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複産結果  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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1  複産結果
 ユイグ 複産結果は、どのようにして生ずるのでしょうか? 人びとは達成すべき目標を設定しました。一つの原因から引き出される結果が確定されているからには、そのために有効な原因を見つけだし、そのための手段を選べばよいわけです――これは、見たところ、簡単なことでした――ただ、忘れられていたのは、私たちの心の仕組みの脆さだったのです。
 人間は、とくに技術の分野で理性を働かせているとき、現実のもつ無限の多様性には目を向けません。彼はBという結果をもたらしてくれる原因Aを開発したことで満足し、この世界がたくさんの原因と結果の複雑な絡み合いであるため、考えもしなかった反動があるということに気がつかないのです。これが、私がかつて“複産結果”と名づけたものです。これはつけたしで生じた結果ですが、しばしば非常に重大です。それは予想もされなかったところにあらわれます。なぜなら、利益の面はもともと期待されたものに限定されているのに対し、損失面は限定されないものでありうるからです。
2  このことは、医学の驚異的な進歩の中においても確認されています。一つの病気を治そうとして、たとえばコルチゾンのような消炎剤を発見するにいたります。そして、何年か使ってみて、ということは、抽象された発見と生きた現実とを照合してみて、当てにした結果は得られたものの、科学が予見しなかったことが生じていることを認めざるをえません。一つの病気を治すために作り出された薬が、こんどは別の器官または身体全体の中に、同様に制御困難な混乱を生じさせているのです。
 まったく同じような例として、私は、アスピリン工場の労働者たちを侵している腎臓病をあげることができます。これは、公的に無害といわれてきた薬が偶然、恐るべき結果をあらわした例です。こうして、現代の文明は、その生じた結果については抑制不能であることを示しているのです。
3  さて、このように医学という一つの分野で確認されていることは、人間の管理的、合理的なやり方が働いているすべての分野で生じています。そのため、なかんずく、論理と、科学や経済などといった新しい学問にもかかわらず、人間は結果を支配することについては無能であることを示しています。
 同様に恐るべき現象として、インフレーションがあります。これは、今日まで、数えきれないほどの経済学者が取り組みながら、だれひとりとして治療法を見いだしえなかったもので、考えられた方法は、しばしば事態を悪化させただけでした。このインフレーションが全世界に冷酷に広まるかもしれないのです。
 同じく、工業の発展はめざましいものがあり、いまや、あらゆる機械が製造され、その機械によって、数限りない物質が生産され、さらにプラスチックがそうであったように、未知の物質が生産されるようになってきたのではないでしょうか。

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