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日蓮大聖人・池田大作

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日本と中国をどう位置づけるか  

「人間革命と人間の条件」アンドレ・マルロー(池田大作全集第4巻)

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1  日本と中国をどう位置づけるか
 池田 先ほどの話に戻りますが、けっきょく、他から屈辱とか抑圧を加えられたときには、人間はおのずから尊厳について意識し、それを守りたいと思うものです。それはとうぜんのことです。ところで、人間の尊厳にたいし、みずからの内より起こってくる屈辱ないし抑圧があります。その最大のものが死です。マルローさんが人間について深く考察されていることはよく知っておりますが、だれでも避けることのできない死という問題について、どうお考えでしょうか。
 マルロー できれば、このご質問は、対談の最後のほうでお答えさせていただきたいと思います。比較的容易な質問からお答えしたい……。
 池田 では、現代の国際関係において、日本と中国をどのように位置づけられますか? また、将来、両国はいかなる役割を果たしうるとお考えになりますか?
 マルロー だれもかれもが中国に走っていますが、その結婚契約のための《公証人》はモスクワにあり、といったところです。つまり、中国詣での国々と中国との結婚の証人役として……。
 アメリカにおいても、なるほど日本が重要な問題のカギを握っているとは思われていますけれども、私の考えは、もっと、突っこんだものなのです。すなわち、現代世界にあって、日本は、恐ろしいほど大きな問題提起をなしうる国であるということです。
 池田 ……と言いますと?
 マルロー もし次期世界大戦が起こるとすれば、かならずやそれは太平洋圏内で起こるであろう……。
 池田 うむ……。アメリカとソビエトは、ともに多民族から構成された超大国です。これまでは互いを敵対国としてしのぎを削りあうために、内部にかかえた矛盾は露呈しなかったのですが、外からの危機感がうすれるとともに、今後ますます内からの問題が深刻化してくると私は考えます。これら超大国の将来を考えるとき、一つは内部の危機を避けるために、外部に敵をつくるか、あるいは内部の矛盾を押えるために、権力を強大化するか、または矛盾の増大によって政治的統一を失うか──この三つが想定されると思います。マルローさんは、米ソ超大国はこれらのいずれの方向に進むと思われますか? または、もっと別の観点が考えられるでしょうか? この点について……。
 マルロー 外部に敵をつくるとは、具体的にどういうことですか?
 池田 たとえば、アメリカはソ連に、ソ連は中国に、ということです。
 マルロー そういう意味でなら、これら大国のいずれか一国からしか敵をつくりえないことになりましょう。ドイツが敵にまわるということは絶対ありえないでしょうから。
 池田 ソ連にとっては中ソ国境の問題がある。それから、こんどは、アメリカとソ連との関係も、まだまだ緊張感が解けたとはいいきれない。
 マルロー 大きな焦点はあくまで中国であるといえましょう。アメリカに関しては内紛のあることは事実ですが、現在のソ連内部のほうはそれほどの紛争はありません。将来、ソ連の内部で起こりうる深刻な問題は、国内問題、たとえば人事更迭の問題で、これがひじょうに大問題となるということは考えられるが、対外的に深刻な策に打って出るということは考えられません。
 中国に話をもどせば、目下(その攻撃性が)いろいろと流言されているものの、いちいちそれをまともにとることはありません。そして米・中・ソの三国が三つ巴になって、なにか新たな紛争を起こすというふうに考えることは、現在のところ、ジュール・ヴェルヌのSFなみの発想といったところでしょう……。

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