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日蓮大聖人・池田大作

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調和――生命の法  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
1  調和――生命の法
 ユイグ 調和は、自然が段階を高め自己完成するにつれて、ますます必要となるものです。とくに生命が誕生してからは不可欠となります。なぜなら、生命の発展と、さらには、たんに寿命を延ばすことも、調和があってこそ可能であるからです。
 純粋に物理的な世界、物質の世界では、事物の構成は、原子や分子といった基本要素の結合の結果ですが、これらの要素は種々の、しかし固定的な法則に従ったやり方と秩序によって集まり固まっているだけで、それが物体の多様化をもたらしているのです。この点をよく示しているのが水晶です。水晶は、その対称性が調和を示しているのですが、その幾何学的な構成の仕方によって互いに違っているだけです。
 生命があらわれると、そうした整然とした並列に機能の組織化が加わります。そして、この点が大事なのですが、この組織化は一つの目的性に従って行われます。これは生命体においては、物質はたんに凝集物ではなくなって、同じ行動、同じ運命を分かちあうものとなるということです。
2  たしかに、物質的宇宙も、調和の原理に従っています。この調和の原理は、原子の緊密に結びついた構造から、星やその体系の雄大な構造にいたるまで、あらわれています。しかし、これらのそれぞれの結合は、無限に再生を繰り返しながら、自己同一性を保っていくタイプのものです。
 生命はその誕生の当初から、未来と未知なるものに直面することになります。それは、跡をなぞることはできるが、どこへ行くのかわからない道をたどっていきます。……そして、生命が自らを完成すればするほど、心理現象が構成する高い段階に達するにしたがって、部分と部分のあいだの調和が、ますます欠くべからざるものとなります。生命体の中で、この調和が乱れると、病気になります。それが精神生活の中で起こった場合は、神経症、狂気があらわれます。破壊の過程が始まるわけです。
 こうして、調和の概念は、エネルギーや活力の概念と同様に、本質的なものです。時間の流れの中に展開されるものは、その存在を維持するために、調和を必要とします。物質は、もっぱらエントロピー(熱平衡にある物理系に特有の物理量)の法則に示される損耗と破壊の過程をたどるのですから、生命は誕生して以来、このネガティブな過程にさからう一つの戦いに取り組んでいるわけです。では、それはなににもとづいているのでしょうか。
3  一つの組織体、一つの全体が基盤にしているのがこの調和です。そこでは、部分はたんにそれ自体によってでなく、一つの共同の行為に寄与することによって存在しているのです。そして、この“行為”ということばは、その前提概念として動的ということと、時間の中に投射されているということを含んでいます。単純な並列や空間の中での“位置”ということによっては、なにものも持続することはできません。時間の流れは、協力、協調、したがって、共通の目的に向かっていく収斂を要求するのです。
 生きているもの、感情のあるもの、思考するものの中に開花しているこの平衡と調和の法則は、矛盾の存在と同時にその矛盾を超克する能力を前提とします。物理的世界では、事物はそのあるがままであって、せいぜい、既定の一貫性原則に従っていきます。それが前提としているのは、設定されうる統一性の中での統合性と恒常性の原理です。
 このゆえに、人間精神を物理的な世界に適応したところから生まれた合理性や論理は、統合性を基盤にしているのです。単純にいえば、物質の世界と思考の世界のあいだには、ある意味の共生があるということです。物質の世界の統合性は適応であり、思考の世界のそれは、理解です。

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