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日蓮大聖人・池田大作

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日本の読者の皆さまへ  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
1  モスクワ国立大学と創価大学が両大学の間で直接協力を始めてから十二年経ちました。教授、教官、学生の相互研修が盛んに行われ、交換講義、科学者の交換が着実に実施されております。この間に創価大学創立者、創価学会インタナショナル会長の池田大作先生は三回訪ソされましたし、私も日本を訪問する機会に恵まれました。池田先生の数次にわたる訪ソを私たちは、生活と世界共同体繁栄の下地を築くという現代の主要問題で日ソ両国が協力しうるような真の善隣関係の樹立をめざす先生の希求のあらわれであると見なしております。私たちは、この希求が日ソ両国民の願望に応えていることを深く信じております。
 わが祖先の人道的伝統に従い、過去の世代の経験のなかから有益なものをすべて――両国民はお互いに学ぶべきものをもっているのです――活かすことは、万国の国民の平和を願う志向の実現を助成することになるはずです。
 われらが祖先は、まず、共通するものを、そしてまた相異なるものを探し求めつつ、一歩一歩お互いに知り合うために歩みつづけました。科学技術の進歩とともに、つながりはますます活性化し、現在では、諸国家による緊密な交換と協力なしに別個に、孤立して前進することなどまったく考えられないような発展段階に人類は到達したのです。
 常識のある人間にとって、平和を維持し、お互いの経験を学ぶことによって相互に豊かになり、文化交流を通じて相互の達成をはかること以外に人類存続の道はないということは明白です。
2  ロモノーソフ記念モスクワ国立大学名誉博士号をもたれる池田大作先生が私に、現代の最も焦眉な諸問題を取り上げて対話をしてはどうでしょうかと提議され、前述の考えをもって私が稿を書き始めたのは今から六年前のことでした。
 多忙な仕事、連日のように出てくる仕事以外のいろいろな義務、さらには、二十世紀末に生きる人間の生活そのものが、当初とりきめた短期間に対話を終えるということを許しませんでした。言い訳になるかもしれませんが、あくせくしては大きな仕事はできません。
 この歳月に私たちはお互いにより理解することができました。と同様に世界においてもいちじるしい変化が起きました。なかでもこの二年間の国際共同体の情勢はとくに興味深いものになり、出来事はめまぐるしいほどの進展ぶりを見せております。ところで最近世界的に広まっているロシア語の「ペレストロイカ」(再編――改革という意味を含む)は、ただわが国にだけでなく、全世界にもかかわるものであることを申し述べさせていただきたいと思います。再編の本質は何かと言いますと、それは、全世界的意義をもつ問題、なによりもまず平和擁護の問題を解決するために、文字どおりすべての国の、全地球上の広範な大衆のエネルギーを投入することにあります。未曾有の規模での民主化プロセスが日程にのぼっているのです。
3  ソ連邦におきましては歴史的意義をもつ変革が進んでいます。全国を巻き込んだ民主化のプロセスは、これまでのいつにもましてマルクス・レーニンの学説の古典的遺産の精神に合致しております。申し上げておきたいのは、わが国が着手した再編は、たんにソ連邦の国内政治の問題ではないということです。それは国際的意義をもっています。自国の社会発展にかかわる諸問題の解決にあたりながら私たちは、世界共同体のかかえる諸問題の解決にしかるべき貢献をすることができるでしょう。
 隣国日本の皆さまが、ソ連で見られる変化の方向をまさにこのように理解してくださればうれしいと思います。それは、両国間の問題を建設的に解決する助けとなるでしょうし、またそうすることによって、地域的、ひいては全世界的規模における国際関係の実りある発展をうながすことになるでしょう。
 祖先から引き継いだ文化的価値、民族的特徴および伝統において、両国民には違いがありますが、しかし、池田先生と私の間で行われた対話が裏づけているように、それは、お互いによく理解するための障害ではありません。明らかにされたように、数多くの重要な問題でわれわれの見解は完全に一致しております。立場の異なったモメント(契機)もありましたが、しかし、それさえ理解をもって相手に対するうえにおいて、妨げとはなりませんでした。これが最も重要です。双方にとって対話は興味がありました。というのも、対話をしたことによって、より多くお互いを知ることができ、それぞれの国を、そして、それぞれの国民の生き方を知ることができたからです。私たちは、共通点を、そして相違を探求しました。西と東という二つの文明における共通点であり、相違をです。言葉をかえて申し上げれば、世界の無限の豊かさ、そして多様さに接することができました。

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