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消費文明  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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1  消費文明
 ユイグ 現代文明を“消費文明”と定義づけたのは、正しい根拠があってのことです。私たちは自分を取り巻く世界の中から、身体の必要とするものばかりでなく、その欲求と欲望を満たしてくれる資源も汲みとり、消費し、使い果たしています。
 まず身体を養うこと、つぎに安楽、さらに労力の軽減、そしてついには性欲にゆとりをつけ加える娯楽の感覚的満足を追求するにいたります。現代人は、これらの欲求の充足だけしか考えていないようです。しかし、それと反対に、現代人は、ますます気むずかしくなっているのです。そして、このことは、すでにそれ自体、危険な逸脱と人間性の堕落を示しています。しかし、まずなによりも、私たちは、最も確実な証拠だけに限定して論ずることにしましょう。
 私の考えでは、ここに最も驚く点があります。世界の人口は絶えまなく増大していますが、これは、消費者の数が増えているということであり、そのうえ、すべてが、各個人の消費能力と消費意欲をふくらませる方向に働いているのです。この反対に、大地が所有している鉱物資源の蓄えが増大することはありえません。ですから、大地から引き出されているものはすべて、けっして元へ戻すことのできない収奪であり、その総計は、やがていつか資源を尽きさせてしまうでしょう。
2  このことは、多少、意味あいの違いはあるにせよ、食用になる植物生産物についてもいえます。農耕のために森や林もまた不断の後退を余儀なくされており、ひとたび破壊された森林は、再び元のようにはなれないのです。少なくとも、現代技術のやり方は農地の生産力を刺激していますが、それは化学肥料ばかりによっています。こうした生産力の向上によって、まだ開拓されていない広大な土地を肥沃化するにしても、それは無限に進展できるものではありません。
 一方では、このためには膨大な量の水を頼りにしなければなりませんが、すでに水不足は大きな不安のタネになっています。他方、化学物質の利用は土壌を枯渇させる危険があり、食糧供給のうえで有害な影響をもっています。このことについては、人びとも考え始めていますが、人間の健康がその引き換えにされているのです。今日、ガンのとどまることをしらない蔓延が、部分的にせよ、自然の法則に反する化学物質を体内に取り入れている(それに加えて薬剤の誤用もあります)ためにひきおこされているのではないとだれがいえるでしょうか?
3  私たちの体は、植物または動物の肉といった、生物学的につくられた物を吸収するようにできています。人工的に得られた物質をそこへ無謀に入り込ませることは、その機能を乱す結果になる恐れがあります。私たちの知能は一面しかみないで満足してしまい、直接的な結果しかみようとせず、こうした問題については間違った計測をしています。そのため、予期しなかった反動にあって、途方に暮れてしまっているのです。
 一九五一年から一九六六年までのあいだに、農業生産は三四パーセント増加しました。しかし、それは、窒素肥料を三六パーセント増、殺虫剤三〇〇パーセント増投入という代価によって得られた収穫増であり、殺虫剤は、知られているとおり、その目的としない、そして地球の生物の均衡にとってなくてはならない種類の動物にも有害な作用を及ぼしています。
 さらにそのうえ、昆虫たちは薬剤の攻撃力に適応してしまい、それを無効にしてしまいました。人間の一世代のあいだに何世代も交代してしまうおかげで、こうして抵抗力を強めた有害な昆虫は二百五十種にのぼるといわれています。

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