Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

世界食糧・資源銀行の創設を提案  

「人間革命と人間の条件」アンドレ・マルロー(池田大作全集第4巻)

前後
1  世界食糧・資源銀行の創設を提案
 マルロー トインビー氏とのお話はどんなふうでしたか? その結論は?
 池田 ひじょうに広範囲にわたって、ありとあらゆる問題について率直に意見を交わしました。謙虚に、また、ご自身のもっているものを、全部、後世にのこしてもらいたいといって語っていたのが印象的でした。
 その対談をまとめたものが、今年の末か来年の初めに本になる予定です。(編注・文藝春秋から『二十一世紀への対話』上・下として一九七五年三月に刊行された。イギリス・オックスフォード大学出版局から『Toynbee and Ikeda Choose Life』として一九七六年五月に英訳版が発刊されたのをはじめ十四言語に翻訳)
 ただ、私は平凡な人間でありますが、実践者であります。トインビー博士は博学で著名な学者であられる。マルローさんの場合には、その意味において、あなたご自身が実践者でいらっしゃるので、この会見は私にとってたいへん価値あるものと思っております。
 マルロー トインビー博士はたいへん立派なかたとは思いますけれど、歴史家という意味では過去に関心がある人です。それとは違って池田会長の場合は、未来に働きかけておられる。
 池田 トインビー博士とお別れするときに、私はまだ若いから、もし将来について教訓があったら、注意があったら、ぜひ教えてください──こう申しました。そのときの答えが「私は学者である。あなたはこれからの人だ。実践を貫いていってください。なにも教訓めいたことを申しあげることはない。どうかいまの仏法を根底とした世界平和のために、まっしぐらに進んでいってもらいたい」ということでした。
 そして最後に「私の対談は終わった。したがって世界各国にいる私の友人を紹介する。ぜひ世界の平和のために、あなたが満足するために大いに対談してもらいたい」という紹介をいただきました。そのうちの一人、ルネ・デュボス博士にはすでにお会いしました。(編注・一九七三年十一月東京で)
 私はまだ若い壮年として真剣に世界平和を考えるがゆえに、先生のような平和のための行動主義者とお話しすることにも大きい意義があると考えているのです。
 マルロー ド・ゴールの側近として私が多大の歴史的責任をもったということは事実です。
 池田 よく存じております。
 さて、今後、食糧問題、資源問題、それに伴う環境破壊を契機に国際協調がますます必要になってくると思います。そうした時代の動向を、人類として、どのように受けとめていくべきか? この点もおうかがいしておきたいと思います。
 マルロー それこそもっとも中心的課題というべきですが、これについては世界じゅうの国々が、いま、嘘をついているといったところです。
 池田 なるほど。それでは、その嘘をあばくにはどうしたらよいのでしょうか。
 マルロー 嘘をあばくというようなことは実際上しないでしょうけれども、しかし、こんにちただいまから始められる行動が考えられないわけではありません。重要な、なんらかの手段──表面的に明らかではないけれど、それだけより重要な手段を講ずるということはあってしかるべきでしょう。
2  池田 世界食糧銀行とか、世界資源銀行などをつくる案はどうでしょうか?
 マルロー 私の印象では、私たちすべてのあいだで一致していない点は、そうした行動を起こすための方法にあるということです。私が池田会長のお話をうかがっていてわかった範囲内で申せば、あなたは世界の国々に問題提起をしうるお立場にあるということで、また、ある種の行動を起こすための世界的提案を、あなたご自身、もとめていらっしゃるのではありませんか? あなたがどのような提案をなさるにしても──先ほど汚染の話をしましたから、それを例に話しますと──そこからいっさいの池田会長の行動が始まるべきであるという、その出発点について申しのべたいと思います。まず、会長が行動を開始されたらなんらかの結果が出るでしょうから、この結果をもって二、三の重要な国々へ問題提起し、これらの国があなたの例にしたがうようなことを進めます。以上は先ほど申したことですが、この場合、一つの大事な点は、あくまで池田会長の創価学会がそのイニシアチブをおとりになるということです。イニシアチブをとれば、その結果として他の国々が自分のほうから呼びかけてくるでしょう。私は、池田会長がイニシアチブをとり、それを守って、他の国々の提案にひざまずかないように願っています。
 池田 いや、たいへん重要なカギを示唆してくださいましたが……なかなかたいへんな仕事ですね。ともかく、生死の幾山河をこえてこられた実践者でなければ出ないお言葉と思います。
 それはそれとして、汚染とか資源問題とか食糧問題ということに関連して、いまの国連は、あまりにも無力です。いざ一つの大事件が起きた場合になんの力もないのが実情です。その国連というものをどうすべきか? こんにちの人類がかかえている世界的な問題にたいして、解決する力のある機関をつくるには、どうしたらいいか? また、もし現在の国連を変革するとすれば、どのようにすべきであると考えられますか?
 マルロー 国連は、いまや、手のくだしようがありません。亡霊の一舞台と化してしまっていますからね。あなたが、あまりそれにエネルギーを浪費しすぎませんように。会長の立場からは、むしろ一個の提案をされるべきでしょう。汚染問題について行動を起こされるとなれば、そしてフランスと連絡をとりたいとお考えでしたら、私としてはあなたをフランス大統領のところにおつれして、フランス最大の新聞にこの問題に関してインタビューを掲載するようおはからいしましょう。
 これはたいへん簡単なことです。それというのも、これは単なる提案によるのではなく、池田会長がそのときすでにとった行動の名のもとによるのですから……。たぶん、他の国々にも他の同志が見つかることでしょう。
 池田 たしかにいちばん現実的な考えだと思いますね。日本では総理大臣に、そうしたことをやらせられる力をもっている人はいないと思う(笑い)。残念です。また、総理も話を聞かないでしょう。(笑い)
 マルロー 池田さんは能力のほどをお示しになった。創価学会は、すでに一千万人のメンバーを擁して、まったく大きな力となっています。したがって、そのお立場に立って、たとえばフランス共和国大統領に、これこれの汚染にたいする闘争を、自分はまったく利害関係ぬきにしてすでに起こしたのだ、貴下もこの運動に参加してはどうか、とおっしゃることができるはずなのです。そうすれば、フランス共和国大統領がその提案を避けるということはないでしょう。
 池田 なるほど、そのことはよくわかりました。

1
1