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日蓮大聖人・池田大作

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まえがき  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
1  モスクワ国立大学A・A・ログノフ総長と初めてお会いしたのは一九八一年四月、総長が訪日されたさいでした。その翌月、私が訪ソした時、第一回の対談、次いで翌年十月の総長の訪日で第二回目の対談を行いました。それ以来、文書を交換しつつ対話を重ねましたが、ついにこのほど一冊の書として発刊できる運びとなったことは、なによりの喜びです。
 いうまでもなく、ソビエトと日本との間は、地理的にはきわめて近いにもかかわらず、心理的には大きな距離が横たわっています。日露戦争はあったものの帝政ロシア時代の近しさに比し、共産革命後の関係は疎遠で、しかも第二次大戦後は、米ソ二大陣営の対立の図式のなかで、ますますソビエトの人々との間に心の距離を増大しています。たしかに現実の国際政治は、きわめて厳しいのが現状です。私がこのことを指摘するのは、それだからこそ、ただ現実に流されていてはならない、と言いたいがためです。
2  現在の世界を戦争の脅威にさらしているのは、決してアメリカとソビエトという二つの超大国に限りませんが、全人類の滅亡を招きかねない巨大な軍事力をもって、事ごとに相対峙している米ソ二超大国が、人類の脅威の中心になっていることは、何人も否定できないところです。しかし、それはアメリカが悪いのでもなければ、ソビエトが悪いのでもありません。また、この二国が悪くて他の国は善人であるということでもありません。私は、ここ十数年来、機会あるごとに、アメリカ、ソビエト、中国をはじめ、各国の指導者の方々と対話を重ね、世界の不戦・恒久平和樹立への道を探りつづけてまいりました。いずれの国の指導者も民衆も、みんな戦争を恐れ、平和を希求している――これは、まぎれもない事実です。
 平和を求める民衆の願望とは裏腹に、どうして戦争の危機はいっこうに解消しないのか。むしろますます脅威が強まっているのは、なぜなのか。それは、所詮、人々の心に根深い不信感がわだかまっているからに他なりません。この不信のゆえに、平和とわが身の安全を願う心が強ければ強いほど、完璧な防衛システムと、報復能力の強化を追求するという悪循環を引き起こしているのです。
3  そこで、では、その要になっている不信感を取り除くには、どうしたらよいのでしょう。少なくとも、現時点においては、対話と交流を深め広げて、お互いが理解し合うことがなによりも大切であると考えます。そして、さまざまな複雑な状況はあるにせよ、双方が平和を求めていることを理解し合い、お互いが、相手方に与えている脅威を外交手段によって取り除く方向へと、まず努力を払うべきでありましょう。
 それは、ちょうど、互いに相手が自分を殺そうとしているのではないかという警戒心から拳銃をかまえ合っていた男たちが、相手に殺意がないことを確認して、銃を収めるようなものです。
 このように、平和を求めている点において同じであることを確かめ合うのと同時に、もう一つ大切なことは、互いに相違点も理解し合うことです。

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