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日蓮大聖人・池田大作

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第16回「SGIの日」記念提言 大いなる人間世紀の夜明け

1991.1.26 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

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1  第十六回「SGI(創価学会インタナショナル)の日」を記念し、最近の国際情勢の変動を踏まえた私の所感の一端を述べておきたい。
 一九九〇年代の出発は「民意の時代」の到来という歴史的変化を予感させつつ、人々に将来への希望を抱かせる一種の明るさに満ちたものでありました。
 しかし、このところの国際情勢の激動は、冷戦終結後の新たな世界秩序を作り上げることが決して容易な道ではないことを改めて痛感させるものとなりました。
 長く続いた厳しい冷戦の谷間からやっと抜け出したのも束の間、イラクがクウェートに侵攻した昨年夏以降、世界情勢は一挙に暗転し、湾岸戦争という最悪の事態に至りました。
2  湾岸戦争の早期終結を望む
 私も、イラク軍の撤退期限切れを前に、作家のチンギス・アイトマートフ氏、物理学者のバーナード・ベンソン氏、ローマ・クラブのリカルド・デイエス=ホフライトネル会長、ユネスコのフェデリコ・マヨール事務局長、作家のウォレ・ショインカ氏(ノーベル文学賞受賞)とともに、イラクのフセイン大統領あてに緊急アピールを共同提案しました。その中で、イラクの勇気ある撤退による戦争回避、その後の中東問題解決のための国際会議の開催を訴えました。
 いつに、生命の尊厳を説く仏法を奉ずる者としての、やむにやまれぬ叫びでしたが、こうした破局を迎えて残念でなりません。戦火のやむ日の一日も早からんことを、祈るのみであります。
 そして一日も早い停戦とともに、国連のリーダーシップによる中東和平国際会議を開き、包括的な中東和平への展望を切り開くよう強く訴えるものであります。
 戦後世界の枠組みを形成したヤルタ体制は様々な矛盾を含んだものではありましたが、そこにはそれなりの危機管理的な仕組みが存在したといえましょう。しかし、その軌から解放された結果、かえって世界は混迷の度を増したことも否定できません。こうした一種混沌とした時代にあって、各国とも程度の差はあれ、国益維持に必死の状態といえましょう。
3  もとより東西の冷戦が終わったといっても、新しい世界秩序が自然のうちに出来上がってくるものではありません。ヨーロッパを中心に軍事力の意義が低下する一方で、地球上の一部地域では、依然として独裁体制による軍事力への依存が続いております。既に民族的、宗教的、経済的対立の激化から地域紛争の増える兆しが現れており、地球社会の全体としての平和的発展の展望が見えていないというのが現状であります。
 とりわけ湾岸戦争の勃発は、南北問題の解決なしには新たな世界秩序の構図が描けないことを改めて思い知らせたといえましょう。地域紛争の防止も含めて、国際社会は新しい世界平和の構想に衆知を集める必要に迫られております。深刻化の一途をたどる環境問題などと併せて、オンリー・ワン・アース(かけがえのない地球)ということが、これほど人類共通の課題として浮かび上がったことは、空前であろうと思います。
 そうした今、切実に要請されているのは、その新しい世界平和の構想力であり、何よりもその構想を実行しようとする人間の積極的な意思であります。

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