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日蓮大聖人・池田大作

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第四章 芸術に現れる危機の陰影  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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1  第四章 芸術に現れる危機の陰影
 池田 物質的事象の中に深く刻まれた危機は、あなたが明らかにされたように、その反映として、人間の道徳心に大きな影響を及ぼしています。そして、現代の文明がおちいっているこの危険な状況については、多くの識者が指摘しているところです。この危機は現代人の感受性を非常に深く動かしているわけですが、芸術家たちはすでに早くから、その鋭い直感によってこれを感じとり、不安を伝え、その苦悩の感情を表現していたことが指摘できるはずです。
 あなたのような芸術の専門家なら、きっとこの点について分析がおできになるでしょう。
2  ユイグ 芸術を、この観点から見直すのは、きわめて興味深いことです。事実、芸術は、それだけのものでしかないにしても、すぐれた人間表現の一つの様式です。それは、たんに意識したものを表現しているだけでなく、無意識のものをもあらわしています。ですから、芸術は、人間の魂を聴診する一手段なのです。
 芸術表現に対しては二つの読み方ができます。個人の水準では、そして、とくに才能に恵まれた個人ならなおさらのこと、個性的な表現があらわれます。芸術家は、その作品の中に、自分の性格を投影し、その心理を反射します。しかし、こうした個人的表現の力に加えて、芸術は集団的表現の力をももっています。
 各人が、その個人的な問題にはらう関心と反比例して、自分がその一部分である全体的な精神状況を表現し、その社会全体の願望や不安、さらには苦悩をそこに反映させるのです。同様に、現代の芸術を研究する場合、非常に大事なことは、それらがどんなに多様であっても、すべての個人が直面している全体的な事態の反響であることを示す共通点、繰り返しあらわれる特徴点を明らかにすることです。私は、こうした性格を明らかにすることに、なんべんも繰り返して取り組んでいます。

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