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日蓮大聖人・池田大作

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第一章 社会の課題――人間をつくる活動…  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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1  第一章 社会の課題――人間をつくる活動
 ユイグ その主要な梃子となるのは明らかに、最も広い意味での教育でしょう。つまり、この場合の教育とは、個人を形成するために社会が用いうる精神的圧力の手段の総体ということです。社会が個人を奴隷化し、最良と判断する思想や信念の体系を個人に教え込むために、この教育を利用してはならないことは当然です。
 左右いずれにせよ、すべての独裁制の源泉がここにあり、独裁制は、私が“イデオロギー的予備拘束”と呼ぶものを子供に――成人に対しても――刷り込むために、教育によって提供される手段を独占しようとします。豊かな教育とは、これと逆に、厳密に責任感と結びついた自由の感覚を各人の内に開発することにつながっているものにほかならず、この方向の中で、人間にその能力、可能性を十全に発揮できるよう準備させるものでなければなりません。
 しかしながら、社会は、練りあげた圧力手段を権威的に用いることはしなくとも、無意識の働きによって、社会が歓迎し、広め、その流行を推賞するような全体的理念・支配的理念によって、人びとの精神、とくに形成過程にある精神に対して、押しつぶそうとする圧力をかけます。
 明らかに、たいていの場合、一つの世代は種々の知的スローガンを、疑うことなしに受け入れており、この偏頗な行き方に人生のすべての問題に対する自然な解決が見いだされると考えているのです。そこには“精神的感染”ともいえる一種の伝染病があります。
 私は、一つの理念や理念の体系が人びとの精神の中に不意に侵入し、一つの世代の人びと全体がもはやその公式の枠の外で考えることをあえてしないように彼らを自分に従属させるその仕組みを研究することができたら、人間の進化によってひきおこされた問題は、見事に解かれるだろうと思うのです。

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