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日蓮大聖人・池田大作

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歴史と人物を考察――迫害と人生 第11回創大祭記念講演

1981.10.31 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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1  苦難乗り越え真の偉業
 本日は、伝統の創大祭の意義を含めて、最近、常々私が考えている、歴史上、迫害に遭った人々がいかなる背景から迫害を受け、また、それをいかに勇敢に乗り越えていったかということを考えてみたいと思います。言うなれば「迫害と人生」とでも言えるでしょうか。芝生の上で秋の日射しをうけながら、五、六人の学生と語り合うような気持ちで思い付くままに語らせていただきます。
 私は、十代の時に読んだある西洋の哲学者の「波浪は障害にあうごとに、その堅固の度を増す」との格言が胸に迫り、大好きでありました。言うなれば、この格言を土台として、人生を歩んできたとも言えるかもしれません。
2  長い人生行路にあって、偉大なる作業をしていくためには、それなりの限界や絶望の時もあるかもしれないし、巨大なる幾多の障害もあるに違いない。その時こそ、いやまして、自らが遅しく光り鍛えられていくことを、忘れてはならないと思います。多くの優れた伝記を残した、今世紀のオーストリアの有名な作家ツヴアイクは、次のように訴えております。
 「だれか、かつて流罪をたたえる歌をうたったものがいるだろうか? 嵐のなかで人間を高め、きびしく強制された孤独のうちにあって、疲れた魂の力をさらに新たな秩序のなかで集中させる、すなわち運命を創りだす力であるこの流罪を、うたったものがいるだろうか? ――自然のリズムは、こういう強制的な切れ目を欲する。それというのも、奈落の底を知るものだけが生のすべてを認識するのであるから。つきはなされてみて初めて、人はその全突進力があたえられるのだ」(『ジョゼフ。フーシェ』山下肇訳)と。
3  ツヴアイクはここで、釈尊、モーゼ、キリスト、マホメット、ルター等の宗教者、またダンテ、ミルトン、ベートーベン、セルバンテス(スペインの作家で『ドン・キホーテ』の著者)等の芸術家の例をとり、流罪や迫害が、いかに彼らの「創造的天才」を育てる沃土となっていったかを述べております。誠に苦難こそ、人間の人生や運命を、闇から暁へ、また混沌から秩序へ、破壊から建設へと飛躍させいく回転軸であったのであります。私はここで、自分なりの立場から古今東西の歴史を俯瞰しながら何人かの人物にスポットを当て、人生における迫害や流罪の持つ意義を、時間の都合上、簡潔に探ってみたいと思うのであります。

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