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日蓮大聖人・池田大作

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芸術と文字――西洋  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
1  芸術と文字――西洋
 池田 しかしながら、また、東洋と西洋との区別は、それほど完璧に明白には分けられないのではないかと思われます。西洋でも偉大な芸術家について、とくにデッサンにおいて、その手の運びによって、ある種の気分が表現されていることがあるのではないでしょうか。
2  ユイグ 事実、日本や中国における書道が、芸術に対して貢献した東洋の最も独創的なものの一つであるにしても、それがまったく独自のものであって、西洋にこれに匹敵するものがまったくないというわけではありません。しかし、東洋が非常にはっきりした意識をもってこれを手段としてきたのに対して、西洋の芸術ではほとんど無意識に用いられています。そしてここにふたたび、東洋と西洋のあいだにある根本的な違いにぶつかるわけです。
 何度も繰り返していいますように、西洋人は、東洋人と違って、明瞭にいいあらわされた思想をより大切にして内省的・知的方法をとることによって、自らの内面的生命の全体性を取り逃がしてしまっています。
3  ところが東洋人は、自らを率直に表明できるものについての感情を豊かに保ってきましたし、それが東洋人の道徳的な大きい力になっています。東洋人は、事物と自分、他人と自分とのあいだに、観念的な過程を経る必要のない通話を打ち立てるよう教えてきました。たとえば、西洋人がその伝統に従ってデッサンをするとき、彼はまず、自分が目にし描こうと思う外界の対象物を、できるだけ厳格に、できるだけ典型的に、描き出そうと考えます。しかし、西洋人でも非常に偉大な芸術家は自分を取り巻く人びとの限界を超えていますから、東洋と同じ疑問にぶつかります。西洋の芸術は、この意味で発展を遂げ、また長いあいだ知らなかった表現の可能性をますます探し求め、それが逆に東洋の書道を宣揚したといってよいでしょう。

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