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日蓮大聖人・池田大作

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第13回「SGIの日」記念提言 平和の鼓動文化の虹

1988.1.26 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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1  グローバルな平和秩序を追求
 第十三回「SGIの日」を記念し、最近の私の所感の一端を述べておきたい。
 世界は今、新たな次元の共存共栄のシステムを求めて、大きな分岐点を迎えている感がしてなりません。かつて中国の故周恩来首相が二十一世紀へ至る、二十世紀の最後の四半世紀は最も大事な時期である、と私に語ったことが、改めて思い起こされます。一九八八年という年は、人類にとって様々な意味で極めて重要な年になるはずであります。
 昨年末、ワシントンで米ソ首脳会談が行われ、中距離核戦力(INF)全廃条約が調印されるという、戦後史上、画期的な軌道修正がなされました。奇しくも昨年は、恩師戸田城聖第二代会長が、核兵器の悪魔的性格を鋭く見抜き、「原水爆禁止宣言」によって核廃絶を青年の手に託してから三十周年の記念すべき年でありました。核廃絶のための米ソ首脳会談の緊要性は、私が十数年来訴えてきたことでもあり、昨年、人類史的意義をはらんだ条約が調印されたことに、改めて大きな時代回転の歯車を見た思いがいたしました。
 もとよりINFが全廃されるからといって、一挙に世界の流れが平和と軍縮の方向に向かうわけではありません。今後の米ソ関係の行方は、なお慎重に見守っていく必要がありましょう。しかし、昨年の米ソ首脳の対話に、世界の人々が今までとは違うある種の明るい希望の兆しを感じたことも事実であります。
 レーガン米大統領は、INF全廃条約調印式後、「世界へ向けたメッセージ」の中で、ロシアの文豪トルストイの「最強の戦士が二人いる。それは時間と忍耐だ」との一文を引き、歴史的合意に至った経緯を語った。またゴルバチョフ・ソ連共産党書記長は、米国の詩人であり哲学者のエマソンの「事をなしとげた報償は、なしとげたそのことにある」との言を引き、核軍縮にかける自らの決意を述べました。
2  やや我田引水の感があるかもしれませんが、トルストイもエマソンも若き日から私が座右に親しんできた文人であります。それだけに、感慨新たなものがあり、一連の両国首脳の対話から、単なる外交辞令を超えた新鮮な発想の転換が痛感されてなりません。
 レーガン大統領が「歴史上初めて『軍備管理』を『軍備削減』に置き換えるには、劇的な発想の転換が必要だった」と言い、ゴルバチョフ書記長が「良識が勝利した」と呼び掛けたところにも、それがよくうかがえます。
 いよいよ本年は米ソ間で、注目されている戦略核兵器の五〇%削減の条約が成るか否かの正念場の時を迎えております。世界の人々は、両首脳の今後の一挙手一投足に目を凝らすでありましょう。どうか、世界の期待を裏切ることなく、一度決めた「忍耐」と「対話」の大道を揺るぎなく進み、全人類的視野に立った決断をお願いしたい。
 紆余曲折はあっても、その大道を踏みはずさなければ、前途は明るい。二十一世紀を、はや指呼の間に臨む現在、緒についた平和と軍縮の流れの水かさを一段と増していくために、ささやかではありますが、本年も私自身、民衆レベルからの努力を着実に続けてまいりたい。新たな世紀への道はるかに、私どもが目指すものは「政治」に勝利する「文化」の、「力」に勝利する「精神」の、「国家」に勝利する「人間」の凱旋門であります。
 創価学会インタナショナル(SGI)は現在、世界百十五カ国にメンバーを有しております。戦争をはじめあらゆる暴力を否定し、人類の幸福と世界の繁栄に尽くさんと、各国各地でメンバーは良き市民として地道に活動を進めております。私はこうした世界の同志の真心の応援を得ながら、これまで私なりに全力で世界を駆けめぐってまいりました。
 とりわけ教育、文化を核にした人間と人間との交流こそ、一切の平和の基盤であるというのが、私の変わらざる確信であります。そうした立場から、近く東南アジア諸国を訪問いたします。また長期的な展望に立って、ヨーロッパ、アメリカ、ソ連、中国等にも随時、交流の足跡を重ねてまいりたいと念願しております。
3  アジアとの文化・教育交流を推進
 なかでも本年、アジアは一つの焦点の年となりましょう。大韓民国(韓国)でのオリンピック大会開催は、幸いなことに全世界のほとんどの国が参加する、史上最大規模の「人類の祭典」となることが決まりました。米ソ対話の促進に続く緊張緩和の世界的潮流は、新しい時代をも予感させるものであります。
 私は一九八五、八六年の「SGIの日」記念提言で、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の分断問題に触れ、双方の最高責任者の会談の急務なることを重ねて訴えました。アジアのみならず、世界の平和にとって、この問題が死活的に重要な位置を占めていると考えたからであります。
 国際政治に揺り動かされ、かつては戦場として血に染まった半島が、二度と崩れざる平和の地となってもらいたい。戦禍に泣き、分断に苦しんできた民衆こそ、最高に幸せになる権利を持っているというのが、私の変わらぬ思いであります。オリンピックが平和の祭典としての本来の役割を発揮し、東アジアの安定的発展にぜひプラスの方向に作用してほしいとは、誰人も抱く当然の願いであります。アジアの民の一人として、アジアの平和と安定を長く望んできた仏法者として、本年のソウル・オリンピック大会の成功を強く期待するものであります。

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