によって、運動する物体の運動学的・力学的特徴づけと物体に加わる力との間の経験的相関性が明確化されたわけです。
3  ニュートンは多くの実験データを総括したあと一六八七年に三つの有名な力学法則をつくりあげました。同時にニュートンは空間と時間の概念の研究に着手しました。彼は時間と空間を絶対的なものと相対的なものに分けました。ニュートンによると、絶対的なものとは何ものからも独立し、何ものにも無関係に存在するものです。絶対時間もしくは継続時間は等速に進みます。絶対空間は、つねに等質であり、不動です。絶対時間と絶対空間は人間の五感でとらえることができません。
 これに対し相対時間と相対空間は五感でとらえることができ、変化を受けます。相対時間は私たちの日常生活で用いられる時間の長さの尺度で、年月日時等のことです。相対空間は絶対空間のうちの限られた部分で、ある物体に対する人間の位置によって五感にとらえられる尺度です。通常の生活ではそれは不動の空間として受け止められています。

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